293話
その人物、シシー・リーフェンシュタールを思い返すレティシア。一度話しただけなのに、心に残り続けている。
「まぁ、そうね。なんだか不思議な雰囲気を持っていた人だったけれど、あなたも違った意味で」
そして目の前の少女。そう、違った意味で個性を感じる。出会い方が突然だった、というのもあるが、清々しさと清らかさ。裏表の全くなさそうな。
そう評価してもらえるなんて、とアニーは身をくねらせる。
「いやー、あの方と同じに見ていただいて光栄です。感謝っス」
「……あのー」
なんだか自分の知らないところで話が進んでいるようで、気まずくなったシャルル。一応、会話に参加してみる。
鋭い眼光を浴びせるレティシアには、裏表はない少女、とはいっても危険性はある。その芽は潰していく。
「あなたは会わなくていいわ。女の影を増やすのは良くないこと」
ただでさえ自分以外にもシルヴィやベル、ついでにベアトリスという強敵に囲まれている。短期とはいえ、さらに増やすリスクはとらせない。ならば挨拶程度で終わらせるのが吉。それほどまでに、シシーという女性には魅力を直感した。
という意図がシャルルにもじんわりと浸透してくる。
「いや別にそんな……」
否定するので精一杯。いったい自分のことをどんなふうに捉えられているのだろう、と色々気が重い。
最初は似ていない姉弟という間柄かと思ったアニーだが、彼女にはわかる。二人の位置関係。
「ふんふん、なるほど。そういうことっスか。シャルルさんは羨ましいけど大変っスねぇ」
詳しい経緯はわからないけど。矢印がそう向いていて、でも肝心の本人は違う感じで。ははぁ。青春っスねぇ。
そのニヤついた目から、シャルルもだいたいの心情を察してくる。
「なんか変な誤解されているような……」




