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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
コン・アニマ
135/319

135話

 一瞬躊躇ったが、サミーは決断する。


「『紅茶』『五年』で思いつくことある?」


 聞いてしまった。もし知らなければよかったことだとしても、覚悟はできている。ちなみにネットで検索しても、『賞味期限が五年過ぎた紅茶は飲んで大丈夫か』という疑問に専門家が答えているサイトに行き着いた。これは無関係と見ていいだろう。


 その二つの単語を聞いたオーレリアンは、即座に閃いた。


《それなら王室御用達のリスト更新かな》


 うん、それだ、とひとり納得。


 全く予想していなかった解答に、サミーは首を傾げる。


「なにそれ?」


 王室御用達? リスト? 更新?


 詳しくオーレリアンは補足する。


《イギリスでは王室御用達に認められた紅茶は、五年ごとに再審査されるんだよ。増えたり減ったり、その度にリストが生まれ変わる》


「生まれ変わる……?」


 待て、なにか繋がるかもしれない、とサミーは頭を叩いて刺激を与える。喉元まできている、たぶん。


 ついでに思いついたことが、オーレリアンにはもうひとつ。


《五年で生まれ変わるといえば、アメリカのバージニア大学の研究で、人間も亡くなってから、四年半から五年くらいで生まれ変わるっていう説もあったね。次の映画のネタになんかどう?》


 冗談混じりでオーレリアンは伺う。電話の向こうでサミーが唖然としていることに気づかずに。


「……」


 《サミー?》


 なにも反応がないので、電波が悪くなったか? とオーレリアンは一度携帯の画面を確認したが、問題ない。ではなんだ?


 そして、もしやと勘繰ったサミーは、へデラベリーの花言葉を調べた。イングリッド・バーグマンばかり気にしていたが、それを支える縁の下の力持ち。頭を抱えて苦笑する。


 《サミー? さっきからどうした?》


 情緒不安定な友人を、オーレリアンは心配する。映画監督は変人が多いが、やはりコイツもか、と。


 だが、全てを悟ったサミーは、彼を褒め称えた。


「オーレリアン、有能」


 あとでいいワインを送ってやろう。


 よくわからないが、オーレリアンも褒められて悪い気はしない。気持ち悪いといえば悪いが。


 《え、あぁ、そいつはどーも》


 とりあえず受け取っておく。喜んでくれたなら幸い。


 今、全部が繋がった。そして映画監督というスイッチを再度オンにする。現在制作しているのは、フランス文学を題材にした作品。元の作品も人気が高いだけに、失敗したら監督としての地位が危ない。だが、サミーは大胆に味付けする。

 

「追加したいんだが」


 思いついちゃったものは仕方ない。やれることは全部やる。興行収入など知らない。そもそも、そんなもののために映画監督になったわけじゃない。


 《なに? あんまいじると原作ファンから袋叩きにあうぞ》


 一応、オーレリアンは注意する。しかしこうなったら聞かないのは知っている。あくまで一応。


 ニヤリ、と笑ってサミーは提案した。


「お節介な花屋の女とか、作品に盛り込めるか?」


 へデラベリー、花言葉。『死んでも離れない』。こっちのセリフだって。

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