138話
うんうん、と頷きながら、リオネルはこの先を予見し、先んじて総評する。
「まさかそうくるとはね。面白い。青い花器からそこにいくのは、中々センスある」
M.O.Fのお墨付き。店にある色々な道具を使ったが、それだけ知識があるということ。自身が同じ年の頃にできただろうか。いや、鼻を垂らしながらサッカーボールを追いかけていた。
全て挿し終えたシャルルは、ベースごと手に抱える。
「できました。『エーゲ海』です」
そう名付けたアレンジメント。誰かと競うものじゃない、というのが自分には合っている。ファーストインプレッションで、または一度脳をクリアにして。そこから生まれたものが、自分の想像する通りに作れたら。お客さんに寄り添うとか抜きにして楽しい。
ハーバリウムなどで、固定させるために使うジェル。冷えて固まったそれに、ワイヤーで固定したプリザーブドフラワーを挿す。そうして出来上がったアレンジメントは、まるで花器の中で浮いているかのように見える。
「青い花器は海。そして塩分濃度が濃く、沈まない海といえばエーゲ海。なるほど。シンプルだがいいね」
それを祝福するリオネル。たった三種類の花だけで、ここにギリシャとトルコに囲まれた海がある。想像することができる。
「よし、今度そういうテーマをもらったら真似しよう。子供がいい感じの作ってたんですー、って言っておけば、家族の仲の良さもアピールできるしな」
強かな計算を挟みつつ、子供の成長に満足。そうか、そういうのもありだな。
「まぁ……別にかまいませんけど……」
目立つことが好きなほうではないシャルルは、奥ゆかしく許可する。それより、今日ここに来た意味は店の手伝いもあるが、それと同時に。明日は万聖節。
「今日は泊まっていくんだろ? ベティには了承済みだけど」
片付けをしつつ、今後を把握するリオネル。ベティはベアトリスのこと。シャルルに確認を取る。今夜から出かける予定。
そのつもりで来たため、シャルルは首肯する。
「そうですね、本当なら姉さんにも行ってもらいたいですけど……」
「あいつ、朝弱いからなぁ」
低血圧な娘のことをリオネルは思い出す。そうでなくても、昼も夜も不機嫌。特に自分に対して。
仕方ない、というようにシャルルは姉の肩を持つ。
「夜は遅くまで起きているようなので。お店のことはだいたい姉さんがやってくれてます」
それに今はひとりじゃないし。なんだかんだ、愚痴を言いつつもだが、つまりそれは口数が増えたということで。その要因は、ベル先輩なわけで。




