308話
そして大の紅茶党であるアニーにとっても、今から飲む組み合わせは未体験。
「ボクもコスモスは初めてっス。やっぱり紅茶はなんでもアリっスねぇ」
花や果実を使った変わり種は多い。紅茶に限らなくてもライチコーヒーなど。たしかインフューズドコーヒー、とか言っていたような。
そんな余計な思惑はさておき、レティシアは静かにカップを口に運ぶ。そしてひと口。
「……美味しい。あまり紅茶は飲まないのだけれど、フルーツの香りのような。それと……」
最初はそう感じた。しかしゆっくりと喉を通過するにつれ、甘さの種類が変わっていく。華やかであり優しい甘さ。ほんの少しだけ。時々飲む紅茶と。たしかに言われれば違う、かも。
パァ、と太陽のようにアニーの表情が輝く。
「そうなんです。シッキムは人によって変化を感じる場合もあるそうです。ダージリンは一直線に最後まで同じ香りを楽しませてくれるんですけど、こっちもこっちで美味しいっスよねぇ」
こうして語り合いながら紅茶を飲むことができる。平和。とても。
「もう別にこのままで充分に幸せを感じそうなものだけれども。あまり余分なものを追加する必要はないんじゃないかしら」
その蕩けそうな表情を見ていると、レティシアはそう結論づけてしまいたくなる。花に囲まれて。優雅なティータイム。そして愛する少年。それだけでいい。
むーん、と真剣にアニーも考え込む。
「そうっスねぇ。じゃあこのままで——」
「いや、よろしければぜひ……」
自分がここにいる意味。いるならせめて、シャルルは自己主張したい。同時に、そんなことを言われるとなんでここにいるんだろう、と冷静に分析もしてみる。
静かにカップをソーサーに置き、レティシアは頬杖をつく。
「冗談よ。ここに花が加わったら、それはそれで楽しみだわ」
心穏やか。中々、自宅などではそういった飲み方はしない。なので新鮮な気持ちで受け入れることができそう。




