41話
余裕のない皮肉だとは、レティシア本人も重々自覚している。年下の小さな少年に対して毒を吐く自分を見下げた。
しかし、シャルルは頷き奉答する。
「ええ、その通りです。僕はフローリストであり、語ることを生業としています。人間とは音に乗せた語りでは疲れてしまうときがある。その時のためにいるのがフローリストなんです」
「……なにを言いたいの?」
鋭く釣りあがった目をようやくシャルルに向け、補足を求めるレティシアは、視線を逸らさずに講じられる言葉に耳を傾けた。
「お客様を知り、最適な花を選び、そして背中を優しく押すこと。それがフローリストの仕事であり、誇りです。どんな方であれ、似合う花というものは必ずあります」
それが美辞麗句だとはシャルルもわかっている。わかっているが、それに誇りを持っている。たとえそれがお金にならなくても関係ないのだ。困っている人を見捨てるよりも、綺麗事だと罵られても構わない。
それは花を愛していれば、自然と身に付く要諦なのだ。そこにはシャルルは一片の恥じらいもない。それをあえてレティシアは苦言する。
「なら今の私に合う花なんてのは、さぞかし無様な花なんでしょうね」
「そんなことない!」
内部の邪気を爆発させるように割り込んだのはベルだった。レティシアのそんな姿は見たくない、という気持ちがそうさせた。もしこれ以上溜め込んでいたら、指を大事にすることも忘れて平手でレティシアの頬を叩いていたかもしれなかったのだ。
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