第六話 クラスメイトなんて聞いてない!
◇◇◇
「と、取りあえず紫苑さんが男の人だと分かった以上ここにはいられませんっ!」
「それがなぁ、そうともいかないんじゃ」
「な、なんでですか?」
「神子の存在が知られてしまったからな。他にもお前を狙ってるあやかしがいるかもしれない」
「い、いや、あんなの初めて会いましたけどっ!」
「万が一あやかしに襲われたとき、お前に対抗する技があるか?」
「そんなの知りませんけど……」
「俺の近くにいたら守ってやれるが、いつも間に合うとはかぎらねーからな」
「そ、そんな……」
「まあまあ、取りあえず叔父さんも入院しとることじゃし、その間だけでもここにいるといい。なんならワシも一緒にいようか?」
「おじいさんが一緒なら、まぁ」
「よしっ!じゃあ決まりだな。とりあえずお前にこれを渡しておく」
そう言って紫苑が取り出したのは小さな鈴のついたストラップだった。
「これは、鈴?」
しかし軽く振っても音が鳴らないことに首を傾げる。
「それはあやかしが近づいたときだけ音を出して教えてくれる道具だ。あやかし除けのまじないもかけてある」
「へえー」
「ただし、小物には効果はあるが大物には効果がないから気をつけろ。取りあえずできるだけ持ち歩けよ?」
「は、はいっ!」
「あと、敬語いらねーぞ?俺とお前同級生だし?」
「は、はぁ?同級生!?」
「そっ、明日から同じ学校に通うからよろしくな?」
「き、聞いてない~!!!」
◇◇◇
「今日はみんなに転校生を紹介する。青嵐高校から転校してきた森咲紫苑君だ」
「よろしく?」
翌日本当に転校してきた紫苑に京香は頭を抱えた。
「席は山本の隣だな。山本、面倒みてやってくれ」
「は、はいっ!」
「よろしく」
ニヤリと笑う紫苑に、周りから溜め息が漏れる。
「はぁ、かっこいい!」
「モデルみたいじゃん?しかも青嵐高校だって!超頭いいお坊ちゃん学校じゃん!うちも、それなりに偏差値高いけどさぁ」
「なんで今の時期に転校してきたんだろうね」
「理由なんてどうでもいいよ。イケメン尊いわぁ~」
確かに顔面偏差値は非常に高いがコイツは危険人物である。でもそんなこと周りに言うわけにはいかない。なぜなら格好のネタにされてしまうからだ。
が!しかし!
「あ、コイツ俺の女だから手ぇ出さないように?」
と紫苑が京香の髪に口付けしながらサラリと爆弾発言を投げた!
「は、はぁ!?ちょっと!どういうことよ京香!」
「待って待って!彼氏ってこと?」
「どこで出会ったのよっ!」
にわかにテンションの上がる女子たち。
「はぁ?山本がお前の女?ふざけんなよっ!」
「ぼ、ぼくの京香たんがっ!」
「京香は俺の女だっ!」
身に覚えのない主張を勝手にする男子たち。
教室は一気にヒートアップした。
結局その日クラス中から質問責めにあったが、
「昔からの許嫁同士」
という紫苑の主張で落ち着いたのであった。