表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
オーベルテューレ
7/313

7話

「……ベル先輩、僕と姉さんの……いえ、フローリストの仕事はなんなのか、ご存知ですか?」


 ただ時間が無為に過ぎる過程に苦痛を感じ始めていたベル。そこに投げかけられたシャルルの問いが指し示したものは、あまりに具体性を欠いており、頭が空っぽになる。


「……え? 仕事、花屋だからお花を売ること? でもなんでそんなこと――」


「違うな」


 意図が読み込めず狼狽するベルを、きっぱりとベアトリスは否定する。


「お二人はフローリスト、じゃないんですか?」


 フランスでフローリストは珍しいものではない。他国と比べ圧倒的に花屋の数は多く、パーティーなどに呼ばれれば、ワイン・ショコラ・花束のいずれかを持参するのが常識、と言われる程に人々の暮らしの必需品であり、物心のつき始めたばかりの小さな子供でも、母の日にはバラを一本、お小遣いを工面して贈るのである。


 そういったお国柄、自宅が花屋というのはよくあることであり、二人は家業として働いている、なんの疑いもなくそうベルは思い遣っていたのだ。


 しかしそれに対する答えは「ノン」であり、根本から勘違いしていたのか、とベルの頬が歪んだ。


「いえ、そうではありません。僕達は分類してしまえばフローリストに属しています。しかし『花を売るということ』、それは二次的なものにすぎません」


「どういうこと?」


 自分の価値観を混乱させるシャルルの説明から情報を整理してはいるのだが、それでも形が捉えられないでいるベル。


 シャルルは今、目の前にいるのはお客様だと認識し、はっきりと丁寧に伝えるスイッチを入れた。


「――ではお客様、花の楽しみ方とはどのようなものがあるか、ご存知ですか?」


 そのシャルルの心遣いに気付き、ようやくお客様となったベルも目の前の質問を順々に片付け、理解していく道を選ぶ。


「えっと、見る・嗅ぐ……あとは食用のもあるし、アレンジで形作って楽しむ、とか?」


「模範的な解答だな。だが面白みがない」


 先ほどの皮肉を返すようにベアトリスがククッと笑う。常に優位に立っていたい精神の彼女にとって、やられたらやり返すのが主義だった。模範が正解ではない、とそう聞こえる。


「違うの?」


 それ以外に思いつかない、とベルは表情でも訴えた。


「いえ、正解です。視覚・嗅覚・味覚、そして触れあえる触覚と、五感のうち四つを占めることのできるものはそう多くありません」

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ