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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
マルカート
203/319

203話

「ヒマワリは知っての通り、様々な使い方ができる。花として、種として、緑肥として、化粧品として。まさに様々な顔だ」


 なるほど。たしかに、ヒマワリは土壌改良にも役立つと聞いたことがあります。侮れませんね、まさかそんな万能選手がこんなに近くにいただなんて。


「本来、告白なんかではブーケで渡すべきなのかもしれんが、ウチはアレンジメント専門だ。そっちは諦めてくれ」


 アレンジメントとブーケ。よく考えたら、違いがあると今気づきました。持ち運びするのであれば、片手で持てるブーケのほうが、受け取るほうもいいかもしれません。アレンジメントとなると、袋にでも入れない限り両手になってしまいます。袋のまま渡す、というのはないでしょう。うん、ないです。


「そこで、持ち運べるように、持ち手の付いたバスケット型。せっかくなので、四種類のシリーズを使おう。ヴィンセントネーブル、サンリッチオレンジ、プロカットプラム、レモネード。緑としてモンステラや、フィラフラワーとしてカスミソウ。その他にカラーなんかも合うな」


 なにやらよくわからない単語が並べられましたが、バスケットにセロハンシートを巻き、その上に水を含んだスポンジ。そこに花を挿していくと、不思議と形となっていきます。さらに様々な角度から微調整していくと、より立体感が出てきて、少しずつ高揚する自分に気づきました。


「しっかりと、フローラルフォームを隠すように、隙間を埋める花も。これがないと、どんなに花の見栄えがよくても大減点だからな」


 そういったところにも気を使うと。たしかに足元がお留守になっていたというか。なんというか、すごくいいスーツを着ているのに、下の丈が短すぎて靴下が見えているような。そんな感じになってしまいます。これはいけません。


 いつの間にか、花というものの面白さがわかってきた気がしました。もちろん、彼女のことが最優先でここに来たわけではありますが。なんだか奥の深さ、というよりも、浅瀬では浅いなりの楽しみ方があるというか。

 

 彼女であればどんな花が似合うのだろう、とか。もし自分のためであれば、どんな花を選んでくれるのだろう、とか。そういうことを考えるだけでも楽しいかもしれません。全然わからない世界ではありますが、フランスに生まれればみんなこうなのでしょうか。


「よし、できた。パパッと作ったにしては、まぁいいだろ。フラワーアレンジメントは……花は、自分の口から伝える以上に、深い奥底から伝えてくれる。時もある」


 なんとなくですが、その気持ちはクラシックをやっているとわかる気がします。いや、クラシックに限らないかもしれません。ロックでもジャズでも、絵画やダンス、料理などでも。込めた自身の想いというものを、違った形で、違った形だからこそ表現できるというのもあるのでしょう。

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