表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/57

5.奴隷商人

 伯爵の言っていた通り案外俺の服装を気にする者はいなかった。

 それどころかゴスロリの様な服を着た女の子とか、ピエロの格好をした男までいる始末で、何処かのコスプレ会場にいるような気分に陥るくらいだ。

 そんな事を思いながら、キョロキョロして歩いていると胡散臭い男がチラシを手渡してきた。


「やあやあ。君、奴隷とか興味ない?その足取り。見ればわかるよ!奥を目指しているんだろ?という事は、裏市場名物の奴隷達の舞踏会(ショー)が目当てか、奴隷の売買が目当てって事だ!」

「え?」

「よく見ると君可愛いね!僕の奴隷にしたいくらいだ。そんな怖い目で見ないでくれよ!冗談だからさ。このチラシに行き方が書いてあるから、迷わない様にね!」


 今回の大本命がヒットした事に、心の中でガッツポーズをした。

 そのチラシには、場所と時間と、オススメの奴隷が書かれていた。幼い少女から二十歳くらいの女性に高値が付けられている。胸糞悪い。

 本命が意外と簡単にヒットしたのは良いが、チラシに書いてある奴隷達の舞踏会(ショー)と言うのが気になるな。

 さっきの男も裏市場名物と言っていたが、何か嫌な予感がする。

 奴隷商が、開催している時点で不愉快である事は間違いない。

 基本奴隷というのは酷い扱いを受けるものだ。それを前提に考えると、これから向かう奴隷達の舞踏会(ショー)とは・・・。いや考えるのは止めよう。気持ちが悪くなる。

 俺たちは急ぎ足で奴隷商へと向かった。

 ドーム状の建物の中へと吸い込まれるように多くの人が入っていく。

 かなり盛り上がっている様子だ。

 ここが奴隷商なのだろうか。もっと密かにやっているのかと思えば、盛大にやっているじゃないか。

 何も隠す気は無いという事だろう。そもそも奴隷が、禁止されているのは知っているのか?


 チケットを購入して中へ入る。警戒してる様子も無く当然の様に一般の人を次々と入れている事から、罪悪感とか、やましい気持ちが無い事が分かる。

 ボルドと共に指定席へ行き、硬い椅子に腰を下ろす。

 もう直ぐ、ショーが始まるみたいだ。


「ようこそ!ドードリエンドの奴隷達の舞踏会(ショー)へお越し頂き誠に有難う御座います」


 舞台の中央で礼儀正しく挨拶をする男が、この奴隷商のボスの様だ。

 かなりファットな見た目で、裕福そうである。その金が、奴隷の売買によるものと考えると、嫌気が差す。人の不幸によって齎された幸福なんて、糞食らえだ。


「レディースアンドジェントルマン!さあ、今日も様々な奴隷をご用意しました!新入達の華麗なダンスをご覧下さい!!」


 舞台の後方にある鉄格子の扉から、首に枷をつけられた殆ど裸と言っても過言じゃ無い服装の少女10人が舞台に上げられた。

 年齢はかなり若くて、俺と同じ歳くらいの子もいれば、それより下の子まで居る。

 当然ながら誰一人として笑っていない。恐怖に怯えて顔が引きつっている者が殆どだ。

 可哀想にという言葉しか思い付かない。

 何が始まるのかと思えば、ドードリエンドが鞭を持ち出し満面の笑顔で少女の一人を打った。


 "ギャァアア"


 甲高く荒々しい悲鳴が会場中に響き渡ると、客席から歓声と共に拍手が巻き起こった。笑い声と、もっとやれと言う声援。

 打たれた少女の背中には、赤い鞭の跡がくっきりと浮かび上がり、血が滲んでいた。

 見ているだけで痛みが伝わってきて、苦しくなった。なんて酷い有様だ。


 舞台の男は次に隣の少女の腹部を思いっきり殴った。

 少女は嗚咽と共に吐く。そして意識が飛んでしまいぐったりとして動かなくなった。

 その光景を真横で感じながら、あまりの恐怖に耐えきれずに泣き出してしまう少女がいた。

 そうだ。それが正しい。こんなものを見て歓声が上がるのは、可笑しい!イカれてる!

 この場所にいると、何が正しいのか判らなくなる。だが、少女の涙を見てやっと気づいた。

 こんなのは完全に間違っている。


 元々の目的は視察だったが、もう我慢出来ない。俺はボルドの剣を奪って舞台の中央へと飛び出した。

 ボルドが引き止めようと手を伸ばしたのが、横目に見えたが、もう遅い。


 舞台のど真ん中に立ちドードリエンドに剣先を向けた。

 ドードリエンドは少し戸惑った様子で汗を拭ったが、直ぐに笑いながら話を始める。


「お客様、マナーはお守りください。私のショーを台無しにする気ですか?それは困りますねえ。ほら、観客もしらけてしまった。しかし!一つだけ盛り上がる方法がありますよ!貴女様が、この場で脱いでくだされば、しらけた観客達もまた歓声を上げてくれるでしょう!」


 観客達はその言葉に賛成という意思を示して声を上げた。

 だが、俺は元々止めるために飛び込んだのだ。観客が、しらけるとか俺が知った事では無い。


「申し訳ないけど、そんな事はしないよ!私はこの奴隷達の舞踏会(ショー)を止める為にここに来たんだ!そっちの言い分を聞く気は一切無いから。逆らうならそれなりに痛い目に合わせるけど、大人しく捕まってくれない?」


 これは慈悲だ。少女達に酷い仕打ちをしたこの男を許す訳では無いが、潔く捕まってくれるなら俺が手を出す必要はない。

 そんな俺の慈悲を無視して、ドードリエンドは気持ちの悪い笑みを浮かべた。


「この奴隷達の舞踏会(ショー)を止める為に来たと?ムフフフフ。可笑しいですね!貴女もしっかりチケットを買って楽しんでいたでは無いですか?面白いお方だ。まあ貴女様もお客様だ。今回に限っては大目に見て、貴女様がここに居る奴隷を全員買い取って下さるのなら、今回の奴隷達の舞踏会(ショー)はお開きと致しましょう。どうですか?今ならお安くしておきますよ?」


 それは争わずに済む方法なのだろうけど、奴隷商人の懐を潤す様な馬鹿な真似はしたくないし、それは何の解決にもならない。

 俺がもしここに居る奴隷全員を買い取ったとしても、奴隷商人はまた新しい子を集めて商売を続ける。

 そんな無残なスパイラルを看過する事は出来ない。もう引き返せない所まで来たんだ。

 それなら、とことん潰す!


 奴隷商のマイクを奪い、観客達に勧告を出す。


「ちょっとマイクを借りるよ。あ!あーあー!テステス!よし聞こえるな。私は今からここを丸ごと壊すけど、怪我をしたくなかったら今すぐ逃げてくれない?もし怪我をしてもそれは自己責任だから!」


 少し荒っぽいが、痛めつけられている少女を笑う様な下衆どもには、この位の強引さじゃないと反省しないだろう。

 その下衆達は、俺の事もショーの一環だと勘違いして笑っている。本当に救いようが無い下衆どもだ。


「お客様!!貴女は私の話を聞いてましたか?」


 憤った声でそう言ったが、俺は無視してマイクを捨てる。

 それに対して更に腹を立てた様で、憤慨するドードリエンド。


「本当に貴女の様な話の分からないガキは嫌いなんですよ!躾が必要みたいですね。おい!ガボ、あれを持って来なさい!」


 近くにいるボロボロの服を着たガボという男にドードリエンドが命令を下すと、その男は直ぐに後ろにある部屋へと向かった。

 敵の奥の手が出てくるのを待つ義理も無いので、先手を取る。

 俺は剣先をドードリエンドに向けたまま少女達の前に出て構える。

 何故かドードリエンドは不敵な笑みを浮かべている。

 何か隠し球でもあるのか?しかし、このファットな男は鞭以外の武器を持っていない。何らかの魔法があるとかだろうか。


 俺が警戒して睨みつけていると、ドードリエンドは何かに命令を下す。


「ドードリエンドの名において命ずる。その女を襲いなさい!」


 誰に命令をしたのかは判らないが、ドードリエンドはずっと俺の事を見ている。


 いや!俺を見ているのではない。後ろにいる奴隷達を見ているんだ。

 奴隷達の首からいつの間にか枷が外れている。

 少女達は獣の様な勢いで俺に襲いかかって来た。少女達には理性が無い様で、噛み付いたりひっかりたりと、本能的に攻撃をして来た。


 俺からは攻撃が出来ない分、やりにくい。

 警戒するべきだった。奴隷商人が奴隷を使役する魔法を使えるとしても可笑しく無いのは、予想出来た筈だ。

 クソ!完全に油断していた。

 奴隷の少女達は、そのガリガリの体からは想像も出来ない程の力で、俺の体を壊そうと襲い掛かってくる。


「ムフフフ!無理ですよ!そいつらは私の命令しか聞かないのですから」


 どうやらドードリエンドの言う通りの様で、俺の声が、一切届いていない。

 徐々にメイド服が引き裂かれていき観客は、それを見て大騒ぎ。本当に下衆だ。

 そんな事をしている間にガボという男が奥の手を引き連れて戻って来てしまった。

 四足歩行の巨大な生物が、轟々と吠え舞台に唾液を撒き散らした。

 一見ライオンの様にも見えるが、瞳が三つに尻尾は注射器の針の様に細く鋭い。完全にライオンとは別の化け物だ。


「貴女の負けですよ!しかし、私は優しいのです。最後の選択肢をあげましょう!貴女が私の奴隷になると言うのなら、生かして差し上げます!さあ、どうします?」


 考える必要はない。答えはノーだ。こんな奴の奴隷になるくらいなら死んだ方がマシである。

 とは言ったもののマシってだけで、死にたくは無いから策を考える。

 まずは少女達を何とかしないと自由に戦えない。

 まあそれに関しては、既に解決策が見つかっている。恐らくフレートの笛で、少女達を正気に戻せる筈だ。


 奴隷達の攻撃の隙を突いて、詠唱する。


絵本の世界(ザ・ワールド)、ハーメルンの笛吹き男!」


 愉快な笛の音色が、下衆どもの歓声を掻き消し響き渡った。

 こんな状況でも、気分が軽くなった気がする。


「よお嬢ちゃん!かなりピンチな様子だな!」

「うん!フレート、この子達を何とかしてもらいたいんだけどできる?」

「任せな!俺の笛にかかれば何のそのだ!」


 フレートが愉快に踊りながら、笛を吹くと少女達の攻撃が止まった。

 恐怖に怯えていた少女達の引きつった顔は次第に安らかな顔になって行き、目に色が戻り始めた。


 フレートはしっかりと仕事をしてくれた。次は俺の番だ。

 あの奇妙な化け物。見た目は強そうだけど、一騎打ちなら負ける気はしない。

 この自信がどこから来るのかは分からないが、この程度に負ける位ならそもそも俺はこっちの世界で生きていけないと思う。

 だからこの程度の敵は難無く倒してみせる。


「さあ来なよ!」

「くっ!どうなってるんですか?私の可愛い奴隷達が私の命令に反するなど、あり得ない!本当に癪に障りますね!キメラあの女を喰らいなさい!」


 突っ込んでくる奇妙な化け物(キメラ)をギリギリで避け胴体に一撃入れる。

 硬い。

 剣で傷の付かない皮膚とか反則じゃないか?どうしろと言うんだ。


 考える暇も無く、次の攻撃が来る。巨体にしては小回りが利いて素早い。

 防戦一方。完全に相手の流れになっている。おいおいさっきの自信はどうしたんだ、俺?


 奇妙な化け物(キメラ)は馬鹿じゃない。さっきの一撃で、自分にはあの武器が効かない事に気づいている。

 それ故に警戒する事なく突っ込んで来る。

 鋭い爪での一撃を繰り出した。どうにか避ける事が出来たが、当たったら致命傷は免れないだろう。

 間髪入れずに注射器の様な尻尾による刺突攻撃が迫り来るのを避けきれずに肩を掠めた。

 大した傷にはならなかったが、物凄くピンチだ。


 押されている俺を心配して、観客席のボルドが叫ぶ。


「その剣は魔道具です!魔力を込めないと使い物になりませんよ!」


 魔力を込めろと言われても、そんなのよくわからない。しかし、俺には既に考える暇は無ければ、試行錯誤している暇もない。

 だから力一杯剣を握る。これで良いのか分からないが、これがダメならもうダメだ。


 剣に手が絡み付く様な感覚があった。すると剣が青白く輝く。これが魔力を込めるという行為なのか。


 奇妙な化け物(キメラ)の攻撃を避けるのと同時に、右前足に一撃を与える。

 驚いた。まさかここまで変わるとは思ってなかった。

 奇妙な化け物(キメラ)の足は、血飛沫と共に吹き飛んだ。

 片足を失ったキメラはバランスを崩して倒れそうになるが、辛うじて耐えている。

 3つの目玉はギョロギョロと奇妙に動き俺を凝視していた。


 ここからが俺のターンって事だ!


 キメラだけの所為では無いが、意外に気に入っていたメイド服をズタズタにされた恨みを剣にのせて突っ込んだ。

 機動力を失ったキメラは、避けることが出来ずに俺の一撃をまともに喰いその場に倒れ込む。


 俺の勝ちだ!


 次にこの建物を破壊したいのだが。

 いや建物を壊すのはやめておこう。少女達を危険に晒す。

 けど観客には痛い目を見せてやりたかったが・・・。ふと思い至る。痛い目を見せる事は出来るか。


 ふっふっふ。下衆どもには罰を与えないとな!ヤバいこれは完全に悪役のセリフだ。


「フレート!次は観客全員に悪夢を見せてやりたいんんだけど出来る?出来れば、奴隷達には効かないように」

「余裕だぜ!俺は人を楽しませるのも得意だが、その反対も得意だ!エレン達は俺の後ろにいな!」


 器用なものだ。有効範囲まで指定が出来るとは。

 さりげなくドードリエンドが、フレートの後ろに逃げ込んで来た。

 ちょうどいいこの男には言いたい事がある。


「なんでアンタは、奴隷商人なんかやってるんだ?」

「私の特権だからです。せっかくのユニークスキルを使わない手は無いでしょう!」


 自分のやった事が罪だとは思っていない様子だった。

 与えられたスキルをただ有効的に使っていただけだと、この男は開き直った。

 確かにスキルは自分のものだ。だけどそのスキルを使って他人を物以下として扱い。痛めつけて売り付けるのは違うはずだ。

 俺は断言する。


「アンタは間違ってるよ!どうする?これ以上抵抗するならもう容赦はしない。抵抗しないなら、これ以上手は出さないよ」

「・・・くっ・・・。分かりましたよ!」


 抵抗の意思はないみたいだ。とりあえず縄で手を縛って拘束する。

 観客達はフレートの笛によって、悪夢を見せられている。歓声は叫び声に変わって地獄の様な空間であった。

 この場所から直ぐに退散しようかと思ったが、少女達を運ぶ為の手段が無いことが判明した。

 1人くらいなら抱えて行けるが、全員は無理だ。どうするか考えていると外が騒がしいのに気がついた。

 ここまで派手に暴れたら、人が集まってくるのも当然の話だ。


 正面の入り口から誰かが入って来た。俺の方に駆け寄って来るその男は、ボルドだ。

 そういえば今まで姿を見ていなかった。というか完全に忘れていた。

 もし会場にいたらボルドも悪夢を見る羽目になっていただろう。居なくて良かった。


 ボルドの話によると、俺に声を掛けた後、直ぐに飛び出して自警団の元へ走ったらしい。

 外が騒がしいのはそのせいである。

 ボルドは、後の事を考えて少女達を運ぶ為の馬車も自警団に頼んで数台用意してもらったみたいだ。

 出来る男過ぎて嫉妬するぜ!俺はそこまで考えていなかったので本当に助かった。


 自警団が観客達を外へ叩き出す。

 ドードリエンドは、拘束されたまま馬車に荒々しく乗せられていた。


 ここからが問題だ。少女達をどうするか。

 故郷がある者は故郷に帰してあげたいが、故郷すら無い者もいるはずだ。

 俺が引き取るという手もあるが、正直言って厳しい。1人くらいなら、良いがそれ以上は厳しいのだ。

 悩んでいると1人の少女が話しかけて来た。白くて長い髪の毛はボサボサで、緑色の瞳には生気がなかった。


 10歳くらいだろうか。幼さが残る可愛い少女だ。目には涙があって、その涙を落とさない様に堪えている。


「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう。でも私、家に帰りたくない・・・。お母さんとお父さんはお金が無いからって私を売ったの。だから帰っても迷惑なはずなの・・・」


 涙の訳は、ただの恐怖からだけじゃない。

 親に見捨てられたという絶望が、助けられた安堵と共に蘇ったのだろう。可哀想に・・・。

 そんな事情を知ってしまった以上、俺はこの子を放っておかない。

 俺が、この子を引き取ろう。


「・・・そうか。じゃあ私と来る?」

「えっ!?いいの?迷惑じゃない?」


 幼女の涙を人差し指で、拭ってから頭を撫でる。


「いいよ!私は今一人で寂しいからさ。君が来てくれたら、私も助かるんだ」


 拭った筈の少女の目からまた涙が溢れてきた。


 これは嬉し涙というやつだ。笑顔なのに流れ落ちる涙に幼女は戸惑いながらも、俺に抱きつく。


 可愛いなあ、おい!


 さて、他の奴隷達はどうしたものか。

 とりあえず奴隷として、ここに囚われていた人達は皆解放して馬車に乗せた。


 俺達も馬車に乗り込み帰路についた。そして馬車の中で、咄嗟に思い付いた案をボルドに提案した。


「伯爵の屋敷で何人か雇えないかな?」

「そうですね。メイドとして10人くらいなら雇えると思います」


 10人も雇えるとは凄いな。流石は伯爵だ。そしてボルドからの提案もあった。


 ドードリエンドの所には女性が役15人、男性が7人。合計22人が囚われていた。

 女性をメイドとして伯爵邸で雇い。男性には宿付きで、力仕事をしてもらうという提案だ。

 勿論、故郷に帰りたいと言うならそれも構わない。


 俺たちが来る前に何人売られたのかは判らないが、被害は甚大だ。

 もう少し早く来ていたらと考えなくも無いが、それは傲慢な考えで、俺には精々この程度しか出来なかったのだと納得するしかないんだ。


 そんな自惚れとかは置いといて、今はこの子の事をもっと知りたい。


「ねえ、君名前はある?」

「うんあるよ!私はアリス」

「アリスね。私はエレン、好きに呼んで良いよ」

「エレンお姉ちゃん!」


 グハッ!可愛い。可愛すぎて精神的にダメージが・・・ヤバイ、引き取るとか言ったけど、名前を呼ばれただけで、このダメージだ。

 これはかなりしんどいかも知れない。

 メンタルを鍛えなければいけないな。

 それにしてもアリスか。

 不思議の国のアリスの主人公の名前と同じだ。あの物語も好きなんだよな。


 数分アリスと話していたら、ウトウトと船を漕ぎ始めアリスは眠ってしまった。

 あんな過酷な空間に居たら落ち着ける訳も無い。そこから解放されて安心出来たのだろう。

 すっかり気持ち良さそうに寝ている。しかも、俺の膝の上に頭を置いて。


 風呂とかには、入れてもらえて無かったのか髪の毛がごわごわしていて、薄汚れていた。

 せっかくの長くて白い綺麗な髪の毛が台無しだ。伯爵邸に着いたら、まずは風呂に入れてやろう。

 かなり痩せ細っていて、栄養失調気味だと思うから、美味しいものを食べさせてあげるのも忘れずに。


 そんな事を考えていると自分も眠ってしまった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ