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104 気になる



 アイラが図書室係になってから5日が過ぎた。

 レイは結局毎日セイラの迎えにやって来ていたが、極力接点を持たないように挨拶だけ交わし離れるようにしていたため、話すことはなかった。だがいつもじっと見られているため気が気じゃない。そのことをジンに相談しようとするが、家業が忙しいのか今週はまったく顔を出しておらず、今日こそいるだろうと思っていたが、的は外れ会うことは出来なかった。


「なんでいないのよ……」


 お昼にボソッと漏らすと、サラが反応した。


「なに? それは誰のこと?」

「リュカだろ。図書室係になったから特訓が出来てないもんな」


 ライアンがウインナーを口に頬張りながら応える。図書室係の間はリュカとの特訓は休止になっていたのと、お昼もアイラ達の所に来ていないため、この5日間ずっとリュカにも会っていない。

 

「それか殿下とか? 殿下も最近ずっと来てないからね」


 カミールも冗談気味に笑いながら応えると、


「そうかも。もてる女は大変ね」


 とサラも揶揄するように言葉を付け足す。楽しそうに言う3人にアイラは眉根を上げる。


「からかわないで! そういう意味じゃないわよ!」

「じゃあどういう意味?」

「え?」


 サラに言われ言葉に詰まる。確かにリュカが何をしているのか、元気なのかと気にならないと言えば嘘になる。マティスも前世からの癖で、忙しすぎて体調を壊していないか気になっているのは否めない。


 んーと真剣に考えているアイラを見てサラ達は笑う。


「そんなに真剣に考えなくていいわよ」

「そうだぜ。どうせアイラのことだ。2人とも気になるんだろ」

「だね」


 そう言われアイラはその通りだと頷く。


「2人とも気になるけど、今はジン先生のことを言ったの」

「ジン先生?」

「うん」

「なんだリュカじゃねえのか」


 ライアンが残念そうに言う。そう言われるとアイラもリュカのことが無性に気になりだした。


「リュカは元気?」

「それがあいつ、ずっと休みなんだ」

「え?」

「なんか家の用事らしい。あの家も色々忙しそうだな」

「そっか」


 ――いないんだ……。


 寂しいと思った瞬間、自分の考えにハッとする。


 ――なに寂しいと思っているのよ。最近ずっと一緒にいたからだわ。それ以外に何もないわ。


 そう言い聞かせていると、


「セイラとはどう?」


 とサラが聞いてきた。やはり妹のことは気になるようだ。


「図書室では私語禁止だから話さないし、帰りの校門までの少しの間話すぐらいね」

「そう」


 するとライアンがサラに訊く。


「やっぱ気になるのか?」

「そうね。気になるわ。血を分けた姉妹だもの」

「なら話せばいいじゃないのか?」


 アイラの時とは打って変わり、ライアンは真剣な顔をサラに向ける。


「……そうね」


 少し下を向き寂しげに頷くセイラにライアンは嘆息する。


「まあ話せないよな。お前は何不自由なく育ち、あっちは実母に先立たれ、働かない義父に代わり、弟と妹のために学校も中退して働いてたんだろ? そりゃあサラのことを良いふうに思っていないって考えるのは当たり前だよな」

「……」

「だが聖女に選ばれたんだろ?」


 それにはアイラが驚く。まだセイラが次期聖女とは公には発表されていないのだ。


「なぜ知ってるの?」

「俺はこの学園長の息子だぜ。情報は入ってくる」


 そうだったと気付く。確かに学園の上の者は知っているのは普通のことだ。


「アイラこそ、なんで知ってるんだ?」


 ライアンが反対に質問してきた。アイラこそ知っていることがおかしいのだ。


「え、えっと、ジン先生から聞いたんだ」

「はあ? 相変わらずだな。あの先生。ばれたら怒られるぞ」

「そ、そうね……」


 ――先生ごめん。


 咄嗟にジンのせいにしてしまったことにアイラは心の中で謝る。

 これ以上突っ込まれたらどうしようと思ったが、ライアン達はそれ以上突っ込むことはしてこなかった。

 

「聖女に選ばれたんだから、もう生活にも困らないし、向こうも何とも思わないんじゃないのか?」

「そう思っていてくれればいいけど……」

「案外向こうもサラと話したいかもしれないぜ」


 ライアンの言葉にサラは弱々しく笑った。



 その頃リュカはジンとある場所に来ていた。


「ここが入口だ」


 そうジンが示した場所は、3つの墓石が並ぶ真ん中の大きな墓石だった。


「墓石……ですか?」


 リュカは信じがたいといった口調で言う。


「ああ。ここが四竜が人柱となった場所への入口だ」





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