227話
その細く白い指先から放たれる、煌めく粒子。羨ましい、という欲望がブリジットに侵食してくる。
「……私も花のこと詳しくなれば、もっとショパンに近づけるかな?」
貪欲に。手段はなんでも、もっと彼のことを知りたい。これは恋のようなもの?
オススメは一切しない。だが、共有できたらベルとしても嬉しいが。
「覚えることも多いよ。ピアノの練習時間も減るだろうし。ただでさえリースとか、指先での細かい作業が——」
と、作業を脳内で映像化したところで、動きが止まる。細かい作業。指先で。チクチクと。それは、ひとつの可能性を押し広げるもの。
「? ベル? どう、したの?」
突然。いや、突然の奇行に走ることは今まで何度かあったので、ブリジットとしては反応に困る。またなにかするんだろうか? だが、より深く思考に潜るようなその姿に、声のかけ方ですら迷う。
また室内を歩き出すベル。このほうが考えがまとまるらしい。自分なりの発見。
「……ねぇ、ガーランドとかリースって、色々な道具を使うよね……? 布とかワイヤーとか」
問われたブリジットは、咄嗟に想像してみる。作ったことはないのであくまで想像。
「うん、まぁそうだと思うけど。固定したり貼り付けたり、とかもあるんじゃないかな」
形からするに、そういったものを使用する。はず。
間髪入れずに、さらに問い詰めるのはベル。誰か自分の予想に賛同者が欲しい。
「てことは。それは『手芸』ってことだよね? 切ったり縫ったりする」
そのはず。むしろ、花よりもそちらのほうが近いまである。造花を使う時点で、花屋だけに限定されていない。どこにでも売っているものだ。
いまいち把握しきれないブリジットは、答えへの最短ルートを模索した。
「そう……なのかな。なにかアテがあるの?」
アテ。そう、アテがある。神の導きに感謝するべき出会いがベルには。
「……いいこと思いついた……!」
その顔は、八区の花屋の店主の悪い顔によく似ている。




