再来…異名と共に…
「さて…また何とも言えない場面で出くわしたな…ん?」
空より表れたドラゴンは目下の出来事に目を向けると多くの住人達が逃げ始
めた。
そして人だかりに不自然に出来た開いたスペースに目を向けた。
ドラゴンの目が一人の少年を捕え少年の残った右目がドラゴンを写す。
「おお!!姫神殺し!!」
「おひさし…ぶり…です」
ドラゴンは倒れている綴也を見るなり気軽に挨拶をする。
綴也も傷だらけだがドラゴンの気軽さに引っ張られた様に挨拶を返す。
「随分コテンパンにやられたな…」
「自分自身の事…忘れてました…」
「あははははは!!…メモリアルペナルティを忘れてただと!?お前実は意
外とぬけとるか?」
実は抜けてると言う言葉で形容できないくらいの失敗をする事があるので綴
也はドラゴンの言葉に苦笑で肯定するしかできない。
しかし今回はまだ軽い方だといえる。
「あの…何で…ここに?」
「知れた事…破壊する為に来たのだ…」
綴也は傷だらけだがドラゴンはそんな事を気にせず綴也と話を始める。
綴也も突然ドラゴンと再会して驚いて更に突然話しかけられて更に驚いたし
黒いドラゴンはとんでもない事を言っているがまるで気安い友人の様に不思
議と話が弾んだ。
初めて会ってから綴也は不思議とこのドラゴンと話す機会に恵まれていた。
「待て!!界塵!!その男の言葉に耳を…」
「貴様がこの男をどう思うのは勝手だが生憎我はこやつが嘘を吐いていると
は思っておらん!!」
「な!?」
「貴様の行為にどうこう言う気も無い…なので我もやりたい様にやらせても
らうとしよう」
「グッ!?」
騎士は綴也の言葉が嘘だと言う前にドラゴンは騎士に反論を叩き付けた。
その瞬間に騎士は即座に綴也に止めを刺さんと剣を振り下ろす。
今の綴也は避ける事もできない。
せめて残った目を逸らさないように迫る剣を見ていた。
「ふん…」
その瞬間ドラゴンの右手に大きな剣を取り出した。
その剣が前に見たものではないと思う事が形になる前にドラゴンはその大剣
を振るった。
「!?」
綴也が残った右目で見えたのはあのドラゴンが大剣を手にしたほんの瞬きで
その後何があったのか見る事は出来なかった。
綴也が見た瞬きの後自身がいた場所に大きな空気の柱が生まれて消えていっ
た。
「え?」
綴也があの瞬きの後片目で見たのは夕方の空だった。
自分がこの後どうなるかは目で見るよりも理解できた。
この様な状況ならば悲鳴を上げても無理もないが余りの事に先程の一言しか
出なかった。
(空って青いだけじゃないんだな…)
と多くの人類の当たり前のを思って綴也は目を閉じた。
これはゲームなので落ちてもまたゲームオーバーになるだけで綴也はそれ程
痛くも痒くもなかった。
不思議と落下していく恐怖も無かった。
それ以上に綴也の心は悲しかった。
今日一日此処で起った事をまるで走馬灯の様に思い返すと色々あった為に空
に落ちて行く状況が余計に悲しさが増していく様だった。
増してゆく悲しみ共に目を閉じながら綴也は落ちていく感覚共にあの部屋に
戻るのを待った。
(…あれ?)
綴也はいつの間にか落ちている感覚がなくなっているのを自覚した。
風が当たる代わりに自分の顔を何か当たっているのを感じた。
「…ん?あ…れ?」
「気がついたか?」
「………え?」
綴也の目の前に黒一色の何かが壁の様にあった。
一瞬驚いたが何か何処かで見たような気がした。
「そんな状態で我の頭の上で眠りこけるとは…貴様は不眠不休で働いて命に
関わる大怪我しながら眠れる刑事の素養ががあるのかもしれんな…」
「え!?ドラ…ゴンさん?」
綴也は自分が今あの黒いドラゴンの頭上にいると理解した。
「な、何で!?何で僕此処に!?」
「あの時我の剣で貴様をあそこから払い上げて拾っただけだ」
「え!?」
「直ぐ傍を見てみろ」
「…え!?」
綴也が右に続き左に顔を向けたら其処には綴也の斬られた両腕と左足と蒼い
大剣そして左腕で握っていたPDが置いてあった。
「な、なんで…」
「フフン…これを拾い上げて頭に置く位造作もない」
ドラゴンは簡単だと言う。
でもそれが簡単だと言うくらいの技量が必要なのではと思った。
「まあやってみようと思ったら思った以上に完璧に出来たんで簡単だったん
だ…」
「ええ!?って痛い!?」
ドラゴンの自供に綴也は反射的にツッコンで傷が痛んだ。
何にせよこのドラゴンが凄いと言うのは綴也は良く理解できた。
「あの…何をしてるんですか?」
「街を破壊しに来たのだ…先程も言ったであろう」
先程も聞いた筈なのに同じ事を聞いてしまった。
ドラゴンが自分をあの大剣で打ち上げ自分の頭上に乗せるのが簡単だと言い
それは恐らく事実なのだと認めてしまい頭が混乱していた。
それでも街と聞いて街は何処だと見渡すが見つからない。
そもそも綴也の目には当たり一面黒い山の様な風景一色だった。
「おいおい…ここは空だぞ…こっちだ」
「あ…」
ドラゴンが頭を下げると綴也の目に大穴が開いた新天神の街が飛び込んで来
た。
「最も最初の一撃以外攻撃しとらん…」
「どうして…」
「街を破壊する前に貴様と貴様の手足と剣を拾うのを優先したのでな…」
「そ、それは…あ…」
「貴様も目覚めたのでこれで遠慮なく街を破壊できる訳だ!!」
ドラゴンの言葉に反応する前にドラゴンは大剣を街に向かい振るう。
街に振るった回数がわかるくらい大きな跡が刻まれ衝撃がつむじ風ならぬ嵐
になる。
「うわあああああああああ!!」
本来ならば何やってるんだとドラゴンに問うのが筋かもしれないが綴也は何
も言わなかった。
それ以前に吹き荒れる衝撃に吹き飛ばされるのを右手だけで頭上の突起を掴
んで踏ん張っている為一言言う余裕は無い。
「うーんこの剣を創って試し斬りとしては中々だな…」
ドラゴンは満足げだった。
「しかし今は使い慣れて無い所為かあの一瞬で大剣を振える回数を増やした
いな…次は力を入れて思い切り一振りするか…ん?」
ドラゴンが今の大剣の振り方に問題があると考えている中そのドラゴンの元
に何かが空から地上から向かって来たのが綴也の右目も写した。
「界塵竜!!」
「今日こそ討ち取ってくれる!!」
他の幻想住人達だった。
各々ドラゴンを討たんと向かっていく。
「あれって…?」
「ようやく来たか…最近遅刻が深刻だな」
「遅刻!?」
「住人達もいつも此処に来ている訳では無い為に我が待っている内に街の九
割が破壊された状態で戦闘というのも良くあるのだ」
「いや、それはドラゴンさんが…」
「それは私に働くなと言うものだぞ!!働かざる者お金は貰ってはいけない
し食べてもいけない!!そんなのは何世紀前の日本の政治家だけで十分だ!
!」
「ちょっ!?」
と少なからずの人々に共感を得そうな一言と共にドラゴンは大剣の一振りで
向かって来る住人を払い飛ばしたりその大きすぎる大剣で自分よりも遥かに
小さい住人達を捉えて真っ二つにしていく。
向かって来る住人達が次々と驚きや悲鳴と共に光になっていく。
「うわあああああああ!!」
繰り返される戦闘で綴也はそのドラゴンの攻撃の激しさからの衝撃で吹き飛
ばされない様に片手で掴むので精一杯でドラゴンに止める様いう事もままな
らない。
「ドラゴンさん!!破壊活動をやめて下さい!!」
「断る!!」
「やめて下さい!!」
「断る!!」
そこからドラゴンの元に幻想住人達が殺到して倒されていった。
綴也は片手で突起を掴み嵐にもまれながらもドラゴンに破壊を止める様叫び
この様な状況で綴也の声が聞こえるのかドラゴンは即座に拒否。
住人達の悲鳴が響く中このやり取りを繰り返しながら黒いドラゴンは多くの
住人達を一掃していった。
「ん!?」
住人達が光になっていく中ドラゴンに匹敵する大きさのロボットと大きい不
定形の生き物がドラゴンに捕りついた。
それを見た住人達はドラゴンに一斉に攻撃を放つ。
「うわああああ!?」
「ほう…中々良く出来ているが…」
ドラゴンは攻撃を受けながらも尚余裕を持った称賛の直後二つを振り解き不
定形の生き物は地上に叩きつけられて巨大ロボットはそのまま背負い投げさ
れて不定形の生き物の上に叩きつけられ振り回され周りにいた住人達を掴ん
だロボットと不定形生物をまるで鈍器の様に振るう様で次々と潰しそのまま
投げ飛ばす。
「我はその様に抱きつかれる趣味は無いしオリジナルの方が強い!!」
そう評した同時にドラゴンはその手の大剣で両方を斬り刻む。
斬り刻まれたロボットが爆発しその爆発に不定形の生き物の破片も残ってい
た攻撃に参加した住人も飲まれて消えた。
「ふっ…また面白いものを…」
「あああああああああああ!!」
「って…あ!!?」
ドラゴンの頭上に掴まっていた綴也は空中に再び放り出されていた。
とうとう手が突起から離れてしまったのだ。
「あああああああああああ!!」
綴也は真っ逆さまに落ちている。
その綴也の目に自分のPDが近くに在るのが見えた。
それを見た綴也は残った右手でPDを手にする。
落ちてこのままどうなるかは言うまでもない。
その瞬間にスイッチを入れて光剣の玩具を起動する。
「いい加減に…」
ドラゴンの両手が綴也をまるでハンカチを拾うかの様に綴也を受け止めた。
しかしそんな事を気付きもしなかった綴也は無我夢中で色々な思いを込めて
ドラゴンに光剣の玩具を振るった。
ドラゴンは不思議と話をする不思議な仲といえるかもしれない。
しかし目の前の破壊活動を止めたいと言う思いもある。
「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「っ!!」
色々な想いが込めて綴也が振るった光剣はドラゴンの身体に突き刺り光剣は
そのまま下へと向かいドラゴンの皮膚を斬り裂いた。
先程の戦闘で傷一つも付けられなかったドラゴンの身体に。
傷からすれば一つでドラゴンの強大な巨体からすればかすり傷とすら言える
か分からない。
しかしドラゴンに傷を付けられるのは出来るのはこのドラゴンと互角以上に
戦える者だけである。
「ぎっ…」
「…ぎ?」
綴也が突き刺し斬り裂いた箇所。
それは人体で言う所の股間と呼ばれる箇所だった。
「!?!?!?!?!?!?」
ドラゴンが悲鳴という言葉では形容出来ない絶叫を上げて周囲は更に激しい
衝撃波が奔り街が更に破壊されていった。
「この…この馬鹿者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「す、すみませんでした!!」
「前の時は我も悪かったと思い言わなかったが今回は言わせてもらうぞ!!
ここはな刺されたり斬られたら誰でも痛いんだぞ!!解かっているよな!?
な!!」
「は、はい!!」
真ッ平らなった街でその元凶であるドラゴンが明らかに涙目で怪我をした箇
所を両手で押さえながら両手と片足と片目を斬られた少年に裏返った涙声で
説教をしているという第三者がいたら呆気にとられるであろうシュールレア
リズムといえるかもしれない光景があった。
「攻撃する時はもっと周りを見ないと駄目だぞ!!いいな!?」
「ごめんなさい…気をつけます」
綴也も悪いと思い素直にドラゴンの説教を聞いていた。
もしも此処に第三者がいたらこの不思議な光景に何か言いそうではあるが今
は言う者は誰一人としていない。
「全く…そうは思わんか思命?」
「そうですね…綴也君は少し向こう見ずな所があるかもしれませんね…私の
事を今も忘れているのですから…」
「し、思命さん!?」
いや…第三者はいた。
思命はただ空気を読んで今まで口を出さなかっただけだった。
「酷いですよ綴也君監視役である私を忘れるとは…私泣いてしまいそうです
よ…」
「す、すみませんでした!!」
そして綴也はドラゴンに夢中もといドラゴンを止めようと必死だったので中
身少女の老紳士の事を忘れていた。
「うふふ…」
「し、思命さん?」
「成程…こうやって綴也君をからかうんですね…」
「え!?」
「ミフルさんが言ってましたよからかうと良い反応してくれると…確かに良
い反応ですね」
「からかわれてたの!?」
「ドラゴンさんは本当の説教でしたけどね…」
「そんな時にからかうでない…貴様わざと喋ってなかったな…」
「空気を読んだだけですよ…必死になって貴方を止めようとしている綴也君
に水を差すような真似をするのもどうかと思いましてね…」
「あの…二人って…」
「ああ…この爺女とはヴィヴィアンヌよりも付き合いが長い」
「良い得て妙ですけど…口が悪いからトカゲ野朗なんて言われるんですよ…
貴女も…」
「全く貴様も…ん?」
「ドラゴンさん?」
ドラゴンが向こうを見た。
綴也もその先を目で追うと其処には新たな幻想住人の集団が迫って来た。
それも先程とは比べ物にならない集団だった。
綴也がかつて経験した中で最も多かったのは歌姫の時だったがそれでも比べ
物にならなかった。
「説教は此処までだな…」
ドラゴンは再び綴也を自分の頭上に乗せ集団を見て笑った。
「えっ!?」
「まだまだこれからが本番という事よ…」
大剣を手にドラゴンは翼を広げる。
それは空を飛ぶためでなく訪れる敵たちを両手を広げて歓迎する様だった。
「まだ破壊する気ですか!?」
「当然!!我は物理的評論家とも言われているのでな!!」
「そんなの駄目です!!」
「断る!!」
「破壊するのやめて下さい!!」
「断る!!」
地平線を覆う程の集団が向かってきている。
その筈なのにその集団の標的のはずの巨大な怪物はとてもそんな時に暢気と
も思われる止めろと断るのやり取りを繰り返していた。
そしていつの間にか綴也と同じくドラゴンの頭上に乗っていた老紳士は顔に
呆れながらも微笑を浮かべながら二人(?)の不思議と見られるやり取りを
見ていた。
Dさん…全く一度ならず二度もやられるとは全く…あの男は。
Mラ…あの糞野朗が申し訳ありません…。
後でよく説教の上お仕置きしておきますので…。
Dさん…説教はもうやったし別にあ奴を嫌ってもおらん。
あの一撃は問題があるがあ奴は好ましい者だ。
しかし何なんだその言葉遣いは何時ものにすれば良いだ
ろう…気色の悪い。
Mラ…そう申されましてもイリュシオンでかの有名な界塵竜殿で
すので…。
Dさん…いい加減にしないと貴様の秘密を世間に流すぞ…中身を
見たがアレは…男の貴様が持っていると…
Mラ…はいはい…分かりましたよ。
イリュシオンでは顔なじみですからね…我々。
私が折角今までのイメージを払拭しようと努力を始めよう
と思ったのに…。
Dさん…貴様のアレはどうでも良いお客の時の対応だろうが…。
Mラ…そんな事はありません。
何であれお客様には誠心誠意を以って対応させていただい
てますよ。
Dさん…成程女の身体になってあの男と戯れるのもその誠心誠意
の対応と言う訳か…。
Mル…綴也さんはお客様では無く私の玩具です!!
そして彼をからかうのは私の最高の愉悦なのです!!
Dさん…一度定着したイメージを払拭する努力はどうした?
Mル…私は綴也さんには努力をする必要はありません!!
それ以外の人達の私のイメージを変えたいのです。
Dさん…今の貴様はどう考えても女体化趣味の男では無いか?
Mル…女体化するのは基本的に綴也さんと二人きりの時だけです。
貴女とて今回で二度目なんですから変なイメージが定着す
るのでは?
Dさん…はっきり言わない分余計にたちの悪い言い方をしている
しそれだけは断る!!
もし定着したらこの街所かこの星斬り刻む!!
Mル…そんな事になったら色々世界が動いて大事件だから自重し
ろ!!このまた斬り裂かれドラゴン!!




