42話
「だってそうでしょう、年の離れた初等部の子供に説教されて、あげくには同情までされて。雑草でも拾ってくるのかしら?」
鼻で笑い、しかし、その嘲笑は自分に向けたものであると、すぐにレティシアは気付く。今の自分をもし客観的に見る機会があれば、否定したくなるような見るに耐えない姿。唇を噛んで間を作り、続く言葉を待った。
「無様な花などありません。無様と思えてしまうのは、見る側の目が曇りがちになってしまっているということです」
「……」
言葉を詰まらせ再び俯くと、そこにベルが身を乗り出し、白く透き通るような手を重ねた。重厚な温もりが伝わる。
「お願い、受け取って欲しいの。花は自分がどんなに惨めに思えても、最後まで見ていてくれる。その花のメッセージを」
ベルは、そのもがき苦しむレティシアを、数日前の自分と重ねていた。あの時救われた自分、そして今苦しむ友人を救う手段を花に見る。心の底から押し上げてくる感情が突き動かす。伝え終わると手をゆっくりと離し、レティシアの壊れのような肩を抱く。いつもよりずっと小さく見えたそれを、抱きしめずにはいられなかったのだ。
懇願、というよりも祈念に近いその必死な姿に、深い意味があると見出し、レティシアは頭を縦に振った。今度は違う種類の涙が流れそうになる。
「……わかったわ」
その言葉を待ち構えていたかのように、シャルルは次の段階の作成に入る。




