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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
スピリトーゾ
138/319

138話

 うんうん、と頷きながら、リオネルはこの先を予見し、先んじて総評する。


「まさかそうくるとはね。面白い。青い花器からそこにいくのは、中々センスある」


 M.O.Fのお墨付き。店にある色々な道具を使ったが、それだけ知識があるということ。自身が同じ年の頃にできただろうか。いや、鼻を垂らしながらサッカーボールを追いかけていた。


 全て挿し終えたシャルルは、ベースごと手に抱える。


「できました。『エーゲ海』です」


 そう名付けたアレンジメント。誰かと競うものじゃない、というのが自分には合っている。ファーストインプレッションで、または一度脳をクリアにして。そこから生まれたものが、自分の想像する通りに作れたら。お客さんに寄り添うとか抜きにして楽しい。


 ハーバリウムなどで、固定させるために使うジェル。冷えて固まったそれに、ワイヤーで固定したプリザーブドフラワーを挿す。そうして出来上がったアレンジメントは、まるで花器の中で浮いているかのように見える。


「青い花器は海。そして塩分濃度が濃く、沈まない海といえばエーゲ海。なるほど。シンプルだがいいね」


 それを祝福するリオネル。たった三種類の花だけで、ここにギリシャとトルコに囲まれた海がある。想像することができる。


「よし、今度そういうテーマをもらったら真似しよう。子供がいい感じの作ってたんですー、って言っておけば、家族の仲の良さもアピールできるしな」


 強かな計算を挟みつつ、子供の成長に満足。そうか、そういうのもありだな。


「まぁ……別にかまいませんけど……」


 目立つことが好きなほうではないシャルルは、奥ゆかしく許可する。それより、今日ここに来た意味は店の手伝いもあるが、それと同時に。明日は万聖節。


「今日は泊まっていくんだろ? ベティには了承済みだけど」


 片付けをしつつ、今後を把握するリオネル。ベティはベアトリスのこと。シャルルに確認を取る。今夜から出かける予定。


 そのつもりで来たため、シャルルは首肯する。


「そうですね、本当なら姉さんにも行ってもらいたいですけど……」


「あいつ、朝弱いからなぁ」


 低血圧な娘のことをリオネルは思い出す。そうでなくても、昼も夜も不機嫌。特に自分に対して。


 仕方ない、というようにシャルルは姉の肩を持つ。


「夜は遅くまで起きているようなので。お店のことはだいたい姉さんがやってくれてます」


 それに今はひとりじゃないし。なんだかんだ、愚痴を言いつつもだが、つまりそれは口数が増えたということで。その要因は、ベル先輩なわけで。

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