240話
だが今回はカルトナージュでの依頼。難易度はそれなりに高いらしいが、そこに信頼関係をベルは感じた。
「でも、オードならできる、ってジェイドは任せてるわけで」
そこが問題。できるギリギリのところを無意識に突いてくるそのいやらしさ。オードの悩みの種。
「全く、簡単に言うなっての。それなのに今のところ、リターンがないのよ。ギブとテイクがね、バランス悪い」
充実感はあるっちゃあるけど。それは言わないでおこう。
「うーん……まぁ、私にはどうにもできないわけで……頑張って、としか」
応援はできる。それだけ。ベルはそれだけなら全力でやる、と心に誓った。役に立つかは別として。
あいつにもこれくらい、他人を思いやる気持ちがあればね、とオードはないものねだり。
「ま、やるだけやってみるしかないか。ベルもま、上司と上手くいくように祈っとくわ」
心の中で祈るだけ。特になにか行動をするわけではないけど。
上司。花。ガーランド。いくつかの単語がベルの胸に去来する。そして思いついてしまった。どうしよう。言っていいのかな。いい? いいよね? 言っちゃえ。
「……ねぇ、もし、もしもなんだけど。ガーランドにフローラルフォームとか、つけたらどう、かな? そういうの、聞いたことある?」
ベアトリスさんに言ったらなんと返されただろうか。でも言うだけ。手芸の点から聞いてみたくなった。が。
「……たしか、ないこともなかった、はず。ネットに入って、結婚式なんかでは使われてた、ような……」
そっちは本職ではないため、オードも聞いたことがある程度。というか知っときなさいよ。二回目。
長い期間飾っておくため、適してないことはわかってはいる。だが、あまりやられていないからこそ。自分はフローリストなのだから。ベルは挑戦したい。
「普通はエバーグリーン、こういった常緑針葉樹を使うってのはわかるし、これなら数ヶ月間楽しめるってのもわかる。生花ならドライフラワーになっていく過程も。だけど、フラワーアレンジメントと同じようにやってみたい」
花は自由。自由は楽しさ。それを知ってしまったから、やって後悔なら望むところ。たぶん、シャルルくんも「うわぁ……」みたいな目で見てくるだろう。
なんとなく『覚悟』のような、プロフェッショナルな心意気をオードは察した。そして携帯でなにかを検索。
「それはもうあたしの仕事じゃないわね。〈ソノラ〉で聞くべき。生花だし、普通はやらないから。それにほら」
「? ……あっ」
見せられた液晶画面。そこに出てきた文字を見て、ベルは気落ち。




