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11 廊下でばったり


 アイラは急ぎ足でイザイラから離れる。


 ――やばいやばい。士長にばれた! 


 今回は目を付けられないようにするつもりだった。だがやはりイライザに精霊魔法が使えることがばれてしまった。


「でも大丈夫よ。ばれても精霊魔法士には私はなれないわ」


 精霊魔法士は学校で専攻し3年間学び、そして試験を受けてなれる職だ。だから絶対にアイラが精霊魔法士になることは出来ないのだ。


 特例を除いて。それは、王族の推薦だ。


 ――大丈夫。大丈夫よ! マティスと仲良くならなければいいんだから。


 急いで校舎に入り廊下を曲がった所で2人の人物の姿に気づき、目を見開き立ち止まる。リュカとマティスだ。


「げっ!」


 反射的に出た言葉に、リュカとマティスはアイラへ視線を向けた。


 ――やば! 聞かれた。


 アイラはばっと顔を下に向け、2人の横を通り、逃げるようにその場を去った。

 アイラの言動にリュカは眉を潜める。


 前回の人生の時、アイラとは王宮で働くようになってからマティスに紹介されて知り合った。だが王宮でアイラと廊下なのですれ違っても、リュカ1人の時はただ会釈をするだけで話すことはなかった。マティスがいてもアイラとマティスは話すが、リュカはただ後ろでそれを見ているだけで護衛に徹した。だからアイラのことはほとんど知らない。


「リュカから見てアイラの印象は?」


 と聞かれれば、いつも笑顔を見せることなく無表情で冷静沈着で真面目。ただマティスが声をかけた瞬間だけいつも嫌そうな顔をするといったところか。

 だから今アイラが思いっきり顔と声に出した行動にリュカは驚く。そしてまだ知り合ってもいないのに、なぜ前回と同じ嫌そうな顔をするのか? 疑問符が付く。


 するとマティスがクスクス笑いだした。


「マティス? どうした?」


 いきなり笑いだした王子にリュカは怪訝な顔を向ける。


「いや、あの子、僕とリュカを見てすごい嫌そうな顔をして、げっ! って言ったよね?」

「ああ」

「初めてだよ。女性にあれだけ明らさまに嫌な顔をされたの」


 マティスの容姿と立場から、女性からは褒められたり言い寄られたりすることがあっても、嫌がられたことは一度もなかった。だからマティスにとってアイラの態度が新鮮だったようだ。


「楽しそうだな。マティス」

「ああ。だって、げっ! って言われたの初めてだからさー。おかしくてさ」

「珍しいな。マティスが本音で笑うとは」


 マティスはいつも笑顔だが、作り笑いがほとんどだ。小さい頃から知っているリュカには、マティスが本気で笑っているのか嘘なのかすぐ分かる。だから今本気で笑っているのも分かった。


「ほんと、いつぶりかなー。本音で笑ったのは」


 そんなマティスにリュカは笑顔を見せる。


「よかったな」

「ああ」

「今度会ったら、どんな反応するか楽しみだな」


 マティスは何やら新しいおもちゃを見つけたような顔をしている。前回はアイラのことを友達以上に思っていたから今回も気になるのだろう。


 するとマティスが話しを戻した。


「話の続きだけど、リュカ、本当に何もしてないの?」


 ユーゴがリュカにしたのは、リュカが何かしたからだとマティスは考えていた。


「何もしていない。向こうがいきなり攻撃をしてきたんだ」

「そうか。リュカの魔力に気付いて試してきたってわけだね」

「ああ」

「さすがだね。リュカを見ただけで気付くなんて」


 同感だとリュカは頷く。


「ああ。あと、あの人に言っておいてくれ。2度とごめんだと。そして迷惑だと」


 心底嫌そうに言うリュカにマティスは苦笑する。


「ほんとに嫌そうだね」

「当たり前だ。今までどれだけ迷惑をこうむってきたか」

「? リュカはユーゴと知り合いだった?」


 そこでしまったと慌てる。今回の人生ではまだ知り合ってはいないのだ。


「いや、ただ他の者達も迷惑しているだろうと思っただけだ」

「あはは。確かにユーゴの部下はヒーヒー言ってるね」


 ――あの人は、自分1人で勝手にやってしまう。だから部下がその後の尻拭いするのは日常茶飯事だ。特に大きな問題は自分が1人責任を取ればいいと考え、部下に相談もせず1人で解決しようとする。もっと部下を信頼していれば、殺されなかったかもしれないのに……。


 リュカは視線を下に向け、ユーゴが殺されたと聞かされた時のことを思い出す。

 いきなり神妙な顔をして黙ったリュカにマティスは首を傾げた。


「リュカ? どうした?」

「あ、ああ。悪い、何でもない。次の授業が始まる。教室に戻ろう」


 誤魔化すようにリュカはマティスを促したのだった。






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