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剣鬼は出会う2


深い眠りから覚めると俺はベッドから身体を起こし、セリアを見た。

疲れているのかセリアはまだ眠っていた。俺も眠たいが一度目を覚めると頭が冷静になって昨日の事が悪い夢じゃないのかと考えてしまう。現実だ、まだ俺はその事を受け入れる事が出来ていない。


「セリアは必ず守ってやるからな。」

俺はセリアを撫でる。すると、セリアは瞼を擦りながら目を覚ましてしまった。


「悪い、起こしてしまったか?」

「おはよう、レンにいちゃん。」

セリアは俺に挨拶を済ませると、周りを見渡す。

「パパとママは?」

セリアが不安気な顔で俺の顔を覗き込む。

俺はセリアを不安にさせない様に答えた。

「パパとママは必ず無事だよ。騎士団に応援を呼びに行ってるから心配ない。」

俺は笑ってセリアを撫でる。


「うん、騎士団が来てくれた町もすぐに直してくれるよね!」


「ああ、何なら今より街並みが綺麗になるかもな。」

と俺たちは小さく笑いあった。

そして俺は昨日リンドウに貰った食べ物を袋から取り出す。

「セリア、お腹空いているだろ?朝ごはんにしようか。」

「うん、食べる。」

俺たちは行儀悪くベッドの上で果物とパンを食べた。


この先、いつ来るかわからない騎士団を待つだけしかできない、この状況に不安が押し寄せてくる。

今にでも張り裂けそうな程だ。でも、顔には出さない。

食べ終わると、セリアに俺はリンドウに会いに行くと伝える。


「あ、あたしも行く!ひとりはいや!」

セリアは俺に力強く抱き着いて来る。

気持ちはわかる、一人だと不安なのだ。それでもセリアを外に連れ出す事は出来ない。町での死体の山、そして玄関先で命を投げ捨てて俺たちを守り亡くなった両親の姿を見せる訳には行かなかった。

何より家が一番安全なのだ。


「セリア、にいちゃんはリンドウの様子を見たら直ぐ帰ってくる。もし、外で魔物が出てきたらセリアを守ってやれない。」


「だったらにいちゃんも家にいたらいいじゃん、外は危ないんでしょ?」

セリアの言うことは正論だ。それでも俺はリンドウに会いたい。リンドウの声を聞きたい。

「にいちゃんは足が速いから魔物が来ても風の様に逃げ切れる、俺たちは二人で居るけど、リンドウは瓦礫の中で一人なんだ、だから会いに行ってやりたい、心配しないで安否を確認したらすぐ帰ってくる。」

俺はセリアを抱き寄せ頭を撫でる。


「リンドウくんにあったら直ぐ帰ってきてね、すぐだよ?」

セリアの顔を見ると今にでも泣き出しそうな顔をしているが、リンドウの置かれてる状況も心配なのだろう。俺はセリアを説得し終わると、クローゼットから大きな布を取り出した。両親にかけてあげるためだ。


「じゃあ、セリア行ってくる。本当にすぐ戻ってくる。」

そう言い残し俺は裏窓から外にでる。

表に出て直ぐ両親の所に駆け寄る、布をかけてあげ少しの間合掌した。

これは、現実なのだ。死んだ命は戻ってこない。両親を見ると現実がさらに加速して押し寄せてくる。俺は大きく息を吸い歩き出す。リンドウの元へ。


「リンドウ俺だ!」

瓦礫の僅かな空洞から声をかける。すると瓦礫の中から声が返ってくる。


「おう!レンジか!昨日ぶりだな!」

リンドウが明るく返事した。

「ああ、リンドウお前は一人で平気なのか?」

俺は瓦礫の中一人で居るリンドウを心配した。

「俺なら平気だ!そんな寂しそうに見えるか?俺は15歳になったら冒険者になるんだ。こんな状況なんて屁でもねえよ!」


リンドウは幼き頃から冒険者にずっと憧れていたのだ。いつもリンドウに会うと、俺は冒険者になって魔物を倒したり悪い山賊を捕まえるんだ!と生き込んでいた。

それに対して騎士団でもいいんじゃないかと俺が聞くと決まってこう言う  


”騎士団は国同士の戦争にも出陣しないとダメだろ?俺は可能なら同じ人間同士で争いはしたくねーんだ、だから自由であり続ける冒険者になりたいんだ。”


リンドウのその愚直で真っすぐな姿に俺は憧れていたのだ。


「レンジ、俺たちの約束覚えているか?」

リンドウは俺に尋ねる。

「覚えているにきまってるだろ、二人で冒険者になって世界を見て回るんだろ?」

リンドウとの約束なんだ忘れる訳がない。そう約束を誓ってから俺たちは朝から陽が暮れるまで剣を毎日振り続けたのだから。

「良かった、お前は俺と違って身軽で速く剣の筋が良いから強い冒険者になれる。」

リンドウは安堵の声を漏らす。

「何言ってるんだリンドウ、お前の俺を斬りかかってくるあの気迫は”オーガ(鬼人)”と遜色ないものだったぞ。」


リンドウはお世辞にも剣の筋が良いとは言えない、それでもリンドウと剣を交える度に確かな覚悟を感じていた。例え技術が無くても、リンドウの一振りには技術すらも凌駕する重みがあった。


「俺がオーガ(鬼人)なら、お前は死んでるっつーの!」

俺達は互いに笑いあった。やはりリンドウは変わらないのだ。何処で居ようと。

「なあ、レンジ。もし、俺が冒険の途中で命を落としたら、冒険者をやめるのか?」

とさっきまでとは違い真剣な声で俺に聞いて来る。


考えた事もなかった。リンドウは死ぬ筈がないとそう思っていた。

「不吉な事言うのやめろよな、お前が死んだ後の事なんて考えたこともねーよ。」

俺は多少の怒りが混ざった声で茶化しながら答えた。

「レンジ!」

リンドウの声に俺は驚いた。

「な、なんだよいきなり大声を出しやがって。」


「例え俺の命が尽きようと、剣を振り続けろよ。冒険者は俺達の二人の夢だ!その道を歩いていて、お前か俺の命が尽きようと、嫌でも歩むんだ。絶対にだ。これは俺との約束だ。」

リンドウは真剣な声で俺に問いかける。

「ど、どうしたんだよリンドウ。らしくないぞ?やっぱり不安なのか?」

俺はこの時何故リンドウが声を荒げてまで俺にそう伝えたかったのかわからなかった。


その危機迫る声の理由を後に知る事になる。






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