表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
スケルツァンド
295/319

295話

 にひひ、と自慢げにアニーは胸を張る。


「ボクは少し鼻がいいんスよ。素敵な香りがします。シャルルさんのお花が好きなという気持ちも」


 ただただ家業で囲まれているから、だけではなく、心から好きであるという感情も読み取れる。それは。彼女だけの、彼女にしかできない特性。


「……それは……ありがとうございます……」


 感謝、する場面なのだろうか今は。わからないが、とりあえずシャルルはお礼を述べておく。たぶんだけど、悪い意味ではなさそう。それに——。


 ふと、思い出したようにアニーは現状を把握する。


「あ、長々と話し込んでしまって申し訳ないっス。ボクはお土産を見にきただけなので。それじゃ——」


「もしお時間よろしければ、少しお話しできませんか?」


 引き止めたのはシャルル。気になる、ことがある。


 他のカップやソーサーを見に行こうとしたアニーだったが、目を丸くして立ち止まる。


「ボクっスか? 時間、全然ありますけど、いいんですか?」


 特に今日のこのあとの予定はない。ないからこそ、ドイツへのお土産を見に来ているわけでもあって。紅茶専門店なんかも見て回ろうか、程度にしか考えていなかった。


 しかしその提案。面白くないと感じる人物がひとりいる。


「全然よくないのだけれど。どういう風の吹き回し?」


 そうレティシアは眉をピクピクと痙攣させた。今日はベルもシルヴィもベアトリスもいない。そう、余計なものはなにもない状況。二人で楽しめると思っていた。


 が。肝心の少年はなにか見つけてしまった模様。それも他の女によって。おそらくは、フローリストとしての興味を惹くものなのだろうということはわかる。だけどそれとこれは別。今日はそういう日だったのに。


 そんな殺気にも似た圧を背中に感じ、小刻みに震えながらもシャルルは意志を貫く。


「……いえ、とても面白そうな能力だなと思いまして。単純にその、嗅覚というものが」


 なぜだろう。なにかその曖昧な感覚が、自分にとってすごく重要なもののように思えて。今この機会を逃したら、後々後悔しそうな。ゆえに、半ば無意識に引き留めてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ