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第一話 無一文から始まる借金生活!

◇◇◇


「京香、実は折り入って話があるんだ……」


「どうしたの、おじさん。そんな深刻な顔しちゃって。あ、ナメコのお味噌汁のおかわりいる?」


 いつも穏やかで優しい叔父がここ最近元気が無いのは知っていた。心配していたのだが、ようやく話してくれる気になったらしい。


「ああ、ありがとう……実はなぁ、うちの工場、倒産しちゃったんだ……」


「え?ええーーーーー!!!と、倒産!?ど、どうしてそんなことに……」


 予想外の叔父の告白に呆然とする。


「それがなぁ、大口の取引先に急に契約を打ち切られて、二度の不渡りを出してしまったんだ……」


「ふ、不渡り……」


「この家も工場も差し押さえられるから、いずれここも出て行かなきゃならない……」


「そ、そんな……」


「すまない。早く言わなきゃいけないことは分かってたんだが、こんなことになるなんてな。死んだ兄さんになんて謝っていいか……」


 落ち込む叔父をみて、京香は決心する。


「おじさん、おじさんは悪くないよ。お父さんとお母さんが死んだ後、大好きだった仕事を辞めてまで工場を継いで、男手一つで私を育ててくれたんだもん。」


「京香……」


 叔父の顔をじっと見つめ、しっかりと目を見て話す。


「私ももう17だもん。高校辞めて働くよ!」


「何を馬鹿なこといってるんだっ!京香にそんなことさせられる訳ないだろう!」


「だって!借金があるんでしょう!?」


 こんなときこそ、家族で助け合わなければ。京香にとって、おじさんはたったひとりの大切な肉親なのだから。


「実は、おじさんな、マグロ漁船に乗って遠洋漁業で稼いでこようと思ってるんだ!」


「は?はぁ!?マグロ漁船って……」


 あまりに突拍子のない話だ。本気だろうか。線の細い叔父にマグロ漁船などとても勤まりそうにない。


「京香は何にも心配しなくていいんだっ!なぁに、一年船に乗れば、借金くらいすぐに返すさ!」


 京香に心配させまいと、空元気を出しているのがわかる。それだけに、反対もし辛い。


「おじさん……」


「ただなぁ、その間、京香がひとりになってしまうだろう?おじさん女の子の一人暮らしが心配で心配で。京香の学校は公立で寮もないしなぁ。」


「大丈夫!だったら私、住み込みのアルバイトがないか探してみるよ!この辺旅館も多いし、仲居さんのアルバイトなら住み込みであるかも!」


「仲居さんか、それなら一人暮らしよりは危なくないかなぁ。」


「そうだよ!丁度今日休みだし!早速求人がないか探してみるよ!」


◇◇◇



 京香は近所の県立高校に通う高校2年生。幼い頃両親を事故で亡くした後、父方の叔父が男手一つで育ててくれた。


 叔父は当時東京で歴史学の助教授をしていたのだが、小さな京香を育てるために、父の残した工場を継いでくれたのだ。もともと田舎の小さな町工場だ。遅かれ早かれこうなる運命だったのだろう。


「はぁ、とはいっても、昼は学校だもんなぁ。休日と夜だけとか雇ってくれるかなぁ」


 京香はスマホで見つけた求人に片っ端から応募してみたが、どこも色よい返事をしてくれない。やはり、現役女子高生が昼間学校に通いながら住み込みで働くのは無理があるのだろうか。


 できれば今の学校に通いたいけど、通信制の学校への編入も、視野に入れるべきかもしれない。


「あーあ、どこかいい働き先ないかなぁ」


気晴らしに出たコンビニで、つい溜め息がもれる。


「おや?お嬢さん、働き先を探してるんですか?」


 声に驚いて振り向くと、上品な着物を着た小さなおじいさんが、にこにこしながら立っていた。


「まだ若いのにりっぱな心がけですな」


 その声は優しく穏やかで、どこか亡くなったお父さんに似ている。不思議と初めてあった気がしない。京香は思わず今日自分の身に起こったことを、会ったばかりのおじいさんに話してしまっていた。


◇◇◇


「そうですか、そんなことが……お若いのにずいぶん苦労されたんですなぁ」


「いいえ、私は本当に恵まれてたんです。おじさんがそばにいてくれたから」


「お嬢さん、うちで働く気はないですか?」


「えっ?おじいさんの家ですか?」


「私は今別の場所に住んでいるんですが、昔私が住んでいた家に孫が住んでいてね。何しろだらしのない子で、一人暮らしが心配だったんですよ。お嬢さんが面倒をみてくれたら安心なんだがねぇ」


「お孫さん、ですか?」


「ええ。作家をしてるんですがね。なんでもそこそこ売れてるらしいんですが、筆が乗ると食事も忘れる有り様で。困ったもんです。」


「作家さんなんですかっ!?」


 京香の目が輝く。京香は大の読書好きで、将来は作家になるのが夢なのだ。歴史学者だった叔父の影響も大きいのだろう。


「おや、作家に興味がおありですか?」


「は、はいっ!」


「おやおや、じゃあ、弟子入りってことでいいんじゃないかねぇ。昔は書生さんっていってね。よその家で雑用なんかをしながら、住み込みで働く学生さんは多かったんですよ。あ、でも、お給料はちゃーんと払うからね」


「私にも、つとまるでしょうか……?」


「なに、心配しなくてもとってくいやしませんよ」


おじいさんの言葉に思わず笑みがこぼれる。


「私、やってみたいです!あ、でも、一度おじさんに相談しないと」


「そうですかそうですか。よければ、私が一緒にいって、お話しましょうか?働く前に、おじさんも一緒に孫に紹介しましょう」


「あ、ありがとうございます!」


(どうなるかと思ったけど良かった!家の雑用なら学校に通いながらでもなんとかなりそうだし!)


 京香の嬉しそうな横顔をおじいさんはにっこりと微笑みながら見つめていた。


読んでいただきありがとうございます

(*^▽^)/★*☆♪

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