五月三日・昼Ⅳ? ダブル・ブロッサム
「貴女…は…誰なの?」
「誰って…解りませんか?」
「な!?」
「私は…」
「何で…その男を助けるの!?」
「ん?いきなり何を…」
「答えなさい!!何でよ!?」
サクラは目の前の相手が誰なのか解ったからこそ問いかけていた。
それはあり得ない事が起こったという事に対する問いかけだった。
「そうしたいと思ったからとしか言いようがありませんね…」
目の前の少女はそう答えた。
彼女はそれ位しか理由は思いつかなかった。
強いて上げれば上げられなくもないが自分が介抱している相手の前で言うの
は様々な事情があって言えなかった。
「何で…何で!?私がその男を助けるのよ!!」
「え?」
サクラは目の前の少女が何者かそう理解した。
それ位この少女は自分自身に見えるからである。
どこからどう見ても服装が違っていても自分自身にしか見えなかった。
「はぁ…そういう事ですか…全く」
「な!?何よその顔は!?」
目の前の少女はサクラの結論に呆れの混じったため息を吐いた。
「にげ…て…」
綴也に向けてサクラが拳を振るおうと突っ込むが目の前の相手は綴也を抱え
ながらいとも簡単に躱した。
「!?」
「え?…え!?」
綴也にはサクラが突っ込んで来た事も自分を介抱している人物がそれをいと
も簡単に躱したのも見えなかった。
「あ、あの…もしかして…あ…ん?」
綴也が目の前の人物が誰なのかようやく理解した。
綴也も今の状況に混乱し体の痛みに苦しんでいる為か少女がサクラに見えて
いた。
助けてくれた人物の名前を言おうとした瞬間その口を指でふさがれた。
「な!?」
「無理に話す必要はありません…少し待っていてください…」
彼女は綴也をゆっくりと地面に寝かせてくれた。
彼女の綴也に向ける表情は今のサクラの様に悪を断罪する英雄ではなく分け
隔てなく手を差し伸べる聖女の様だった。
彼を寝かせて彼女は目の前で言葉を失っているサクラを向いた。
「そ、その男をどうする心算なの!?」
「その言葉をそっくりそのまま質問しましょう…彼をどうする心算ですか?」
「決まってるじゃない…ここで倒す!!そしてこれまでの事を謝らせて真っ
当な人間にするのよ!!」
「私にはここで殺すという風に見えるのですけど…」
「そんな事しないわよ!!」
「本当に理解できてますか?人の事言えませんが今貴女は…」
「乱暴なのは分かってる!!でも…」
目の前のもう一人の自分が綴也を助けようとするならば彼女を倒してでも姫
神殺しを倒すと目の前の相手に混乱した頭を整理して目の前の敵を見た。
こいつは此処で何としても倒さないといけない。
そうしてでもしなければ彼は真っ当な人間になれはしない。
彼が想い人の実の息子だとしてもこのこの男は悪い奴なのだから…。
それがサクラ・レノンフォードの思いだった。
「皆の為にも…そいつを倒す!!」
「か…い…ちょ…その…」
「邪魔をするなら邪魔をする私も倒す!!」
サクラは目の前の少女に拳を振るう。
先程の一撃と同じく倒れている綴也が仮に怪我が無くとも目で追える速さで
はない速さだった。
綴也が標的ならば殴られた後にそれに気づく程の速さだった。
「ふっ…」
だが目の前の少女はその一撃をかわす。
まるで通行人が通るのを避けるかの様に…。
「なっ!?」
「何を驚いているんですか躱された事がそんなにショックなんですか?」
「ッ!!」
躱された事に驚くもすぐに切り替えてサクラはさらに攻撃を振るう。
拳も蹴りもさらに速くなっていく。
しかし目の前の相手はそれをまるで止まっているかの様に躱し捌いていく。
「な!?」
「仕方が無い!!ですね!!」
「な!?くっ!!」
目の前の少女が初めてサクラに拳を振るう。
サクラはその速さに驚愕しながらもギリギリ躱した。
(何とか躱せ…え?)
内心安堵したがその直後彼女の後ろから大きな物音がした。
「え?…な!?」
サクラがわずかに後ろに目をやると壁に大きな穴が開いていた。
何がどうなっているのか目の前のもう一人の自分が何をやったのか理解しよ
うにも理解できなかった。
「危なかったですね…もう少しで殺してしまう所ですね…」
変わり果てた姿になった壁を見て横たわる綴也も何が起こっているのか理解
出来てないが目の前の光景に驚くしかなかった。
その僅かな瞬間に動揺と混乱の中もう目の前の少女がサクラに迫りその拳が
サクラの腹部に叩き込まれた。
「がっ!?」
拳を打ち込まれたサクラは吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
しかし先程の様に壁に穴が開く事も無くサクラは身体は崩れ落ちてそのまま
気を失った様だった。
「サク…がっ!?…痛っ!?」
「加減はしたから怪我は大した事はない筈です。それに怪我言うならば貴方
の方がもっと酷いんですから」
「いっ痛っ…やっぱり…あな…た…」
「しゃべらないで…今は…」
今何がどうなっているのか混乱しているが自分が怪我をしている事だけは現
実だと体が知らせてくれた。
目の前で起こった出来事全てを整理したいが体が痛くて難しい。
どうしたらいいのか考えても今は心も身体も病院に行くしかしか思いつかな
い。
「あ…まみ…」
「負けられない…」
壁の方から誰かの声がした。
「貴女…気を失ってなかったんですね」
「負けられないわ…絶対に」
外見にダメージらしきものは見えないがサクラの体はふらついていた
「その体ではもう無茶です…」
「姫神殺しにも…私にも!!負ける訳にはいかない!!」
「私は…」
「負けるわけには…いかない!!」
そう叫ぶサクラから激しく噴出した金色の何かがサクラの全身に纏わってい
きサクラの全体を包むドレスのようなアイディアルウェアに集まってウェア
が金色に染まり形も変化していた。
「貴女?」
「貴女を倒して姫神殺しを倒す!!」
姿が変わったサクラは目の前少女に向けて拳を振るう。
少女は躱したがそこには先ほどの余裕はなかった。
「くっ!?一体…何が!?」
「ああああ!!」
サクラはさらに彼女に拳や蹴りを向ける。
少女はそれを全て受け止めて弾くがその表情に困惑と焦りの様なものが浮か
んで来た。
「クッ!?」
「十二の剣よ!!」
「な!?」
サクラの叫びに両手と周りに金色の光が集まり剣が表れた。
それは先程綴也がアイディアルの試合全て斬った筈の剣だった。
しかしそれが再び姿を現して目の前の少女に向けて放たれた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
サクラは十二の剣を動かし自身も刃の面を足場に少女を追撃していく。
「くっ!」
彼女はこれらの攻撃を躱しながらもだんだんと追い込まれていきその身を着
実に斬り刻まれていた。
「これで!!」
「チッ!?」
サクラの攻撃の激しさに態勢が崩れた壁際に追い込まれてサクラはその手に
剣を携え彼女に突き立てようとした。
「だめだ!?」
サクラが自分と全く同じに見える少女に剣を突き立てようとしたその寸前に
誰かが背中から抱き着いてサクラを一瞬止めた。
「!?」
その為にサクラの動きが僅かに遅れてサクラの剣を肩を掠めたとはいえ外れ
たのだった。
「て、綴也くん!?」
そう…それはこの場で誰よりも傷だらけの少年だった。
「あな…お前は…」
「うぐっ…うぇぷっ…」
彼は彼女達の動き等見えなかったのでとにかくサクラだけを見て必死に止め
に入った。
ただその為に再び吐き気を催す胸部に腕が当たってしまい痛みに加えて吐き
気に苛まれていた。
吐き出されるものに赤い何かが混じっているのが彼の身が吐き気だけに苛ま
れているものではないと物語っていた。
「どうして貴方が!?貴方は…」
サクラと全く同じ顔と容姿を持つ誰かの問いに綴也は答えを持っていない。
「ただ…」
痛みで考えが纏まらないからではない。
仮にこの身を苛む痛みがなくても明確で具体的な理由は思いつけなかった。
目の前にいる助けてくれた少女への恩返しという理由も思いつけなかった。
「そうしたいって…思ったから!!」
何でこんな事になっているのか聞きたいのに解る人もどうすれば良いか教え
てくれ人もいない。
いつも色々教えてくれる電子製命体でも解らないだろうと思った。
でもこのまま何もしないのは嫌だから体中の痛みを感じながらも綴也はサク
ラの前に立った。
「サクラ先輩を止めたいって思ったから!!」
「なんですって…」
「綴也君…」
この行為に意味は無い。
この行為に価値は無い。
この行為と言葉の結果この場にいる人間達は彼に怒るか憐れむかの二通りだ
けだ。
でも綴也はそんな事は知らない。
そもそもそれで褒めてもらえるなど思ってもいない。
自分がそうしたいと思っているからここで立ち上がった。
自分が憧れるヒーローに影響されているいうのも自覚している。
現実を見るならば大けが状態で立ち上がるとか自分でやるととても痛くて涙
は止めど無く流れている。
心のどこかで止めろと何としても逃げろと言う声が聞こえてくる気もした。
それを振りほどいて綴也は掠れた声を張り上げた。
「だから来い!!先輩!!」
Mル…さて、ここ暫くはネタバレ話は自粛しなければいけないの
で何を話すべきか…
E香…ネタバレを警戒しなければいけないネタがあるのかこの話
には?
Mル…貴女の人生の分岐点よりは隠しておく必要性はあるかと…
E香…そうか…貴様の女装ならぬ女体化趣味よりは隠す価値があ
ると…
二人…フッ!!
Dさん…何をやっとるんだお前たちは…仲良いな。
二人…このタイミングで一番言われたくない突っ込みを入れるな
!!
Dさん…こういう時はこういうのが様式美と言うのだろう。
二人…せめてお約束だ!!
Dさん…突っ込みは難しいな…
E香…ちょっと待て!!貴様誰だ?
Mル…これがお約束と言うのですよ…お嬢さん。
Dさん…成程な…お約束か…。
私は朝倉綴也の親友だ。
E香…綴也君…友達を決めるのは君の自由だが人間の友達が出来
ないからとうとう…
Dさん…これもお約束か?
Mル…綴也さんの事になると少しバグるんですよこのファザコン
妻。
Dさん…妻?どういう事だ?
Mル…とっくにネタバレですけどナイショです。




