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五月三日・昼Ⅱ 再戦 サクラ・レノンフォード



五月三日…昼 再戦



「あの…ここ…は?」

「私がアイディアルを辞めた後でも通ってるアイディアルセンターよ」

「あの…ここで…何を…」

「何だか疲れてる様だけど…」

「いえ…どちらかと言うと体力じゃなくて神経を…」


この場所に来るまでの一時間で綴也は疲れていた。

突如として腕をつかまれて新天神から連れて来られただけならば疲れなかっ

た。

しかし綴也には女性の胸部に触れると吐いてしまう体質があり腕を掴まれて

腕が当たるか当たらないかのギリギリの中で当たらない様に見にしていると

吐き気を催すのでずっと胸部を見ない様にしていたのでとにかく神経を集中

させていたのだ。

だから振りほどく余裕も彼女に一言を言う余裕もなかった。


「そ、それで…ここで一体何を…」

「決まってるじゃない…貴方ともう一度アイディアルで闘う為によ!!」


その一言を聞いて反応できなかった。


「……………………え?」


言われた事は当然と言えば当然の事だった。

ただそれでも疲れ果てている今の綴也にはその言葉を理解と処理するのに時

間を要した。


「え?え?え?え?」

「もう一度私と戦って…」

「え!?でも僕は…」

「両手両足を開放してCOMを手にする貴方と戦って私が勝てるって証明し

たいの」

「え!?でも…」

「戦って」

「あの…」

「戦って…」

「だから…」

「戦って!!」


綴也からすればアイディアルでの勝負を断る理由は無い。

仮に断ったとしても自分の印象がより悪くなる事になると理解できない程察

しが悪くはない。

しかし今はどうあっても彼女の要求に応える事は出来なかった。


「あの…僕アイディアルウェア…持ってないです」


そう…綴也は今財布以外は何も手持ちの物は無いからだ。


「ん?」

「あのアイディアルウェアを着ないと僕アイディアル出来ません」

「え?……………………ええ!?」


綴也はあの白く返り血を浴びたような赤い点が付いたあのアイディアルウェ

アを着ないと戦えないというルールがあった。


「何で持ってきてないの!?いつも持って来てるじゃない!?」

「すみません!!朝散歩してただけだったんで…」


サクラも今になって綴也が手ぶらである事に気づいた。

そもそも今日は散歩していただけなのにいきなり連れて来られてこんな風に

イリュシオンからアイディアルで戦うなど思いもしなかった綴也にはどうし

ようもない事だった。

どっちに非があるかなど考えるまでも無い。


「ウフフ…」

「「!?」」


顔が真っ赤になって叫ぶサクラと困惑する綴也の耳に女の笑い声がした。


「お困りですか?」

「ミフさん?」

「話は聞きました…綴也さんのウェアは私が用意しましょうか?」

「「え?」」

「私が綴也さんおのお家からアイディアルウェアを取って来ますよ」

「ミフさんそんな事出来るの?」

「貴方のお家には良くお邪魔してますから部屋の中のものの配置も解ってま

すし…」

「いや…服って…持って…」

「私は電子製命体ですよ服位は触れて持って来る位楽勝なんですよ…まして

や綴也さんが取りに帰るよりも確実に早いですよ…」


ミフルの一言に綴也はハッとした。

電子製命体は触れる事もできるという今まで気にしていなかったが改めて考

えると凄い事なのだという事実に衝撃を覚えた。

同時にすぐに次の言葉が口から出た。


「ミフさんごめんお願いします…僕じゃ今から帰っても一時間は掛かるから

…」

「うふふ…ではしばらくお待ちくださいね…」


この人を頼らない様にしたいと思うが今回はこの人に頼むのが正解だと思い

綴也頼む事にした

そんな綴也の心情を見通しているかの如く微笑み共にミフルは姿を消した。

それから待ってから十分してミフルが本当に綴也のアイディアルウェアを持

って来た。


「お待たせしました…」

「本当に持って来れるんだ…」

「綴也さんとの付き合いですから…」


ミフルの凄さに改めて驚いた綴也だが何にせよこれで試合は可能となった。

観客席も用意してある観客がいない舞台でアイディアルウェアに着替えた綴

也とサクラは対面していた。


(うう…何だか…お腹が空いた…)


これから試合の筈なのに綴也は自分がお昼を食べ損ねて空腹である事を思い

出した。

お昼前にサクラと会ってそのまま連れて来られてお昼ご飯を食べないまま此

処に連れて来られたのだ。

正直に空腹だった。

お昼を食べてから戦いたいと言いたい。


「………………」

(うーん…言いずらい…)


自分を見つめているサクラから発せられるこれにまでない真剣な雰囲気でそ

れを言うのは憚られた。

今か今かと待っているのも伝わった。


(ミフさんは…)

(ニコニコ)

(分かってて言ってくれない!?)


この場にいる第三の人物(?)に目を向けるとの状況を察しているが面白

そうに見ていた。


「今回はサクラさんの希望で綴也さんはCOMと手足を開放した状態で戦っ

てもらいます…万一に綴也さんに負ける事があってもCOMを使った時点で

綴也さんの負けは確定ですのでよろしいですね?」

「うん…」

「問題ないわ…」

「今回なんですが私は審判をしません」

「「え?」」

「今回の審判はこのアイディアルセンターのオーナーさんにしてもらいます

…ほら」

「はいはい…仕事忙しいのに俺まだあんたみたいに器用な真似は出来ないん

だよ」


ミフルの紹介に合わせて新たな人物が姿を現した。

人間にはできない登場の仕方をしたのは整った顔立ちと鍛え上げた体つきを

した男性だった。


「この人…」

「ええ…私の同類です。そして今駆け出しの理想求者で有名なんですよ…」

「そしてこの店のオーナーもやってるツチカタ・トウシロウだ…よろしく!

!」

「詳しい事は暇を見つけてネットで調べて下さいね…」

「先輩!!ちゃんと自己紹介して下さいよ!!」

「そもそも何でそんな名前にしたんですか?貴方明らかに日本人じゃないで

しょう…」

「俺が憧れた人を元に決めたんでな…」

「とにかく審判やって下さいな…私は一応監視役なので公平ではないんです

よ…」


ミフルいやミトラ以外の電子製命体に綴也は会う事が無い。

しかしミフルが先輩と呼ばれる光景を見て改めてミフルことミトラが人間で

は無い事を思い知るが普段から様子を知る綴也からすると凄い人物と紹介さ

れてもその凄いという部分が理解しにくいというのが本音だった。

何にせよこれで舞台は整い始まりを告げるのみとなった。


「…では二人共理想に恥じない勝負を…レディ…」

「ちょっと待った!!」

「「「ええ!?」」」


始める前にミフルが待ったをかけた。


「ちょっと先輩!?なんなんすか!?いきなり!?」

「サクラさん…貴女はその状態で戦う心算ですか?」

「そうだけど…」

「十二本の剣は開放した方が良いと思いますよ」

「え?」

「綴也さんも両手両足そしてCOMを開放しているのですから貴女も開放し

て戦うのが対等でしょう」


ミフルの言葉に少し思考した後サクラはその為の言葉を唱えた。

唱え終えた頃には十二本の剣が彼女の傍を宙に立っているかの如くあった。


「じゃあ…二人共準備は良いな?」


審判の確認に首肯で答えた。


「…改めて…始め!!」


開始が発せられたと共に二人が互いに全力で駆ける。


(こうなった以上イリュシオンと同じ様に一瞬で終わらせてやるわ!!)


サクラは駆けだしたと同時に十二本の剣を綴也に向けて自分の出来る最高速

で放った。

それは以前綴也が戦った時よりも速く今まさに自分に向かって来る者には躱

せないと自身も確信もしていた。

彼女もアイディアルを引退しているとはいえ鍛錬は怠っていなかったから故

だった。

以前の戦いの後も間を作って鍛錬を重ねていた。

元々は十二の剣を使わずとも今の綴也に圧勝する心算だったサクラからすれ

ば少し不満はあるがこれで終わりだと思った。


「え!?」


サクラの目の前で標的が消えるまでは…。


(消えた!?)


何事なのかと思う前には自分の前に綴也が蒼く光る剣を振るう姿があった。


(く!?躱したというの!?)


振るわれる綴也の光剣をサクラは即座に左の剣で受け止めようとする。

だが再び驚愕する事になる。

受け止めようとした剣が両断されてしまった。


(え!?…くっ!?)


それでもその剣を躱したサクラは無傷の右の剣で反撃に出た。

しかしその剣も先程の左の剣の様に綴也の光剣に切断されてしまった。


(何!?何で!?くっ!?)


両手の剣を切断されて更なる斬撃を必死に躱しドレスを思わせるアイディア

ルウェアに再現された傷を負いながらも距離取った瞬間にサクラは十二本の

剣を綴也に再び向けた。


「だったら!!」


両手の剣を切断されて逆に怒りによって冷静になったサクラは今までよりも

速く十本の剣を手で持たずに空を奔らせてそして自身も剣を足場に綴也にこ

れ以上の不正はさせないという意思の元に綴也を討たんと翔けた。


「え!?」


それは今出せる最高速であった筈だった。

それは絶対にありえないとサクラは思いたかった。

サクラの目に己の十二本の剣の全てが躱せれては次々と切断されていった光

景があった。

ほんの一瞬で彼女はすべての武器を斬り落とされた。


「なん…で…」


そして何でこうなったのかと頭が考えた瞬間に自身の近くに迫った綴也の蒼

く光る刃を突き立てられたのだった。


「そ、それまで…しょ、勝者…あ…」

「ルール上綴也さんは負け扱いですよ…」

「え!?ああ…そうでした…勝者サクラ・レノンフォード!!」


これは綴也の勝ちにはならない。

綴也はアステリーヴァを使えば負けというルールがある。

故にこの勝負に傍目からすれば無意味以外の何物でも無い。


(え?何で?…何で…こうなったの?)


決着がついた。

綴也は今何でこうなったのかという疑問で一杯だった。

綴也は全力で一生懸命戦っただけだ。

体質があるが勝負が終われば吐く或いは前の様に足に突き刺して痛みで気持

ち悪さを忘れさせてでも戦う覚悟で挑んだ。

前はそれでも負けた。

アステリーヴァを使って戦う事自体が負けというルールがある為である。

しかしそれでも空腹は気になったがまたもう一度サクラとアステリーヴァを

使って戦える思って実は嬉しいというのが本音だった。

それも両手両足を開放してという十分間だけとはいえ姫神殺しと呼ばれる前

の自分の初めての試合以来の自由な試合だった。


(アステリーヴァを使ったのって…サクラ先輩以外だと…あの時以来…何だ

けど…)


だから負けると解ってても全力で戦っていつしかそのルールも体質も空腹も

忘れて夢中になっていた。

とても嬉しかった。

しかし戦いの決着は綴也自身が戸惑う程速く着いた。

まるで先程イリュシオンで一瞬で自分の首を刎ねられて終わったかの様に。


「どうですか?不正はなかったでしょう?」

「え!?ええ…無いです…反則はありましたけど…」


二人の電子製命体が自分の不正の有無を確認しているがそんな事をした覚え

がないしそんな事をする考えも方法も綴也にはない。

身体は空腹を訴えているのに綴也の心はそれを無視して目の前に起こった出

来事の原因を知りたかった。

自分がルール上は負けとはいえサクラをこうも簡単に倒せた事に驚愕と疑問

が押し寄せて来ていた。


「ミフ…さ…」


とミフルを呼ぼうとした瞬間綴也は倒れた。


「あ…れ…?」

「おい!?どうした!?」

「ああ…綴也さんご飯食べてませんでしたね」

「ああ…」


そうして自分の空腹を思い出した。

身体は空腹をこれ以上なく訴えていた。


「ちょ!?空腹時のアイディアルはダメだって言われてるでしょうが!!」

「トシ…直ぐに飯を買ってきなさい!!」

「そうだな姫神殺しを知ってるアンタに預けた方が色々良いよな…ちょっと

待ってろ!!」


ただでさえ空腹だった綴也は限界だった。


「おな…か…空いた…」


綴也のお腹から大きな音が鳴った。

とにかく今の綴也に出来るのはお昼ご飯の到着を待つ事だけだった。

E香…貴様に真っ先に問い質したい事がある!!


Mル…何ですか?


E香…綴也君の家に貴様は不法侵入していたのか?


Mル…不法ではありません合法侵入です!!


E香…そんな侵入など無い!!


Mル…綴也さんの監視は時にお家にお邪魔しないといけませんし

  …


E香…貴様の行為は監視というものを超えていると誰もが思うの

  だが!?


Mル…綴也さんが気にしてませんから問題ありません!!


E香…言い切るな!!

  もしお前の様に監視と称して家に不法侵入する様な奴がいた

  ら…


Mル…いると思います?(意味深な笑み)


E香… ………………チッ!!


Mル…それよりも綴也さんがあの一人理想の騎士団を圧倒したん

  ですよ!!

  そこは触れないんですか!?


E香…綴也君がアステリーヴァを使えれば私でも負けるのにあの

  子じゃ勝てないのは当然だ…。


Mル…じゃあ何でこの間アステリーヴァを使わせてあげなかった

  んですか?


E香…それじゃあ”勝負”にならんだろうが!!

  私は勝負をしようと言ったのだ…。

  アステリーヴァを使わせた時点で勝負は成立しない…不愉快

  な事にな…。


Mル…貴女もそれ位は理解している頭はあったんですね…。


E香…うるさい、所で…貴様は後輩の事に触れんのか?


Mル…綴也さんには関係ありませんから…


E香…それは酷いと思うぞ…


T郎…酷いぜ…先輩(泣)


Mル…だってこのモブが絡むとしたらどちらかというとサクラさ

   んかもしくは以前にコレ粉掛けられてた…そこの…


T郎…先輩!!マジで止めて!!人の黒歴史を掘り返すのは!!


E香…私もできれば君とは関りは持ちたくないな…


T郎…バッサリ!?


E香…私は基本男が嫌いなんだ…電子製命体であろうとな…


Mル…この男が男嫌いになる位粉掛けるから…


T郎…初登場で黒歴史掘り返されて俺の人気大丈夫!?


E香・Mル…大して活躍もしてないのに人気もくそも無いと思う

      のだが…(ですが…)


T郎…出番くれ!!


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