表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
アフェッツオーソ
104/319

104話

「ファビアンさんは元フローリストだそうですよ。それもとても情熱的な。少し憧れちゃいますね」


 頬を繋いでいない方の指で軽く掻いて、シャルルはなぜか決まり悪そうにする。


 そこをベルは意地悪く突いた。


「そうだったんだ……似合わない、って言ったら怒られそう。でもシャルル君、情熱的な男性に憧れちゃうんだ? ならもっとさ、普段から手とか自分から積極的に繋いできてもいいんじゃない?」


「いや、あの……そんなつもりで言ったのでは……」


「んー?」


「うわあ! もうそれはやめてください!」


 心を悟られまいとシャルルが顔を背けたところを、前方に回りこんだベルに抱きつきを許してしまう。まだ完全には極まっていなかったため、慌てつつもシャルルは引き離すことに成功する。だんだんと反射神経ゲームとなりつつある。


 含み笑いで目を細めたベルが箴言を叙する。いつでも隙だらけなので、実はやろうと思えばいつでもいけるのだ。


「そんなんじゃ大人になったとき心配だよ」


「こんなことやるの、先輩とレティシアさんしかいません!」


「どうだか」


「むー……」


 童顔の眉間に皴を寄せてもあまり威厳はない。むしろシャルルの幼さに一段と進行を加えただけにも見える。もう少し大人っぽくなりたいとは思うが、同級の男の子達と比べても背丈からしてそれも怪しい。それに姉の身長を考慮して、遺伝であるなら絶望的だろう。


 心臓の鼓動を聞かれないように、たっぷりと間を置いた低い深呼吸の後、シャルルは切り出した。


「あ、先輩。左肩にブラッケンファーンの切れ端がついてますよ」


 それはアレンジの小物として使ったそれを指した。


「え、嘘? どこ? なんで?」


 合点がいかない、とベルは肩をまさぐった。


「小さいものですから。少し屈んでください、取りますね」


「なんでこんなとこに――」


 と言いつつも、地下鉄に乗ったとき『肩に草の生えた女の子』として見られるのは嫌だな、と思い屈むことでお願いをする。あれ? ていうか、取るだけなら別に屈まなくてもいい気がするのに、と腑に落ちない不安を抱えていると、


 その頬に、

 柔らかな感触。


 それはシャルルの唇が軽く当たった証拠。


「——え?」


 目を瞑っているので、ちゃんとした位置に出来たかは定かではない。ただ少々間抜けなベルの声からして、ある程度はしっかりと触れたことはシャルルはわかった。


 なんてことはない、挨拶程度のビズではある。なにも騒ぐ程の行為とは言えない。


 しかし彼らの場合、それは大きな前進を示す。


 自分からやったにもかかわらず、さらに深く朱に染まった顔全体を、また隙を作ってしまうというのも顧みずにシャルルは背ける。


 そして、


「あの、仕返し、です!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ