表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
モレンド
284/319

284話

 その肩の手を払いつつ、ベアトリスは足元に置いておいた小さな紙袋を手渡した。


「手土産だ。それでも飲んでいろ」


「こりゃどうも。なにこれ?」


 飲んでいろ、ってことは飲み物。重さからいって茶葉? 紙袋の中はまたさらに小さな紙袋で包まれている。スイーツに合うかな、と受け取ったサロメは妄想を膨らませる。


 再度、鍵盤に手を置いたベアトリスはその質問に一応答えておく。


「エキナセアという花を使った茶葉だ。ハーブティーとして飲め」


 なんの曲を弾こうか。そんなことを考えながら。これから冬本番。冬。寒さ。ノエル。とすれば。


 エキナセアは、北アメリカ原産のキク科ムラサキバレンギク属の多年草植物。一八世紀頃から使われ出した、比較的歴史の浅い薬草。先住民族であったインディアンは、免疫力の向上を主として様々な傷や病気などに使用していたという。ドイツでも連邦保健庁が効能を認めるハーブ。


 そのエキナセアの中でも、効果が確認されているのは数種類。乾燥させたそれらを使用し、弱火で炒った茶葉。レモンで酸味、蜂蜜で甘味を加えても美味しくいただける。もちろん作ったのはシャルルだが、我が物顔で土産とした。


 ハーブってことはスッキリした味わい。激甘なものと合うかね、とサロメはとりあえず矛を納めることにした。


「ま、いいわ。なにかあったら言って。なにもないはずだけどね。このあたしが調律したんだから」


「言ってろ」


 いちいち勘に障るヤツ。だが、それもベアトリスは今は忘れることにする。ピアノ。と、自分。それだけでいい。空気に溶け込むように。音を奏でる。


 フィンランド出身の作曲家、シベリウス『モミの木』。樹の組曲と呼ばれる彼の小品のひとつで、実は曲名が国によって違う。というのも、寒すぎる土地ではモミが育たずにクリスマスツリーではトウヒを使うから。一年中葉が茂っているので『永遠の命』をこの二種の木は象徴していると言われている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ