表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
モレンド
254/319

254話

 飄々としたまま、サキナはオペラを口に運ぶことはやめない。


「ベアトリス。お邪魔してるよ。先にケーキもいただいてる」


 フォークを振って牽制。すでに二切れは胃の中。あとでお土産も持って帰ろう。


 その様を見、呆れていいやら怒っていいやら、どうリアクションすればいいのかベアトリスにも判断しかねる。


「……お前が来る時に限って……狙ってやってるのか?」


 弟がケーキを作った時には高確率でコイツがいる。不可解だが、誰かに漏らした記憶もない。まさか弟がわざわざ呼んでいることもないだろうし。すごいのかすごくないのかよくわからん能力。


「まぁ、我々は一心同体だからね。ベアトリスの喜びが伝わってくるのさ」


 この感覚は上手くサキナにも表現することができない。「なんとなくビビビっとくる」日がケーキなだけ。逆に言えばケーキが食べたければ第六感に従うのみ。チーズからショコラまで好き嫌いはない。


 なんだか背筋が凍りそうな発言は置いておいて、この状況を黙って見過ごすことはベアトリスにはできない。


「そんなわけあるか。で、なんの用だ? ないならそれを食べたら帰れ。暇じゃない」


 このあと、午後から予約が入っている。面倒だとは思いつつも、入ったものはしょうがない。それにご贔屓にしていただいたらしいから、みすみす逃す手はない。


「まぁまぁそう言わず。今日はさ。私が仕事請け負うよ。いいっしょ?」


 さらに用意されたオペラに手をつけながら、サキナはそんな思いつきのような提案をする。だから休んでていいよ、と。自身の店と〈ソノラ〉。違いもわかっているし、物の位置もなんとなくは。わからなかったら聞くから。


 またコイツはいきなりワケのわからないことを。唇を噛んだベアトリスは蔑むように睨む。


「はぁ? どういう風の吹き回しだ? ダメに決まっているだろ。今日はこのあとお客が——」


 そう言いかけたところで、ひとつ、頭に浮かんだことがある。今日、この後に来るお客。それは。元はと言えば。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ