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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
トランクイロ
177/319

177話

 そんな無意味な争いが繰り広げられているフラワーアレンジメント専門店〈Sonora〉。店内はオスモカラーの床、そして壁や棚には無数のアレンジメント。店の奧にはシンクやエスプレッソマシンもあり、来客用として今日も働いてくれている。


 騒がしい店内。そこに入店する人影。ドアに括り付けられた鐘が鳴った。


 反射的にシャルルは出迎える。


「あ、こんにち——」


「なにをやっているんだ、バカらしい」


 開口一番、厳しい口調で罵るのは、この花屋の店主ベアトリス・ブーケ。基本、機嫌は悪いことが多い。それもこれもこの三人が大体の原因。


 この店の長が来た、がしかし、レティシアの態度はそのまま。むしろ少し口角が上がる。


「せっかくだし、花の基本を私達も学ぼうと思って。バイト代とかはいらないわ」


 ここ、ひいてはシャルルと一緒にいるための口実。別に本気で詳しくなろうという気はさらさらない。ついでに知識がついたらいいか、程度。


 その上からの言い方に、立場的には一番上のはずのベアトリスは、静かに憤慨する。


「なんで習っている身でもらえると思った? それにそういう講座はやっていない。他で受講してこい」


 どっかの暇そうなM.O.Fが開催しているレッスンがある。お願いすれば、ヤツならタダでやってくれるかもしれんぞ?


 しかし、黙っていることができず、そこに割り込むシルヴィ。対象の相手が若干怒り気味ということなど気にせず、近づいて肩を抱き寄せる。


「いや、そんなカッチリとしたの嫌だし。向いてないし。ここなら楽しんで学べそうじゃん?」


 やはり学習は嫌々やっていても身につかない。前向きだからこそ吸収する、と主張。


 その手を払いのけ、下から見上げるベアトリス。


「お前も。ここは職場だ。利益を出さなければいけない場所だ。わかったらさっさと帰れ。それに——」


「それに?」


 見下ろすシルヴィ。柔和かつ、反応を楽しんでいる悪い顔。今度は頭をポンポンと優しく撫でる。


 だが、当然それはベアトリスにとって怒りのスイッチになっている。


「馴れ馴れしい。いいから離れろ」


 手首を掴んで投げ捨てた。


 それによりバランスを崩すシルヴィ。


「おぉ?」


 まさか抵抗されるとは。次からはもっと体を密着させて、対策を立てよう。反省? ないない。


「ただ役割を決めて、バランスよく整えて。それだけではなんの意味もない。どこをどう強調するか。あえてバランスを崩すことも視野に入れなければダメだ」


 言ってしまってから、ベアトリスはハッとした。勝手に講義みたいになってしまっていることに。


 とはいえ、本格的に習うつもりもないシルヴィからしてみれば、バランスだの強調だの。全くインプットされてこない単語だ。


「って言われてもなー」


 それよりもベアに可愛い服を着させたりとか、シャルルを拉致したりするほうが刺激的だ。

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