家路…大切な事を守る為に…?
「何だ?先に帰る事に問題があるのか?」
「ガラーシアさんと今日は此処で待ち合わせしてたので…」
「恋人でもないのならば先に帰ったと後で何か連絡すれば…」
「僕連絡先知らないんですよ…」
「そうか…それは問題だな…」
綴也はようやくその事を思い出した。
そもそも待ち合わせしていた事すら今の今まで忘れていた。
友人ではないが知らせる必要はあるだろうと思った。
そうしなければ綴也は家に帰る事が出来ない。
「それなら私が…」
「そんな事出来ません!!」
「え?」
「これ以上思命さんにご迷惑かけられません!!」
「いや…あの…」
今日は帰らないといけないという思命にこれ以上のサービス残業は頼みたく
は無かった。
しかし綴也が報告しないといけない相手は今ゲームの中とはいえ世界を終わ
りと思えるような戦いを繰り広げていた。
今彼女に報告するにはこの戦いに割り込んで止めないといけない。
しかし戦い自体が速すぎて綴也には見えない。
それくらい速かった故に割って入る事が出来るかと考えれば出来ないという
のが素直な答えだった。
ふと綴也は自分を乗せてくれるドラゴンが協力してくれたらと思った。
(でも…それは…)
今一番激しく戦っている彼女達と同じレベルのこのドラゴンをこれ以上自分
の都合に巻き込む様な事はドラゴンに悪いと綴也は思った。
「フッ…ならば話は簡単ではないか…」
「どうすれば良いんですか?ドラゴンさん」
「あの二人の戦いに乱入して止めて先に帰ると伝えれば良いだけではないか
!!」
「「「え!?」」」
自分だけあの二人の上から飛び降りて報告しようというと彼なりに限られた
中で一生懸命に考えた方法を言おうとする前にドラゴンが自分が一番に考え
た方法を言われた事に驚いた。
綴也の後ろにいるお姫様抱っこしている老紳士とされている騎士が驚いてい
るのは綴也と同じ意見ではない。
「何を驚いておる貴様ら…お前は死神に一言断りを入れんと家に帰られない
のだろう…だったら空気を読まん行為でも割って入ってでも言うのが報連相
と言うものだ…」
「「ええ…?」」
「ではないか…友よ?」
「う、うん!!」
「「ええ!?」」
ドラゴンの言葉は綴也の中にある様々な迷いを消し飛ばす位響いた。
後ろの二人が驚いている中綴也は大事な事を思い出した。
自分が彼女達から信用されていない。
待ち合わせをしたもおそらくその事が関係している。
だがそれでも報連相はしっかりしないといけないという事。
そして門限を守れない理由に彼女達の戦いを言い訳にしいい筈が無いと…。
「ありがとう!!ドラゴンさん!!」
「ならば手を貸してやる存分にやれい!!」
ドラゴンという予想外の助力を得て綴也は何としても彼女達の戦いを止めて
ガラーシアに先に帰ると報告しようと気合を入れるのだった。
「ああ…明らかに笑ってますね…これ…」
「あの…止めなくていいんですか?」
「私もそうしたいのですが…私もあのドラゴンの気持ちに少しばかり共感し
ているので止めるに止められないといいますか…その資格が無いといいます
か…」
「ええ!?」
呆れている思命に向けてドラゴンがチラッと視線を向けていた。
ドラゴンという人間ではない生き物でもそれは明らかに全て知っていて笑っ
ているのだ。
「あの…貴女があの死神に後で連絡すれば…」
「ああなったらもう言うだけ無駄でしょう…後で顔真っ赤で後悔するとして
も…ね?」
「ええ…っと…」
「まあ…質の悪い絶叫マシンに乗せられたと諦めて下さいね…」
「ええ…」
「成程…あのオカマ野郎がからかいたくなる訳です…」
綴也の後ろでそんな会話があったがこうと決めたからかそれとも空を飛んで
いる所為か綴也の耳には入る事は無かった。
「それでどうやって止めるの?」
「それはお前が考えて決めろ…」
((自分で協力すると言っておいて!?))
「出来るかな?」
「出来る出来ないではない…協力はすると言ったが大事な所はお前がやるべ
きだろう…お前の問題なのだから自分でやるのが筋だと思うぞ…そうだろう
?」
((単に面白がっているだけだろう!!))
ドラゴンの言葉で考えた今の綴也で出来る事はこの背にある大剣より出るで
あろう蒼い炎で戦いに割って入る事だった。
この剣の事はまだよく理解出来ていない。
もしかしたらと思う部分が無いわけでもない。
失敗の事は考えずにただ今はより強くあの蒼い炎が出てくれる事を願いなが
ら大剣を両手に握った。
(出なくても文句は言わないけど後で皆に土下座して謝ろう…)
「方法は決まったか?」
ドラゴンは綴也が何をするか理解している様だった。
後ろの二人は理解した瞬間片方は苦笑し片方は顔が青くなった。
「はい!!よろしくお願いします!!」
「良し!!後ろの二人も良いな?」
「構いません…ですよね?」
「は、はいぃ…」
「二人共巻き込んですみません…でも…」
「いいえ…お気になさらず…ねぇ?」
「は、はい…」
二人を下ろして戦いに割って入った方が良いという考えは綴也の中に無かっ
た訳では無い。
しかし今は彼女達以外にも戦っている連中がいてその戦いに巻き込まれる危
険性を考えると一緒にいた方がいいと思った。
(後でちゃんと謝らないと…)
「では…行くぞ!!」
ドラゴンが彼女達の戦いに向けて飛ぶ。
でもそれは駅とは明らかに方向が違う思先速さも程までの比では無い。
綴也には見えないあの二人の戦いをドラゴンは見えているからその戦いに向
けて飛んでいるのだ。
綴也には何が起こっているのか解らない中にいる気分だった。
その形容が出来ない不思議な感覚が短いようで長いとも感じた時間の中で…。
「今だ!!」
ドラゴンの声が不思議な感覚の中で綴也の耳に響いた。
綴也は明瞭に響いた声を耳にした瞬間不思議な感覚の中振るうべき所も定か
では中無いドラゴンの声に導かれた様に大剣を振るった。
「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「!?」」
門限と報連相を守る為の大剣が振るわれた。
綴也の思いが通じたのか振るわれた大剣から蒼い炎が放たれた。
大剣から放たれた蒼い炎はドラゴンを超える高さの火柱となり速さで直線を
駆け抜けた。
こんな巨大な炎が出た事に驚きたい気持ちを何とか報連相の為に必死に押さ
えつけ炎の行く先を見続けた。
「朝倉君!?」
「綴也君!?と黒蜥蜴!?」
「何か言ったか?悪徳女?」
「「ああ!?」」
蒼い炎が通り過ぎた先にヴィヴィアンヌとガラーシアがいた。
両方蒼い炎に分けられた様に距離が離れており共に服にも顔にも傷だらけだ
った。
外から見ていた者からすればあれだけの戦いでこれだけ傷ついたのかこれだ
けしか傷ついていないのか意見が分かれるかも知れない。
「ガラーシアさんに…伝えたい事が!!あって」
「「え!?」」
二人が驚くが綴也は構わず続けた。
綴也はその為に此処まで来たのだからそれを言わなかったらこれまでのドラ
ゴンの協力も無駄になるし巻き込んだ後ろの二人にも顔を向けられない。
「門限があるのですみません!!僕は先に家に帰らせてください!!」
「「………………え?」
ガラーシアから言葉が無かった。
失敗したかなと綴也は思った。
「あの…」
「伝えたぞ…」
「「え?」」
「我が友は要件は伝えたと言ったのだ…構わぬな死神?」
「え!?…ええ…も、門限ならば仕方ありません…」
「ええ!?」
「良し…では行くか友よ」
「友!?」
「え?良いんですか?」
「大丈夫ですよ。門限は大事ですから…気を付けて帰ってくださいな…」
「は、はい」
「ではな二人共…GWでゲームの中とはいえ殺し合いも程々にな…」
ドラゴンは飛び去った。
綴也はドラゴンの頭部から遠のく二人を小さくなるまで見ていた。
(何とか伝えられた…ホッ…これで家に帰れる)
綴也は二人が小さくなってようやく自分が報告できた事に安堵した。
「「…」」
ドラゴンが綴也を連れて去った後ヴィヴィアンヌとガラーシアの二人はその
場を動かなかった。
いろいろな要因が絡んで先程までの戦いいや殺し合いの続きどころでは無く
なった。
「これ…って私達殺し合ってる場合じゃないと思うんだけど…」
「…」
片方は事態を重く受け止めもう片方は苦笑していた。
この会話が何を意味しているのかそれは会話する本人たちのみぞ分かるのだ
ろうがこれを止めた事が綴也が報連相を守った結果だった。
「つ、着いた…」
「ですね…助かりましたね」
「…」
「フッ…では…またな」
新天神駅に到着したのだった。
本当にあっという間だった。
ドラゴンは翼を広げ颯爽と去っていく。
まるで赤いマントはためかせた英雄の様に。
「ありがとう!!」
綴也は見えなくなるまで手を振って見送った。
英雄に命を救われた人間の様に。
そんな綴也に様々な視線が集中しているがそんな事に気が付いていない。
「じゃあ…駅に…」
「ま、待て!!」
「ん?あ!?」
これまで思命にずっとお姫様抱っこされていた騎士がそのまま綴也に待った
を掛ける。
待ったを掛けられた事で綴也はここにきてようやくこの騎士を自分の門限を
守る為の戦いに巻き込んだ事を思い出した。
「すまみせん…もん…」
「きさ…じゃない貴方は何処に行く気だ?どうしてこんな真似までしてここ
まで来た?どうしておれ…僕を連れてきた?」
「え?」
騎士の問いかけに驚く綴也。
問われる事にもその内容にも綴也は驚いていた。
ただ答えは一つしかないので答えた。
「門限までに家に帰りたくて…」
「え!?」
綴也の答えに今度は騎士が驚く。
信じてもらえないだろうなと思いつつも綴也は理由を続けた。
「でも緊急メンテナンスだったのでそれで仕方無く…でもそんな時に大けが
してる貴方と会っちゃって…」
「そ、本当にそんな理由で…」
「すみません僕の都合に巻き込んじゃって…」
「そ、それは…」
「綴也君…彼は私にお任せ下さい。貴方は門限を守る為にもホームに向かっ
て駅で電車待ってるといいでしょう…」
「え!?でも…」
「大丈夫です…直ぐに駅のホームに向かいますから…それに駅の中に入れば
住人の時の部位欠損はありませんから…」
「すみません…よろしくお願いします」
騎士には悪いが綴也駅に向かった。
せっかく新天神についたのに自分がここで油を売っては意味がない。
騎士が呆然としているのが見えたがそれにかまっている場合ではない。
騎士が自分の言葉を信じてくれる事を祈りつつも家に帰る為に綴也は駅のホ
ームに向かった。
「全く…解かっていませんでしたね…彼は…」
「うっ…」
「彼には貴方が無辜の怪我人に見えたらしいですよ…」
「うっ…」
「まあ…巻き込んでしまったのは事実ですから…後はお好きになさい…」
「…」
綴也が駅のホームに駅のホーム近くの公園でこのようなやり取りがあったが
それを見たものがいたかはイリュシオン運営の管理をしている電子製命体だ
けである。
最も管理者以外の目撃者がいたとしてもそのやり取りを理解できるのは当人
達以外にはいないだろう。
「はあ…」
本当に長かった一日な気がした。
イリュシオンの凄さを改めて感じた一日だった。
自分の悪名の為に良い事は殆ど無かった。
しかし高校に入って初めての友達が出来た。
「綴也君…」
「え?思命さん?え!?いや…」
「ウフフ…今は住人でも桜羽思命でもありませんよ…」
「あ…すみません」
物思いに没頭する前に先程駅の入り口で別れた筈の人物なのに再会したら今
は老紳士ではなくサクラと全く同じ外見の少女だったので判別に時間を必要
とした。
「思命さんもすみません今日あったばかりなのに色々巻き込んでしまって…」
「じゃあ…一つ聞いてもいいですか?」
「ど、どうぞ…」
「門限を守る為にガラーシアに報告したいのはわかりますけどどうして彼女
達の戦いに割って入ろうと思ったんですか?」
「すみません…シア先輩に報告しておかないと思って…それ以外に方法が思
いつかなくて…」
「…」
「思命さんも巻き込んですみませんでした!!」
思命の質問に今更ながら自分の都合に一番に巻き込んだのはこの人だと思い
綴也は頭を下げた。
「ウフフ…いえいえ…」
桜は微笑んでいた。
彼女の笑みがどういう意味があるのか綴也には解らないが電車が来るまでの
間二人はとりとめのない会話をした。
二人が会話をしている内に電車がやって来て先に綴也は乗り込んで家の最寄
り駅に向かった。
「ただいま…」
ようやくの我が家に着いた。
「ああ…何日も此処にいた気がする…」
そんな気分と共に綴也は家に帰った。
駅で思った事を家でも思った。
それだけの郷愁の思いが綴也には感じられた。
男性専用車両が無い電車だったが幸いにも女性客も少なく席も空いていたの
で駅まで綴也にとっての事故は無く家に帰る事が出来た。
様々な感慨と共に大事な門限は守られたのだ。
「いけないいけない…うがいうがい…」
洗面所で手を洗った綴也はうがいの為のあったかい緑茶を入れる為に綴也は
台所に向かった。
緑茶でうがいをするのは綴也の習慣である。
「うが…」
台所で綴也はコスプレというものをしてが服が明らかに不自然にはだけた状
態で抱き合っていた実の両親を目撃した。
「……………………………………」
「「………………………………………………………は!?」」
両親はしばらくして無言の綴也に気が付いた。
「…」
綴也はお湯を魔法瓶からきゅうすに入れて緑茶をコップに入れて念入りに口
をゆすぎうがいをした。
「…」
それからリュックから弁当箱と水筒を取り出して手慣れた手つきで洗って乾
燥機に入れた。
「何やってるんですか!?二人とも!?」
「「ごッ、ごめーんッ!!」」
綴也の怒りの声ががこの部屋のみならずすぐ隣の食事処にまで届いたのだった。
Mル…こうして長い長い一日が終わったとさ…
E香…何をやっっているんですか!?あのお二人は…
Mル…綴也さんの弟妹作りでしょう…
ご夫婦なんですからそれ位…
E香…では聞くが綴也君は何時に帰ってきた?
Mル…午後八時くらいですね…門限一時間前ですね。
守れて良かったですね…。
E香…念の為聞くがその時間は?
Mル…思いっきり閉店二時間前ですね…。
E香…思いっきり仕事中だろう!!何をやっているんですか!?
Mル…ちなみに常連客とこの店の店員さんはこの手の事は「また
か…」と流しております。
E香…一度や二度じゃなかった!?
それにお客様や店員に知られているだと!?
Mル…お父さんのお相手がマリアさんの時や…
匿名希望二名…それ以上はやめてーーーーーーーーーーー!!
E香…はあ…綴也君も気の毒だな…。
Mル…貴女にだけは同情されるのは私が綴也さんが気の毒にと
思うのですが…。
E香…何を根拠にそんな事を…。
Mル…貴女だって自分のパパと…
E香…それ以上言うと私達も本気で殺し合うか?




