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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
コン・フォーコ
40/319

40話

「でもそれだけでわかるもんなのか? あたしもレティシアやベルを『お前』って言ったりするぞ。一日中そればっかりのことだってあるかもしれないぞ」


 それはベルも疑問に思っていたことで、先にシルヴィが代弁した形となった。


 それに答える用意をしていたかのように、シャルルは論説の裏付けを加える。


「もちろんそれだけで判断したわけではありません。もう一つがそのロケットペンダントです」


 一斉にすべての視線が、レティシアの首から下げられ、宙を漂うそれに向けられる。緩く温光色を反射するその輝き。


 もう何年も彼女は肌身から離していないのだが、傷や汚れは見受けられない。


「ロケット? ただのペンダントじゃないのか? 着けてるやつなんか学校にいくらでもいるだろ」


 遠回しに述べるシャルルに、シルヴィは身を乗り出す。


 しかしシャルルは苦虫を噛み潰したように表情を強張らせた。どこか言い辛そうな雰囲気である。


「それは……」


 シャルルは、言ってしまっていいものなのか、口ごもった。どうしてもレティシアを抉る事実になってしまうことは明白。ここまで明かしてしまったとは言っても、やはり言い辛い部分があった。


 眼鏡の奥の瞳に戸惑いの色を加味したその様に、さらにベルとシルヴィは疑問符を増やす。


「? どうしたの?」


 その様子から口にし辛いことだとは解釈しつつも、続く言葉を待つ。躊躇いを見せるシャルルに、凛とした声が掛けられた。


「続けて」


 顔を上げずに、そうレティシアは短く発言を促す。


 「しかし」と、それでも熟慮をしたが、シャルルは意を決して口を縛っていた紐を解き、「……わかりました」と覚悟を決めた。


「そのロケットには名前と、二つの西暦が刻まれていたんです。裏側に小さく、傍目には気付かないかもしれません」


 傷口を広げるには十分、それは百をも承知。だがしかし、それでもレティシアはさらけ出すことに決意を決めた。


 その意を汲んだシャルルは、パズルのピースを並べ、瞳を細めた。


「だから遠回しに言わないで結果だけズバッと――」


「もしかして……遺骨、なの……?」


 歯がゆい感覚が肌をまさぐり、答えを見出せないシルヴィは、いてもたってもいられない、と地団太を踏む。


 が、ベルが恐る恐る、情報から得たパースを組み立て、その全体像が見え、表情を強張らせた。場が凍るように止まる。


 否定をしないレティシア。それが意味するものは一つ。


「い……こつ……?」


「その通りよ」


 言葉少なにレティシアは認め、次いでシャルルが補足的に語を継ぎ足す。


「ロケットは恋人や家族に関連したものが大半です。しかしシルヴィさんが『レティシアさんは男性と付き合ったことがない』という発言とも照らし合わせ、十中八九家族であると」


 言い終わったシャルルは、目を落としてオスモカラーのみを虹彩に宿した。


 口を開けたままのシルヴィは、目で不確かな状況を噛み砕くかのように、瞬きの回数を増やした。呼吸も浅く、多く、心臓がいつもより大きく鼓動している。


「まじ、か……?」


 いつも感じる余裕が無く、ただ単に所感である。


「それに僕と同じ生まれの西暦、つまり――」


「それで私があなたを弟だと、ね。ホームズ顔負けといったところかしら。フローリストというものは、花以外にも目が利くようね」

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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