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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
スケルツァンド
296/319

296話

 ちょくちょく聞かれることのある、自身のその能力。とは言ってもアニーにも正しい解答が見つかっていないのも事実。


「うーん、言葉にすると難しいんスけどね。ボクも勘で動いてるだけっスから。そうっスねぇ……」


 なので。わかりやすく実行してみることに。


「? なに? どういう……」


 見えない糸に導かれるように、少女が自身の鼻先まで接近してくる。その様にレティシアは戸惑うのみ。一歩後ろに後退。


 目を瞑り、アニーはさらに近づく。そしてゆっくりと呼吸。パッと大きく丸い瞳を開け直視する。


「レティシアさんに合う紅茶がわかりました。ふむふむっス」


 そう、さも当然のことのように確信した。脳内はその紅茶のことでいっぱいになる。香りまでしてきた。


「……はい? 紅茶?」


 今、なんと言った? レティシアの耳に届いたものが間違いでなければ、この子は自身に合う紅茶がわかった、と。いや、今なんで紅茶? 紅茶? なんで?


 そういった混乱もアニーには慣れたもの。何度も説明してきたことでもある。


「はい、なんとなくなんですけど、ボクにはその人に合う紅茶がわかるんスよ。紅茶って癒されますから」


 だから「なんで?」と聞かれても「そう思うからです」としか返せない。でも今のところは? 皆さんに喜ばれているし。問題ない問題ない。


 百歩譲り、ひとまずそれを信じるとして。そうなるとレティシアはそれはそれで納得いかないことが。


「……私ってそんな疲れて見える?」


 癒しが必要と思われているということは、そういうことなのだろう。自覚はない。それに今は楽しさのほうが勝っている。いや、いた、か。予定が変わりそうな雰囲気のせいで。


 一緒に並べられたカップを手に取り、アニーは紅茶を淹れた際のイメージを作り出す。


「紅茶というものは、飲んで美味しい、だけじゃないんです。飲んだあと、どんな物語を感じるか。それが大事だと思うんです」

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