314話
隣国のコーヒー事情はシャルルにもわからないが、ヨーロッパではほぼほぼコーヒーが主流。フランスでは多少は割合が紅茶に傾くかもしれないが、それでも難しさはなんとなく把握できる。
「……それは叶いそう、なんですか?」
一応聞いてみる。なぜそこまで紅茶に拘るのかはわからないが、好きという気持ちだけでそれを成し遂げようとしている気迫。応援はしたい。
アニーの答えはシンプル。
「もちろんです。だから幸せです」
手立てはある。茨の道ではあるが、光明が今はほんの百ルーメンくらいだけれども。難しくは考えない。できるかできないかの二択しかないのだから。
「それは…………よかったです……」
勢いに押されコメントに困るシャルルだが、同時に羨ましくもある。強い意志。きっとなにかを成し遂げる人は、こういう人物なんだろう。不思議と自分も元気になってくる。
そのやり取りをぼうっと眺めつつ、レティシアは自分の内側に問いかけてみる。
「調和……目標……」
「レティシアさんはなにか目標みたいなものってあるんですか?」
キラキラと輝く眼でアニーは身を乗り出す。ドイツを皮切りにした紅茶のヨーロッパ制覇。夢見ただけでテンションが高まった。
再度、紅茶を飲むレティシア。花の香り。紅茶の香り。普段だったら言わなかったかもだけど。今はなぜか、言ってしまってもいい気がする。
「そうね。あるといえばあるわ。まだぼんやりとだし、それほどやりたいという想いがあるわけでもないのだけれど」
少しだけ焦らす。興味なさそうなら言わない。聞かれたら。言おう。
「どういったものですか?」
気になるシャルル。彼女なら、大抵ことはできてしまいそう。そんなカリスマ性というか。素敵な女性だと心から思う。
小悪魔的に不敵なレティシアの微笑。
「知りたい?」




