五月三日・夕方 相談者Sの思いと少年Tの答え
「今回は私も悪ふざけが過ぎましたね…すみません」
「いや…僕も空腹だったのにサクラ先輩に何も言わなくてごめん…って…え
?ミフさん今謝りました?」
「ああ…まさかのノリ突っ込みとは…私感動して涙が…」
「って…なんで急に感動してるのさ!?」
夕方綴也はミフルと共に漫才の様な会話をしながら家路を歩いていた。
「私だって謝るべきだと思えば謝りますよ…それなのに…うう」
「うっ…ごめん…」
「綴也さんが気絶してそのままサクラさんに頭突きをかました時は大笑いし
てしまったのでそれが申し訳なくて…」
「僕が空腹なのを知ってて黙ってた事に対するごめんなさいじゃなかったの
!?」
あの後とサクラが帰った後は遅めのお昼を食べてからは自分が見た夢の内容
をミフルに聞かれてからかわれてゆっくりと過ごしていた。
「しかし気絶している間にそんな夢を見ていたとは…何とも…」
「うん…凄い夢だった」
「ストレスが溜まっているのかもしれませんね」
「そ、そうなの?」
「断言はできませんけどね。でもサクラさんがいた時に綴也さんが見た夢の
話をしていたら綴也さんはきっと可哀想な人間として見られていたかもしれ
ませんね♪」
「そうかも…」
夢の内容を聞きながらミフルが冗談めかして言うが綴也には冗談に聞こえな
かった。
自分が信用がないからとというのもあるがもし彼女がこの話を聞いていたら
あの夢の様に綴也を憐れんでいるかもしれないと思った。
「まあ…空腹以外にも夜中までお父様達を取り調べしていたので寝不足も原
因の一つと思いますが」
「うっ!?」
今度あの時の様な場面に出くわしたら取り調べは最低でも翌日にしようと綴
也は心に誓った。
「何にせよ今日は精の付くものを食べてしっかり寝て下さいね」
「精…んー、肉料理とか?」
「綴也さんの大好きなおみきさやの鳥の天ぷら丼とか…」
「でもそれだけじゃ…ってあれ…?」
家の前に桜色の髪をした誰かが立っていた。
「あの…」
「あひゃう!?」
声をかけるとその驚きながら振り向いた。
その声を聞いて実は後ろ姿を見た初めサクラを想像したが服装が違うので直
ぐに違うと解った。
「もしかして…天宮…桜…さんですか?」
「は、はい。もう夕方ですけどこんにちは…ですね」
彼女はサクラ・レノンフォードと合わせ鏡の様な姿形の少女天宮桜だった。
「あの…どうしたんですか?どうして僕の家の前に?」
「ええっと…その…」
「桜さんは相談があるんですよ…綴也さんに」
「僕に?」
「ミト…ミフルさん!!」
「おっと…口が滑りましたね…」
「ミフさん…」
相談があるのならば家の前でそのままというのもどうかなとも思った綴也は
近くの公園に移動する事にした。
「それで…僕に相談…って…」
「そ、それは…」
「では私は外れておきましょう…私は彼女の相談内容を知ってますから」
そう言ってミフルは消えた。
気を使ったように見えるが綴也はその顔に悪戯をしている時の笑みをしてい
るのを見逃すことはなかった。
「あの…無理に…」
「いいえ…ここまで来て言わないという訳にはいきません!!」
「す、すみません!!」
天宮桜は深呼吸している。
悪戯めいた笑顔のミフルが指名したとはいえそんな相手が知り合って間もな
い自分に相談をするとはとても大事な相談なのだと綴也は思った。
「どうして綴也君が謝るんですか?」
「何だか…少し申し訳なくって…」
もう一つの理由として綴也はお昼に気絶してからサクラに似ているこの少女
が途方もない力でサクラと戦いそれを死にかけながらも止めようとする夢を
見た。
この少女はサクラと同じ姿形をしている事以外だと双子の妹がいる以外に良
くは知らないのだ。
夢は自分の深層心理の表れだという話も聞いた事があった。
そう思うと何だか彼女に少し悪い事をした気がして申し訳なかった。
ましてやミフルが言ったといえ自分に相談しに来ると等思いもしないし考え
もしない事だ。
夢の申し訳なさもあるが何にせよ彼女の相談を自分にできる限り一生懸命に
応えようと思った。
「私には…好きな人がいるのです」
「え?」
「私には…好きな人がいるのです!!」
聞き違いかもと思いに確認を取ってしまったが綴也は全てを察する事が出来
た。
もしもここに違う男子がいたらその相手が自分かもしれないと考えるが綴也
は自分という可能性は考えていない。
そして何でミフルが自分を相談相手に指名したのか納得した。
「もしかして…その相手って…」
「はい…………………その…」
「妹さんと…同じ相手ですか?」
「……………………………はい」
彼女には双子の妹がいる。
彼女は綴也の父に思いを寄せていたというのを目の前の少女から聞いた。
その妹と同じ相手を好きになったという事は彼女の思い人は考えるまでも無
かった。
「成程…それは…」
「はい。ミフルさんにも相談してそしたら…綴也君に相談するのが一番だと
言われて…」
「まあ…知らないよりは…」
綴也がミフルのいる方を見るとミフルが笑っていた。
何処か悪戯めいているようで何処か心配している様にも見える。
綴也もまさかサクラと同じ姿形の少女が同じ相手を好意を寄せているとは凄
い偶然とはあるものだと驚きを通り越して感動めいた心持だった。
「本当にすみません…この様な事をましてや実の息子さんに相談するなんて
おかしいとは思ってはいたんです…でも」
「いいえ、まあ僕は桜さんも撫子さんの邪魔もしませんし応援もできません
けど…」
「どうしても…って…え?」
桜が驚く姿は誰かを見ている様だった。
「ん?どうしました?」
「いえ…あの…今何て…」
「まあ僕は桜さんも撫子さんの邪魔はしませんし応援もできませんけど…」
「って…え!?」
桜が先程よりも驚いている。
「あの…どうして?」
「え?」
綴也も思わず疑問で返してしまった。
「私…その…」
「お父さんが好きなんですよね?」
「は、はひぃ!!」
「だからまあ邪魔も応援もしませんけど…」
「ど、どうして?」
そうしてようやく綴也は桜が自分に抱いている疑問と驚く理由に気づいた。
桜の問いは至極尤もな疑問である。
そもそも綴也の父には都市の制度で許されているとはいえ母以外にもすでに
妻がいる。
もしかしたらこれからも増える可能性も無くはない。
「その…個人的な事を言えば自分とそう変わらない年の人がお母さんの一人
になるのは嫌だから応援はしません」
「うっ!!」
理由ならば時間をかければ幾らでもあげられる。
だが一番の理由は制度でも家庭環境でもなければ彼女の他にも父に思いを寄
せている少女がいるからでもない。
「だけど誰かを好きになる事は間違いじゃないって思うから…邪魔もしませ
ん」
だから応援も邪魔もしない理由を端的に述べた。
信じてもらえなくともそれしか言える言葉は無かった。
「ごめんなさい…貴方にこんな相談をしてしまって…私…」
「僕桜さんの事好きですから…相談されて嬉しかったです」
二人は突如として停止した。
綴也は自分が何を言ってしまったのか分からなかった。
「そんな…って…え?」
「ん?…え?」
桜の顔がだんだんと紅潮している。
時間の経過と桜の顔の紅潮していくにつれて綴也は自分が何を言ったのか理
解した。
「え?…僕…」
そして自分の思いを自覚した。
そう綴也はこの天宮桜に対して思いを抱いていたのだと。
「あ!」
「…」
目を泳がせる中でミフルが遠くで笑っているのが見えた。
気まずかった。
色々な意味で最悪なタイミングなのは理解できた。
サクラ・レノンフォードの時の比では無いという事も理解している。
何せ前回は殴られたのだからそれが分からない程鈍くはない。
しかし何を言ったら良いものか浮かばない。
桜も言葉が出なくてうつむいているのが見えた。
(でも…)
彼女には思い人がいる。
思い人に個人的には問題だと思うがそれでも自分の思いを自覚した以上此処
で逃げるわけにはいかない。
綴也は今此処で自覚したばかりの思いに決着をつける事にした。
理由は色々頭の中で右往左往している。
でも単純に自分が先程言った言葉を嘘にしたくはなかった。
「すみません桜さん…僕は…」
「ええっと…すみません私…」
「大丈夫です!!」
「え!?」
「僕…桜さんに恋人になって欲しいとは言いません」
「ええ!?」
天宮桜は三度驚いた。
「そんな…簡単に…」
「信じてもらえなくてもいいです。だけど僕は他に好きな人がいる人に恋人
になって下さいって言えないです」
「ど、どうして?」
桜の問いかけには不安が混じっているしこの問いが来る事を不思議がるほど
綴也も鈍くはない。
でも桜のこの問いに対する答えは綴也の中に最初からあった。
「恋人は…奥さんっていう家族になるかもしれない人だから…だから言わな
いんです。でもこれ初恋のお姉ちゃんの受け売りですけど…」
「あ…………」
桜に問われれてその答えを言うのに一切迷いがなかった。
ただこれで決着を着けられたのか綴也自身解らなかった。
でもこの言葉を嘘にはしたくはなかった。
心の中で失恋した実感はない。
自覚したばかりでと言うのもあるかもしれないがもしかしたらその喪失感に
襲われるかもしれない。
でも今はこれで良かったのだと綴也は思った。
「ね?言ったでしょう…こうなるって…」
「ミフさん!?」
まるで狙いすましたかの様にミフルが歩いてきた。
「いあや…綴也さんも今まで自覚がなかったんですね…桜さんの事」
「うっ!!」
ミフルは悪い笑みを浮かべてからかってきたが今の綴也は反論できない。
「初めて会った時にはもう一目惚れだったんですね…」
「うう…そうかも…」
「そこで否定しないのが貴方の良い所なんですから失恋くらいしちゃってい
いんですよ!!綴也さんの家族になってくれる人がいつか現れてくれるかも
知れないではないですか…」
「うう…」
それは綴也にとっては大切な夢だがとても遠い夢の様にも思えた。
しかし諦めるのも嫌だった。
「あの…何だかすみません」
「いいえ、気にしないでください…これは」
「そうですよ綴也さんは失恋してから強くなるのですから…」
「それって良い事なのかな?」
桜の恋愛相談に乗っていたはずなのに自分の所為で途轍もない脱線をしてし
まった。
何でこんな事になってしまったのか思いたかったがその瞬間自分に原因があ
るのという結論が出てしまって頭を抱えたくなった。
「あの…綴也君」
「ん?」
「その…私とお友達になりませんか?」
「…………………え?」
「おや?」
綴也は桜から聞こえた言葉に耳がおかしくなったかと思い耳をたたいた。
それからしばらく聴覚がおかしくなってないと判断して。
「その…色々悪い事をしてしまったので…せめ…て!?」
「友達!?」
言葉が終わる前に綴也は桜に問いかけた。
「え?」
「友達…ですか?」
「ええっと……………………………ええ」
二度の確認を終えたその瞬間綴也は桜の手をつかんだ。
「本当ですか!?」
「え?え?」
「本当に友達になってくれるんですか!?」
「え!?え、ええ…はい」
確かめた。
何度も確かめた。
これは…この言葉は幻聴じゃない。
そう思った。
「やっ………………………」
その瞬間綴也は両手を挙げて…。
「たあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
喜びの声を広げた。
それは公園中に響き公園の鳥が一斉に飛び立ち公園にいた人間の視線を独り
占めにしていた。
「友達…友達…」
「あ、あの…綴也君」
「ウフフ…彼はこういう子なんですよ…よろしくお願いしますね…桜さん」
綴也は高校に入って二度目の失恋をした。
ほんの先程失恋をした。
した筈なのに。
その相手がだが高校初めての友達になってくれると言ってくれた。
その言葉は綴也はその痛みを忘れる位の衝撃だった。
「友達が…出来た…友達が…」
「あの…綴也君?」
「ウフフ…」
周囲の視線をものともせずに両手を挙げて喜び続けていた。
Mル…次でようやくこの二章も終わりですね。
E香…作者は五月までに終わらせたかったようだが…
思うようにはいかなかったようだな…
Mル…技術や文才がが無いと言えばそれまでですがまあ牛歩でも
全く頑張らないよりはいでしょう。
E香…現実はそうはいかないが…
Mル…まあ意味が有無で努力するしないを決めるのも度が過ぎれ
ば只の逃げですから誰かさんには肝に銘じてほしいですね
???…すみません。
E香…誰か謝っている様だが…まあいい。
しかし綴也君は立ち直りが早くないか?
Mル…友達ができてうれしいのは本当ですが何であれほど喜んで
いるのかは貴女では理解できませんか?
E香…どいう事…チッ!!(ようやく気付いた)
Mル…まあそういう事ですよ。
まあ何にせよ次回でこの二章もエピローグだそうですよ。
E香…どんなエピローグにする心算だ?
Mル…もしかしたら予想しやすいかもしれませんけどね。
E香…あ!!(気付いた)
???…あ奴め…何で私が友人になった時にあんなに喜ばんのだ…
Mル…貴女の時は状況が違い過ぎるからですよ…
彼は貴女が友達になってくれて喜んでますよ。
私が断言しましょう。
E香…高校に入って人間の友達は彼女が始めてだろうしな…
だが…
???…まあ…そうだろうな…
E香…友達だからといって…
…とは限らないがな…
Mル…味方ぶっても助けにもならない役立たずの言葉に今日は説
得力がありますね。
???…貴様らは何故に喧嘩腰なのだ?
二人…気に入らないからです!!(完全に同調)




