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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
モレンド
253/319

253話

 なぜこんなことになっているんだろう。正直、興味が欠片もないシャルルは適当に話を合わせる。


「……まぁ、頭脳を使う方々も体が資本ですから。たまたま筋肉がつきやすかったり、とか」


 健康であることに越したことはない。その過程でたまたまそっちにも才能があったりして、結果ハマったり。そういう人だっているだろう。シュワルツェネッガーもボディービルからの俳優だし。


 それも最初にサキナは考えた結果のひとつ。だが、この世の中は理不尽に溢れている。出る杭は打たれる。となると、こういう考えもできる。


「学者ってさ、論文とか書くじゃない? そういう時って反論もあるわけじゃない? たぶん。で、そんなことを言ってきたヤツら、一撃でブチのめせる、って考えたら心に余裕を持てるからじゃないかな。だから鍛える」


 一番しっくりきた答え。文句を言おうものなら殴られるのでは、という恐怖を相手に与える。ゴリラのドラミングが実は、威嚇ではなく「戦うのはやめましょう」という和平の証であることが証明されたように。戦いを望まないからこその選択。筋肉。


 やはり全く興味が湧かないので「はぁ」と気のない返事をしつつシャルルは、


「随分と極端な気もしますけど……」


 と一応相槌は打っておく。というか。久々に来てなにを話しているのだろう、この人は。まわりになにを考えているのかわからない人は多いが、その中でも特にこの人は。


 たとえ自分の話の最中でも、飽きたら他の話題を振り出すサキナ。気まぐれで彼女は話す。


「つまりは、体を鍛えるってのは心を鍛えるってことにも使えるよね。だから——」


「またお前はくだらんことを。用がないならさっさと帰れ」


 いつの間にか店内にいたベアトリスが苦言を呈す。基本的に姉弟以外は部外者と考えているため、態度は厳しい。


 この店の店主、ベアトリス・ブーケ。リオネル・ブーケの実の娘で、シャルル・ブーケの姉。背は低いが性格は強気。飛び級で学校は卒業している。

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