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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
モレンド
281/319

281話

 そのジトッとした視線を浴びながら、とりあえずまたサキナは照れ笑いで話題を逸らす。


「ま、ここは支店と本店みたいな関係だし。シャルルくんも〈クレ・ドゥ・パラディ〉に来てるじゃない? それそれ」


 たしかに定期的にリオネルに学びには行っている。が、それとこれとは別だとシャルルはしっかり分けている。


「僕はあちらで働いているわけではないんですけど……」


 血の繋がりはないのだろうが、サミーにはこの二人も姉弟のように見えてきた。


「はは、なにやら色々と複雑そうだね。でも、ただ単純に花としても素敵だ。このベースも。やっぱりここは刺激がもらえる」


 家のどこに飾ろうか。そんなことを先走る。常に見える位置に置いておきたい。


「そいつはどーも。オーナーには『すごい頑張ってた』と伝えておいてください」


 こうしてサキナは自分の株を上げていく。他人からの褒め言葉のほうが、より重みがあるだろうから。どれだけ自分で「頑張ってきました」と言っても、オーナーはきっと疑うしかしないだろう。やだねー、そういう大人にはなりたくない。


 ひと段落したようで、気になっていたことがあるシャルルは、それの解決にも手をつけてみる。


「で、ところで姉さんはどこに行ったんですか?」


 今日のようなことはたまにある。だが、詳しいことはベアトリスは教えてくれない。なので他の人に聞くしかない。姉がいなくなる時、この人が来ている気がする。


 しかしサキナは首を傾げるリアクション。というのも、彼女にも正確にはわかっていない。友人ではあるが、知らないことだってそれはそれは多くある。


「さぁ? 私はケーキを食べに来ただけだからね。でもそういう時ってだいたい——」


「だいたい?」


 その言葉の溜め方がシャルルには怪しさしか生まない。じっと見つめ、次の言葉を待つ。


 たっぷりと時間を使って遊んだあと、心の中でドラムロールを鳴らしながらサキナは口を開く。


「ベアトリスのもうひとつの顔が見える時だと思うんだよねぇ」


 ぬふふ、とまた新しい声。弟くんをおちょくるのは楽しい。こんな弟だったら欲しかった。


「……?」


 姉もよくわからないが、それ以上にこの人物がよくわからない。シャルルは訝しんだまま、この場にいないベアトリスのことをちょっとだけ、心配してみた。

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