新たな友達と緊急事態
綴也は二回ヴィヴィアンヌとドラゴンの戦いを見た事がある。
しかし何度見ても桁が違う次元が違うという言葉が頭に浮かんだ。
「凄い…全然ちゃんと見えない…」
綴也の右目には剣を交えたりしているのを見てはいるが実は次の時には既に
何処か違う場所にいて拳をぶつけ合ったりまた目に映った次には別の場所で
剣を打ち合っていたりと今まで見た来た時もそうだったがまるで映画やテレ
ビのフィルムが途切れ途切れになっている様に見えていた。
仮に両目が開いていてもその結果は今よりも少しマシな程度でしか無い。
「あの人達がいたらどうなっていただろう…」
戦っているのがゲームのプレイヤー同士とはいえ綴也の頭の中で練習相手の
元になった二人が戦ったらもしかしたら四つ巴になるかもと思った。
ただありえないとも思えた。
アイディアルとイリュシオンの異種格闘技でもない限りそんな対決は無いし
彼女はアイディアルを引退してしまったし片方は伝説なので何気に思った事
は実現しないなと空の上で苦笑した。
「ん…あれ?」
いつの間にか綴也は自分が空にいた事に気づいた。
「あの戦いの所為で投げ出されちゃったんだ…」
綴也は事実を受け容れていた。
此処がゲームだからか或いは自分自身でも突飛過ぎたので不思議な事にすん
なりと現状を受け容れられたのかもしれなかった。
自分を頭に乗せてくれていたドラゴンも流石に気付いてはいない。
「あれ…ゲームだけど…これって…落ちたら…」
ふと綴也は現状で大事な事に気付いた。
それは大事な事だった。
先程同じような事になったにも関わらずその事に思い至らなかった。
その次を口と思考にする前に綴也の思考と身体で落下と絶叫が始まった。
「ん?」
「何!?」
「え!?…ああ!!綴也君!?何時の間に!?」
綴也の悲鳴がドラゴンとヴィヴィアンヌそしてドラゴンの頭上に立っていた
思命に届き悲鳴のする方に顔を向けた。
「うわ!?」
「大丈夫ですか?」
老紳士思命は即座に悲鳴の方へ飛び綴也は空中で横抱きにキャッチされた。
「あ、ありがとう…ございます」
「いえ…監視役でありながら私も悲鳴が上がるまで気付きませんでした…」
「でも…」
やり取り中だが現在も落下中で事態は当然解決していない。
「おっと…」
思命にお姫様抱っこされる綴也の下にドラゴンの頭上がまるでトンネルを潜
る様に現れて思命はドラゴンの頭上に着地した。
「すまんすまん…アイツが来たんでそのまま戦ってしまった…」
「い、いえ…大丈夫…です」
「え!?綴也君!?今の悲鳴は君だったの!?何で此処にいるの!?」
ヴィヴィアンヌことサクラが驚きの声を上げた。
「今まで気付いてなかったのか…今日我がこのエリアに現界した際に其処に
いたのだよ」
「アンタだって忘れてたでしょうが!!綴也君の傷は…ああ…」
「我ではない!!この男が決闘しててズタボロに負けたのだ…」
「そう…なの?」
「あはは…はい…このドラゴンさんが現れてくれなかったら殺されてると思
います」
「さっきから周りでコイツが綴也君に操られてるなんて噂が流れていたけど
…やっぱり全くのデマね…」
そのヴィヴィアンヌの一言に綴也は傷だらけの体が痛んだ。
自分にそんな心算は無くともそんな風に見られる。
自分の行いが元々にあるとしても平気ではいられなかった。
だがそんな痛みに耐えなければ綴也は此処にいられないと綴也は自分を言い
聞かせて此処に耐えていた。
「ふん…我はこの男の友人よ…別に友人と語らっても何の問題も無い…噂なぞ…」
「「え!?」」
「おい!!其処の女悪徳企業はともかくお前は驚くな!!」
「おやおや…これはこれは…」
とは言われても突然友人と言われても綴也は混乱するしかなかった。
友人を得る事は綴也の高校での自身に課せられた課題の一つである。
しかしこのドラゴンにそんな風になれる様な事をした覚えは無かった綴也は
そんな事を言われるとは全く思いもしなかった。
「ええっと…友達…良いの?」
「お前…どれだけ友達居ないのだ…素直だと思えるほどの解かりやすい…」
「良いの綴也君…イリュシオンでとびっきりの悪役よそいつ…」
「フン…悪役同士だから気が合うのかもな…正義の味方と書いて女悪徳企業
と読む女に心配されてもな…」
「後で覚えてなさい黒蜥蜴…それで話が脱線したけど綴也君をお姫様キャッ
チしたそちらは…」
「貴女とは初めましてと言うべきですね。このイリュシオンで朝倉綴也君の
監視役を務めております桜羽思命と申します…貴女の噂は色々耳に…」
「そう…大変だけどよろしくね思命おじ様…色々その子にはあるから…」
「はい…これも仕事ですから一生懸命この子を監視させていただきます」
傍から見ると赤い髪の少女が老紳士とにこやかに会話をしている様に見える
が綴也は現実には同じ顔の少女が対面していると考えると何だが凄い場面に
見えていた。
ふと思命の方を見るヴィヴィアンヌと思命は初対面だった様なのと余程噂を
耳にしているのか思命の表情が硬い様に見えた。
「まあ…聞きたい事を聞いてスッキリしたから…」
「そうだな…」
と言ったと同時に戦闘が始まり綴也は再び空を舞った。
空を舞った綴也は思命に再び横抱きにされて地上に落ちていく。
「し、思命さん!?」
「大丈夫です!!心配しないでじっとして下さいね!!」
「う、うんって…剣が!?」
綴也の腰に差してある大剣が落下中に腰から抜けて空に投げ出されてしまっ
た。
気付いた綴也は手を伸ばすが届かない。
「思命さん!!剣が!!」
「大丈夫です…」
「でも!!」
「ほら…見て…」
綴也は大剣が飛んでしまった方を向くと蒼い炎が見えた。
「え?」
大剣の刀身から蒼い炎を出してまるで綴也に向けて追いかけている様だった
。
「ね?」
大剣が綴也達が地上に降りた時に追いつき綴也の手に戻っていた。
どんな事があったらそうなるのか解からないが綴也は安堵と共に片手で良か
ったと大剣を抱き締める。
安堵した綴也の右目に激しい嵐がぶつかっているのが見えた。
二人の戦いだ。
やはり見える光景に連続性が無いくらい速かった。
(何か…お腹が…)
綴也自身お腹に異変を感じていた。
「どうしました綴也君?」
「あの…お腹が…」
「お腹?痛いのですか!?あの時に怪我を!?」
「いえ…その…と、トイレに行きたくて…」
「…」
ゲームの中とはいえ体の傷の痛みよりもお腹が生理現象を訴え始めた。
今まで緊張していた為か忘れていたが緊張の糸が切れてしまった為かお腹がそれを訴えて来た。
我ながら思命に生理現象の事を言うのはどうかとも思ったが嘘を言うのはもっと
良くないと思い正直に話す事にした。
「綴也君…やってしまいましたね…」
「え?」
しかし思命からの反応は予想外だった。
とても深刻そうな表情だった。
「あの…何かまずい事でも…」
「このイリュシオンの舞台にはトイレが有りません」
「…え?」
思命の一言に綴也は言葉を失った。
「幻想住人はそういう事も自己管理出来てないと…」
「つまり…」
「そいう事になるのです」
思命の説明は簡潔だったが理解するには十分だった。
「駅まで行かないと…トイレはありません…」
次の言葉も理解するのに時間は必要無かった。
「とにかく急いで駅まで向かいましょう」
「お願いします!!」
「ええ!!だから耐えて下さいね」
そう桁違いの戦いよりも切迫した緊急事態になった以上それに対応する為に
綴也は外見老紳士中身は女性にお姫様抱っこされて駅まで耐える事になった
。
「待て!!」
という声と一撃が綴也と思命に襲い掛かった。
「貴方は…」
不意打ちをかわした思命が襲撃者を見据えた。
それは綴也が決闘していた騎士だった。
Mル…綴也さんに高校に入って初めてお友達が出来ました!!
(クラッカーを割る)
E香…貴様と意見が一致するのは業腹だがめでたい事だ!!
Mル…まあゲームのでそれもドラゴンで更に綴也さん同様悪役で
すけどね。
E香…何にせよ友達が出来た事は良い事だ。
Mル…綴也さんが中学で友達が作れなくなった元凶が真実を世間
一般に定着させてくれれば全てが丸く収まるんですが…。
真実を告げても全く信じてもらえないという何をどうした
ら…
E香…本当に私の所為なのが事実なので反論できないが貴様に指
摘されているのは殺意が沸いてくる…本当に何で信じても
らえないのが不思議でたまらん。
Mル…貴女が姫神殺しに慈悲の心を見せてると見られるんじゃな
いですか…
E香…そんな事は無いと思うが…
Mル…何にせよ友達が出来た事は良い事です。
緊急事態は発生しましたが…。
E香…イリュシオンではトイレはどうなっとるんだ…
Mル…それも自己管理出来てようやく住人一年生ですね。
始まってこれに気付くのが第一歩とも言われます。
E香…意外に当たり前の事だから忘れやすいと言うやつだなこの
ようなゲームが生まれたら必ず出てくる課題だな…
Mル…トイレ行きたい時に敵と会うのは最悪でこのゲームの始ま
りの頃は漏らした人多数いましたから…
E香…忘れる位熱中したのだな…
Mル…貴女が自分の罪を忘れるのと同じくらいの忘却ぶりでした
よ…
E香…くっ!!貴様とて初めは綴也君を疑ってただろうが!!
Mル&E香…ああ!!
Dさん…貴様等…仲良いな…




