ラン・アンド・スナイプズⅡ
「さあ!!この日がやって来る事をどれ程の人々が待ち望んだ事か!!姫神
殺し朝倉綴也と謎の狙撃手の再戦の火蓋が突然のアクシデントに見舞われま
したがようやくきられました切って落されました!!」
何か聞こえた気がしたが綴也は狙撃の雨から逃げるのに集中しているので良
くは聞こえなかったし気のせいだと思った。
彼の隣を走る思命も聞こえなかった様で表情に変化は無かった。
「実況は私綴也さんの監視を二十四時間三百六十五日担当しています電子製
命体ミトラの妹ミフルがそしてゲストは前回に引き続き此処に来ていた匿名
希望のご夫婦の旦那さんの方です!!」
「母さん達には許可をもらって来てるから決して仕事をサボってる訳じゃ無
いからね!!」
何か聞こえる気がするが綴也は今一生懸命に走っているので誰かのの言葉に
答える余裕は無い。
「さて再び始まったこの戦いは勝敗は綴也さんが撃たれるか狙撃手が倒され
るか根を上げるがです…前回は生まれて初めてバナナの皮で滑って転んだ綴
也さんがそこを見事に撃ちぬかれて終わりましたが今回はどうなることやら
…フフ」
「バナナの皮は不幸な事故だったからね…プッ…ゴホン、それが無かったら
どうなっていたか気にはなるね」
「プッ…失礼、バナナの皮が無い事を祈るばかりですね…フフ」
何やらプッと思い出して笑っているが何で笑っているのか綴也には考える余
裕は無かった。
待っていた再戦とはいえ綴也は狙撃手に対する有効な手段を見つけた訳では
無い。
そう再戦を挑むならば何か思いつければ良いのだが現実はそんな風に上手く
いかないという事を表わしている様だった。
「さあ、狙撃手の銃弾が綴也さんを再び撃ち抜くかそれとも綴也さんが狙撃
手を見つけ出し倒すか狙撃手走り続けて根負けさせるのか…我らは見届ける
のみです!!」
「でも…何をもって綴也の勝ちになるんだろうね?」
「それはお互いのみぞ知るという事です!!」
何か言われた気がしたが何にせよ綴也のやるべき事は変わらない。
そうして綴也は気合を入れ直して走る。
相手を見つける事は出来ないので相手が弾切れか根負けするまで走り続ける
為に新天神の街を走る。
先程誰かが正しい事を言った気がするが少年が一生懸命に走っているので此
処は考えない振りをして欲しい。
「さあ、綴也さんは順調に逃げております…」
「でも今日は休日だからね…」
「ええ…平日よりも人は沢山来ております!!」
綴也の目の前には大勢の人々が歩いていた。
「さあ!!どうする綴也さん!!」
以前は背にある大剣から出た蒼い炎がまるでブースターの様に噴射して自分
を助けてくれたがそれを期待する考えは無かった。
もしも綴也のふと思ったことが当たっていたらそれを頼るのは良くないと思
ったからだ。
ならば自分で乗り越えるしか無いと考えられる手段は一つしかなかった。
「すみません!!」
「うおっ!?」
そう言って綴也は飛び上がり近くにいた男性の背に足を乗せそのまま飛ぶ。
「おおっと!!綴也さん通行人の背を利用して飛んだ!!」
「人だかりで脇道も無い以上は仕方が無いかな…」
そして人少ないない場所に飛び降りて再び走った。
申し訳ないと思いながらも走る綴也の前には再び人混みが現れる。
「ごめんなさい!!」
「な、なんだよ!?」
「キャッ!?」
今度は別の男性の肩に足を乗せて飛んだ。
その際に彼の前には女性がいたらしく悲鳴を上げていた。
申し訳ないと思うが綴也は走る。
「ごめん!!どいて下さい!!」
「うわ!?」
そして遭遇した次の人だかりでは飛んで男性の頭に手を乗せ其処を支点に人
のいない方へ飛び上がった。
「ああっと!!綴也さんが次から次へと男性の背や肩を利用して飛んで行く
跳んで行く!!」
「まるでサーカスかアクション映画みたいだね…」
それからも人だかりに遭遇した時は男性の背か肩を無断拝借して人だかりを
飛んで回避していった。
「いや…綴也さんのとった手段はイリュシオンでの緊急措置としてはまあま
だ良識的な部類なんですが姫神殺しである綴也さんがやると後で何か途轍も
ない噂が流される危険性がある諸刃の剣です!!」
「それって大丈夫じゃないよね!?」
「綴也さんのとった手段は此処での基準ならばまだ良識的な筈なんですけど
ね…大事な事なので二回言いましたけどね…」
「皆!!僕の息子は世間で言われる様な子じゃないよ!!」
何やら嫌な事を言われた気がしたが綴也は走り続ける。
しかし飛んでいたので狙撃の着弾する音が聞こえなかった。
とはいえ油断はしないと警戒は緩めていない。
しかし人ごみの中で綴也を撃って来なかった事は少し安堵していた。
「もしかしたら何の罪も無い人達を人質にか盾にしたと思われているかもし
れませんね…」
と思命が呟いたが綴也はそれを聞く余裕もそれに答える余裕も無い。
ただこれ以上此処にいると自分の勝負に関係ない人たちを巻き込むかもしれ
ないと思いとにかく此処から離れる為に通行人の肩や背を借りて人だかりを
飛び越え一秒でも早く抜ける為に走り続けた。
「さあ!!綴也さんが人混みを抜けた!!」
「凄い人ごみだったね…今日何かあったのかな?」
人混みを抜けたその瞬間に綴也の背後に銃弾がまるで雨のように降り注ぐ音
がした。
その音が少し激しくなっている気がした。
もしかしたら狙撃手に人を盾に取ったと思われたかもしれないが今はそんな
事を考えるより走るしかないと気合を入れ直し開かれた道を綴也は走った。
(どうか人混みに遭いませんように!!)
と最後に一瞬祈りながら綴也は走る事に集中した。
「さあ…この戦いが始まってからかなりの時間が経とうとしています」
「流石に走り続けて疲れが出てくると思うけど…」
綴也は走り続けた。
その背に銃弾の雨が追いかけて来る。
休む暇など無い。
「はあ…はあ…」
そんな事をすれば即撃ち抜かれる。
だから綴也は走った。
人混みに遭えば男性住人の背や肩や武器を足場に飛び越えたりした。
女性は選択肢に入れていない。
だから男性がいなかったらこの様なはた迷惑な作戦は出来なかった。
それが幸か不幸かは今の所は解からない。
只綴也もそんな事をしない様に可能な限り開いた道を優先して走った。
休日なので走る度に悲鳴が聞こえた。
しかし綴也はそれに謝罪する余裕は無い。
走り続けなければ撃ち抜かれるからだ。
「はあ、はあ…」
どのくらい経ったか綴也は解からない。
だから綴也には疲労が明らかに出ていた。
しかし銃弾の雨はその勢いを衰えさせる事は無かった。
背後の狙撃の雨は今も変わらずに追いかける様に撃ち続けられていた。
(どれだけ撃ってくるんですか!?この人!?)
綴也は心の中でそう言いたくなった。
疲れの影響なのか狙撃の雨が速くなっている気さえしていた。
その瞬間綴也の足に銃弾が何発かかすった。
疲労の蓄積で集中も乱れ始めた。
(走れ!!走れ!!)
綴也は限界だった。
限界はとうに超えても走り続けていた。
(走れ!!走れ!!まだだ!!まだ!!)
それでも走っていた。
走る事を辞められなかった。
辞めれば綴也は再び狙撃の雨に身を晒す事になる。
「あ…」
「ああ!!綴也さん!!とうとう転倒!!」
「綴也!!」
綴也の足がもつれた。
しかし限界を超え続けていれば何処かで訪れていてもおかしくはなかった。
まるでドミノが一斉に崩れる様に綴也の身体は倒れてしまった。
その瞬間綴也は自分が再び狙撃の雨に撃たれたと思った。
(また…負けちゃったな…)
と綴也は目を閉じた。
「綴也君!!綴也君!!」
「…うっ…クっ…ゲホ!!ゲホッ!!」
声が聞こえ近付いてくるのが分かる。
思命が駆け寄り声を掛けていた。
それによって目が覚めた綴也その瞬間まるで止まっていた息を再開したかの
様に咳き込んでいた。
「はあ…はあ…はあ…」
思命に声を掛けられても綴也は息を上げることしかできなかった。
何より自分がまだ撃たれていないという事を理解し驚いていた。
「な…何で…」
そんな疑問も口から出て来る。
「意識はありますね…でもこれ以上は…」
思命が何をしようとしているのか行動で分かった。
思命が綴也を抱えようとしている。
「待っ…て」
と言うが思命は綴也の声を聞く事はなかった。
思命がその手を綴也に差し伸べようとした。
その瞬間に銃声が響いた。
「な!?」
狙撃の雨が綴也ではなく思命に向けられたのだ。
思命が即座にその場から引く。
しかし狙撃の雨はそれでも思命に降り注いだ。
まるで思命を綴也から遠ざける為と言わんばかりに。
「何の心算ですか!?」
思命が叫ぶ。
しかし相手は遠くから狙撃している以上銃弾は届いてもその叫びは届かなか
った。
「コレはどうしたことでしょう綴也さんにではなく伴走者の方を威嚇してい
る!?」
「コレは…どうなってるのかな?」
「うーん…恐らく綴也さんに立てというメッセージなのかも知れません」
「立てって…だけどもう綴也はずっと走り続けて…」
倒れている為綴也の耳に知っている誰かさん達の声が入ってきた。
どのくらい走ったかは判らないが綴也はまだ撃たれていない。
そして相手は綴也に立てと言っているかも知れなかった。
「くっ…」
「綴也君!!」
綴也は両手を地に着けて身体を持ち上げる。
両足を地に立たせて両手を地から離す。
そして息を上げながらも綴也は立ち上がる。
「ああ!!綴也さんが再び立った!!しかし再び走る出せるのか!?」
身体は自分自身でも限界だと自覚していた。
これほどの疲労はサクラとの試合でも感じる事はなかった。
つまりそれ程の疲労を感じる程綴也は休まずに走り続けたと言う事を意味し
ていた。
(でも…まだ終わってない!!)
そうまだ終わっていない。
理由は分からないが綴也は撃たれていなかった。
身体は限界を超え続けて再び走ったらそのまま死んでしまうのではと思うく
らいだった。
そもそも撃たれて負けても綴也に何か困ることがあるかと考えれば何度でも
チャレンジをすれば良いのだけである。
だから此処までやるのはいささか賢明な方法ではないのだった。
しかし不思議と綴也は走る事をやめる気にはなれなかった。
自分が撃たれてないからかそれとも走りすぎてハイになっているだけなのか
自身でも分からない。
「まだ!!終わってない!!」
「綴也君!?」
そう叫んで綴也は走り出した。
その一言が綴也の気持ちの現われだったのかもしれない。
或いはサクラとの試合の際の自分の宝物を使うと決めた時と同じ様な心境に
なったのかもしれなかった。
「綴也君!!」
だから綴也は再び走り出した。
驚きながらも思命は綴也に再び伴走する。
再び綴也が走り出したその瞬間を待っていたかの様に狙撃の雨が再び綴也を
追いかける様に降り注いだ。
(意識しろ!!走る事を!!)
限界はとうに超えていた。
それでも超え続ける事を選んだ。
しかし走り出しても遅すぎればそのまま狙撃の雨をその身に浴びることにな
る。
(走れ!!)
自分の普段からやっている役に立っているか解からない体の動きを意識して
動かす。
走る事にとにかく集中する。
その為に体中を走る事を意識して動かした。
(走れ!!)
そして走る。
走る。
走る。
(走れ!!走れ!!走れ!!)
その日綴也が人生の中で一番走った日だった。
(走っ…)
走り続けて綴也の意識は失われた。
Mル…作者はパソコンが更新ラッシュで沸いて大変だそうです。
E香…そして更新するまでに時間が掛かってもどかしいそうだ。
Mル…時にアップデートを停止させると…。
E香…アップデートが完了するまで止まらなかったそうだ。
Mル…そんな頑張り屋のパソコンに時間が掛かる事に苛立ちを募
らせていた作者は頭を下げて謝ったそうです。
E香…それが今回の話の出来とは一切関係は無いそうだ。
Mル…はい。
今回はこの決着の着け方にしようとそう思って途中から変
更を始めた結果です。
E香…それはそろそろ置いておくとして貴様は綴也君を何時間走
らせた。
Mル…現実ならば一般の人が42.195kmを完走する時間く
らいですが…。
E香…今のイリュシオンの時間にしたらどうなる?
Mル…少なくとも…三日位…
E香…それは確実に死ぬぞ!!
Mル…冗談ですよ。
それに其処は私がいますので問題ありません。
E香…なら綴也君はなんで倒れた?
Mル…それは次回のお楽しみです♪




