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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
マルカート
219/319

219話

 ふわふわモコモコと、まるで降り積もる雪のように。なんとなく、雪というと少し寂しい、静かなイメージもありますが、これなら楽しい。雪。なんだか胸が締め付けられます。気のせい……ではないですよね。


「正確には『雪』もしくは『雪虫』だ。お前の心に巣食う虫。それをたいらげ、前に進むも良し。舞う雪に身を任せるも良し。自分で決めるんだ」


 そう教えてくれたベアトリスさんの目は、少しどこか遠くを見ているようで。深く質問をするのが躊躇われました。そして、受け取った花を手に取ってみました。ニット素材だからか、花器が柔らかくて変な感じです。中に型となるようなものが入っているようでした。


 より近くで見てみましたが、とても綺麗で香りも落ち着きます。それでもやはり。自分はどうすればいいのか、前よりもわからなくなりました。そもそも、告白するとか。そういうのではなかった気がします。ただ悩んでいただけで。このままをキープ。それも全然ありなのでは。


「言っただろ。勝ちも負けも引き分けも。そんなものはない。あるのは結果だけ。好きなだけ悩め。答えはない。だが——」


 そう、言葉を濁したベアトリスさんがサラセニアに優しく触れました。指でも食べさせる、なんてことはないでしょうが。その続きを話してくれました。


「この花の花言葉は『特別な存在』。好きとか憧れているとか、そういうのをひっくるめて自分の中にしまいこめ」


 それだけ残し、ベアトリスさんは奥の部屋に引っ込んでいきました。ここから先はなにもできない。そういう意味なのでしょう。先ほども言われた通り、自分で決めるしかない。


 特別な存在。そう、なのかもしれません。ただそれだけで。告白するから勇気があるわけではない。しない勇気、というのもあるのではないでしょうか。ずっと心に秘めて。自分の目標とするような。そういうものであっても。


 静かな店内は、とても緊張して。図書館にいる時のような、不思議な感覚で。もう一度アレンジメントを見てみたら、花が教えてくれました。


 そして決意です。


「……よし、言うだけ。言うだけ。返事を聞く前に逃げる。それなら……頑張れる、と思う」


 我ながら情けない気もしますが、今はこれが精一杯です。ですが、いつかきっと。胸で暴れる虫達を、虫籠で飼って名前をつけてやります。虫Aとか。

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