表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
モレンド
261/319

261話

 手にした携帯からはまだ芸術的な演奏が続いている。それに気づき、ベルは首を縦に振る。


「え、あ、うん。リシッツァっていう女性ピアニストなんだけど、参考に観てたら逆にやる気根こそぎ持ってかれちゃった。次元が違いすぎて」


 こういう時はどういう表情するのが正解なのだろう。わからないので、とりあえず笑ってみる。少しだけ、悲しさも含んだ照れ笑い。


 そのリアクション。リディアにはとても不自然すぎて。


「へぇ、ベルはリシッツァになりたいの?」


 そんなことを聞いてみた。ただただ諦めている以外にも色々と含まれているみたいで。突っ込んでみたくなる。そういった、人を読むのは好きだしわりかし得意。


 キョトン、としながらも不思議な方向から攻められているようで、一瞬思考が止まるベル。私が? リシッツァに? なる? こんな風に弾く?


「無理無理。憧れではあるけど、ここまでいくってのは今のところ、足元にすら及んでない感じかな。それに弾き方も音も方向性が違うから」


 いくらなんでも、これは別格。比べられるのも恥ずかしいくらい。


 現実、リシッツァはピアノの中でも扱いが難しいとされるベーゼンドルファーを操ることができた、数少ない名手のひとりと言っていい。彼女自身が『ダーク』で『古い』と表現する、フルコンである二九〇の最大限まで力を引き出せている。


 ふーん、とつまらなそうにリディアは隣に腰掛ける。肩を寄せて密着。


「じゃあ、それでいいんじゃないの? なにを悩んでる?」


 ピアノのことはよくわからないけど。今、目の前の人物がもがいているのは見ての通り。だとしたら助けてあげたいじゃない? いや、本音はそういう人物を見ていると楽しいから。だから首を突っ込んでみる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ