すごい魔法
石造りの神殿の中央。
そこに男はいた。
スー、ハー、と深呼吸を繰り返しながら自信を落ち着かせる。
「―――準備はいいか?」
男の周囲にいた者たちがそう尋ねると、男は無言で頷いた。
彼らが行おうとしているのは一つの魔法。それを顕現させるために、これだけの人数が集まった。
男の友人もまた、固唾を呑んで見守っている。
―――そしてソレは始まった。
男を中心に展開される魔法陣。輝きが神殿を照らし、あふれ出る魔力が轟、と音を立てて周囲に襲い掛かる。
それらを周囲の者たちは必死に自身の魔力で抑え込む。魔力の暴発を防ぐために、周囲への被害を防ぐために。
「ん…ぐ……!」
男は魔力の暴風に吹き飛ばされそうになりながらもそれに耐え、ホンの一瞬――自身が狙うその瞬間を待つ。
やがてそれは訪れる。
男はカッと目を見開き、手を前に翳す。
魔力を己の手に集中させながら。
求める魔法を行使するために。
そして狙っていた瞬間が来たことを察し、その言葉を放った―――
「【ステータス・オープン】!!」
すべてが終わった。
目の前に投影されたそれを、控えていた者が正確に、ハッキリと紙に模写していく。
やがて魔力が限界になり、投影されていたモノ――-ステータス画面は消え去った。
「これが君のステータスだ」
「おぉ!!」
男は差し出された紙をもらい、確認した。
自分のステータス。より正確に、言葉と文章と数字で表された自分の事が書かれたものを。
「よし、これで就活もバッチリだ!」
男は晴れやかな笑顔でそういうのだった。
なお、就活はうまくいかなかった。
ありがち異世界物でよくあるステータス。普通に考えれば自分の事が滅茶苦茶正確にわかるってとんでもない話なんですよねぇ……