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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
ヴォランテ
235/319

235話

 しかしそれも柳に風。いつだってジェイド・カスターニュという人物は自分を中心に考えている。ダメなら断られるだけ。断りきれなくなるまで頼むだけ。


「オード以外に誰が作るんだい? 私はショコラで、ベルは花で、オードはカルトナージュで。それぞれの役割が上手いこと分担できている」


 そうすれば私のショコラが完成する。そのためにみんな、頑張れ。


 ……できているからなんだっての? こいつの作品のために、なんであたしとベルが? 余計にオードは混乱。


「あんたがショコラで作るんじゃないの? なんでこっちに」


 それか自分で作れ。やり方はどっかで探せ。


 それなんだけどね、とジェイドの勢いは止まることを知らない。


「残念ながら、私のショコラは出来上がってて。最後にアイディアが思いついてしまったんだ。しょうがない。そうなるとカルトナージュで付けるしかないだろう。で、できるのかい?」


 私の信じるキミなら。ほら。


 目つき鋭く、舐め回すように睨むオードだが、頭の中には浮かんでいる。たしかにそういう技術はあるが、また異なる系統のもの。


「……できるけどムカつくからできない。正確には、少しカルトナージュとは違う」


「よし、決まりだ。ゼラニウムを頼むよ。それで完成」


 パン、と手を叩いて、この話はここまでとジェイドは場を収める。


 当然、納得のいかないのはオード。怒り、よりも呆れ。


「……あんた、話聞いてた?」


 できない、と明確に言ったつもりだったが?


「あぁ。こういう言い方をする時のオードはやってくれる」


 どういう変換があるとそうなるのかはわからないが、ジェイドは肯定と受け取った。よかった、これでバッチリ。


 そうなると鼻で笑うしかないオード。湧き上がる感情。


「は。その期待、裏切りたくてしょうがない」


 やってもいいけどバラを作ろう。そうだ、それがいい。


 このやりとり。ベルの目には輝いて映る。


「二人は仲がいいんだね」


 いがみ合っているようで実際には物事はちゃんと進んでいて。お互いのことがよくわかっていて。こういう友人関係、というのも憧れる。


 ふふん、と誇らしげにジェイドが笑う。


「あぁ、彼女のご両親とも仲がいいからね」


「あんたが勝手にウチに入り浸ってるだけでしょ」


 そのぶんオードは冷静に。バランスの取れた掛け合い。


「ともかく。オードのことは信頼していい。じゃ、ごゆっくり」


 ポン、と軽くベルの肩を叩き、時給泥棒ジェイドは帰っていく。その先は戦場、キッチン。混んでいるのによかったのだろうか。


 ハリケーンの過ぎ去ったあと。どっと疲れが増すオードだが、とりあえずやることは決まった。ガーランドとリース。カルトナージュバージョン。


「んじゃ、食べたら行こうか。場所はウチでいい?」


 一九区にある専門店『ディズヌフ』。そこがあたしの家であり、職場でもあり、遊び場。

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