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318話
行動経済学、というものがある。心理学者のカーネマンやトヴェルスキー、経済学者のセイラーらが提唱したこの学問は、ひと口に言ってしまえば彼らの専門とする『心理学』と『経済学』を混ぜ合わせたようなもの。二〇〇二年に創設されたわけだが、どういったことに役立つのか。
人間は常に合理的に行動しようとする。それは理想的に無駄の省いた行動ではあるが、必ずしもそれができる人ばかりではない。なぜなら人間には『感情』や『直感』というものがあり、それらが合理的行動以外をとらせる。機械ではなく、人間であるがゆえ。
だからこそ『合理的ではない判断をする前提で』その理論や理由を研究する。それが行動経済学。その中でも有名な理論のひとつがプロスペクト理論と呼ばれるもの。それによると人間は思わず得た『利益』より、思わず失った『損失』にショックを受けやすい、ということ。
ギャンブルで勝って一万ユーロ手に入るより、負けて一万ユーロ失うほうが感情を揺さぶる。満足度と不満足度の絶対値には、必ずと言っていいほど差が出る。それがプロスペクト理論。




