イリュシオン捜査線 呪い?の服を解除せよ!!
「ウフフ…男女一緒にホテルで一夜を過ごしてどうでしたか綴也さん?」
笑顔のミフルからの一言を耳にしながら綴也は一人お弁当を食べていた。
他は既に綴也をドッキリ中に食事を済ませており綴也だけ昼食をとる前に昼
寝をしてしまったので取れていなかったのだ。
「ミフさん…からかってます?」
「YES!!」
一夜と言ったが現実には一時間もないし只単にお昼前にホテルに泊まるサプ
ライズを仕掛けられただけなので綴也はまあやられたと言うのとイリュシオ
ンというゲームでホテルとはいえ宿屋に泊まって直ぐ朝にと言う噂に聞くR
PGゲームあるあるを体験するとは思いもしなかったと言うのが素直な感想
である。
「そもそも男女一緒って別々にしてもらったじゃないですか?」
と言いたかったが綴也は言わなかった。
それを言うのはミフルの秘密をガラーシアと思命に暴露するようなものなの
でそれは普段から世話になっているミフルことミトラに悪いと先程の言葉は
自重した。
「何と言うかお二人は仲が良いのですね…」
「ええ…三年の付き合いですから…」
「綴也君はミフルさんを恋人にしないんですか?」
「私は綴也さんを監視するのがお仕事でからかうのが生き甲斐ですので…恋
人にはなれませんし姫神殺しの恋人はお断りです」
「おやおや…振られちゃいましたね…綴也君…」
「……」
ガラーシア達とミフルが盛り上がっている中綴也は弁当を食べている。
無視しているようで悪いが今は空腹を満たす事が最優先事項なのだ。
そして誤ってお弁当を処分しなくて良かったと改めて胸を撫で下ろした。
もしも処分していたら綴也は今こうしてお昼を食べてはいられなかった。
なにやらからかわれているが今は弁当を食べる事に集中した。
「おや…反応無しですか?」
「困っているんでよ…この手の話はされる事など殆ど無いですから…それと
…」
「それと…」
「これ以上はプライベートに関わるので言いません!!」
「あら…何か人に言えない秘密でもあるんですかね…綴也さん?」
何より断るにしても此処でミフルの性別を明かすのも秘密を明かすようなも
のなのでどうかと思えた。
そんな事はお見通しですよと言わんばかりの笑顔と共にミフルは綴也をから
かってくる。
ガラーシアと思命の二人が綴也に疑惑の眼差しらしきものを向けてくるがそ
れでも言わなかった。
ガラーシア達がミフルと綴也自身の色恋交じりの話で盛り上がるのは彼が弁
当を食べ終わりそれを止めてミフルが仕事に戻るまで続いた。
「さて…これからの予定なんですが何かありますかガラーシア?」
「本当にすみません…服装の事になるとどうしてもこの服装をどうにかした
くて少し冷静ではいられなくなってしまって…」
「大丈夫です…好きでもない格好でチヤホヤされてもそれは気分は良くない
ですよね…」
弁当を食べ終え真面目な話を始める前にガラーシアから綴也と思命に謝罪が
あった。
綴也もガラーシアことオルテンシアの男嫌いの原因を知り納得もしていた。
自身でも不思議だが自分も悪役を押し付けられイジメを受けていた事や過去
の告白という名の失敗を思いだしたからかどこかガラーシア気持ちがわかる
気がした。
だから彼女の問題に許されるなら協力したいと思っていた。
「本当はサクラのアイディアル復帰の為に協力してもらう筈だったんですけ
ど…」
「大丈夫ですこれくらい…ねえ?思命さん」
「私は綴也君がイリュシオンにいる間の監視役なので綴也君の行動次第です
ので基本的に綴也君が問題行動を起こさなければ仕事上は問題ありません」
とても正体が少し年上の少女とは思えない思命の発言にこういう大人になり
たいなあと綴也は思った。
「それでこれからなんですけど…彼女にも逃げられてしまいましたし…」
「何処をどう探したら良いんだろう…」
「え?」
「そうですね…探すにしても手掛かりは有名人ではあるんですけど…」
「え!?有名人なんですか?あの人?」
「ええ…彼女は…」
探すにしてもどうしたら良いのか解からない綴也の答だった。
謎の女を一番知っているのはこの中ではガラーシアだが彼女も直ぐに謎の女
を探し出せるのならば自分達に協力して欲しいとは言わないだろうと考えて
いた。
「あの…朝倉君?」
「はい?」
「今私と朝倉君の考えている事に何か食い違いを感じるのですが…」
「え?あの女の人を探すんですよね?」
と綴也は当然だと思いそう答えた。
だから綴也は思命と謎の女について考えていた。
「いえ…あの女の事は今日は諦めます」
「え?どうして?」
「手がかりが無いんですね…やっぱり…」
「え?」
「ええ、それに元々は私個人のそれもゲーム内の問題ですし朝倉君はサクラ
のアイディアル復帰の為に協力してもらう為に来て貰った筈なのに…」
ガラーシアは申し訳なさそうにしていた。
綴也は本来サクラ・レノンフォードにイリュシオンを引退させてアイディア
ルへの復帰をさせる協力の為に此処に来ていた。
だからガラーシアの言い分は間違いではなかった。
「ガラーシアさん…僕はあの女の人をもう一度探さないといけないって思う
んです」
「え?貴方がどうしてそんな事を…?」
でも綴也は彼女の言葉に逆らった。
謎の女の件が無ければサクラのアイディアル復帰の為の何か予定があったの
かもしれない。
それ以前の問題で綴也は彼女達に様々な疑惑を持たれているので説得もでき
るとは思わない。
ガラーシアの発した問い掛けは綴也の考えが正しいであろうと言う証明とも
言えた。
彼女自身の問題に綴也どうこう言う筋合いも無い。
しかし綴也自身が彼女の問題をこのままではいけないと思えた。
「服装が替えられればガラーシアさんもイリュシオンが楽しくなると思って
…」
「!!」
「その…ガラーシアさんはどこかイリュシオンが…楽しくなさそうな気がし
て…」
そう彼女はどこかこのイリュシオンが楽しめていない気がした。
彼女以前言ったイリュシオンに嵌っているという言葉に偽りがある訳では無
いと綴也も思う。
楽しめていない理由も素人の綴也でも解かる理由が目の前にあったからこう
言えた。
そしてもう一つ理由もあった。
「ですが…」
「何よりそんな風邪を引きそうな格好は直ぐにでも直せるなら直すべきです
!!」
「え!?」
「今は春でも冬は風邪を引くなんて物じゃないでしょう!!だから直しても
らえるなら今からでも探して直してもらうべきです!!」
コレは初めて彼女と出会った時に思っていた事だ。
彼女の格好はやっぱりゲームの中であってもも風邪を引きそうで放っておく
のは良くないと思えて仕方が無かった。
「……」
ガラーシアが何も言わずに呆然としている。
言い過ぎて余計に何か疑われたとも思ったがもう此処まで来たら駄目元で彼
女を説得しようと何か言えないか考え始めた。
「綴也君の言う通りですね」
「え?」
「思命さん?」
「本来は運営側の人間なのでシステム文句を言えない立場ですが桜羽思命の
中身は綴也君の意見に大賛成です…貴女の格好は例えゲームの要素として認
められても嫌ならば即座に何とかするべきです」
すると綴也の監視が仕事の筈の思命が同意を示した。
本人が言ったとおり桜羽思命のリアルである天宮 桜も彼女の問題を放って
おきたくない思っていた。
「ですが…」
「やはり…貴女はこの件に関して協力者がいなかったようですね…」
「え!?どういう事ですか?」
「その衣装…身内…知り合いからも替えるのを反対されてるんですね」
「何で!?ガラーシアさん嫌そうなのに!?」
「彼女も言っていたでしょう…今の彼女はその姿が人気になっているのだと
…」
「でも…それは…ガラーシアさんの人気って言うよりその姿の人気みたいで
何だか…」
そう言っている内に綴也もその先は口にするのも拒否したかのように言葉が
続かなかった。
誰かを好きになる時綴也自身外見を気にしないかと言われるとしないとは言
えない。
だがそれでも彼女の人気に何か自分も昔そんな風に人を見て泣かせてしまっ
た誰かの事を思い出して気分が悪くなった。
尚追記すると此処に綴也を良く知る誰かが居たら
「今の綴也さんが外見を基準にするのはするとしても最後の最後でしょう」
と苦笑交じりにフォローかツッコミか判断に困る一言を発していたかも知れ
ない。
「そうですね。だから綴也君…状況によってはまたガラーシアによる惨殺現
場を見る事になるかもしれません」
「ちょっと!?」
「ですがそれでもあの女を探し出してガラーシアの服装の呪いを何としても
解きますよ!!良いですね!!」
「は…はい!!」
思命も綴也に同意して多数決。
後はガラーシア当人の意思だけになった。
「全く…折角の予定が…台無しです…」
「すみません…」
「いえ…今回は私の所為です…ですが…」
「ガラーシアさん?」
「ありがとうございます二人供…では協力よろしくお願いしますね…誰も彼
も協力してくれる人が居なくて困っていて…」
その苦笑気味の感謝の言葉でこれからの予定が決定した。
「それで…あの人は何者なんですか?」
「住人名サチコ・ブレイカート…自称ファッションコーディネーターだそう
です」
「コーディネーター?」
「彼女自身が言っていましたがその人に最も似合う格好をさせるのが自分の
仕事であり使命だそうですよ…」
説明しているガラーシア自身が彼女の事をは納得している訳では無いと言い
わんばかりの声色だった。
「基本的にはゲームで使用される通貨をお代をもらってコーディネイトをし
ているそうですが偶に目に留まった人を最も似合うと思う格好に無償でやる
そうです」
「それも観客からの評価も良くて実はリアルのデザイナーさんなのではとい
う噂もある位で…」
「それだけ聞いてると…何だか…」
綴也は続きを言う事は無かった。
綴也も何も知らなければ続きを口にしていたかもしれないがそれ程鈍くも無
い。
「綴也君も知っている様に彼女は時折ガラーシアさんの様な衣装を一番似合
っていると言う理由で人に着せて着せられた当人には脱がせせられない様に
してしまう事もあるんです」
「あの女からすれば私はこの格好が一番似合うそうですよ…ウフフ」
「それは…駄目な事なんじゃ…」
「ゲームの一部として黙認されているようですね…やられた当人の心には配
慮が皆無の様ですけど…」
「だから彼女を嫌がっている人も少なくは無いのですが支持者の方が圧倒的
に多いんです…主に男のね…」
支持者達がガラーシアの姿を女神や希望と呼びながらも彼女を阻もうとする
姿とその凄さも目撃している。
だがその彼等の気持ちに綴也は共感は難しかった。
(あの時…恵理香先輩が怒って泣く訳だ…はあ…僕の馬鹿)
過去に称賛の言葉で誰かの心を傷つけたという失敗経験がある綴也からして
も彼等の理由は何だか気分の良いものでは無かったからだ。
「今あの人はどうしてるんでしょうね?」
「私に見つかってひと悶着起こした以上このエリアにいるとは限らないので
すが…」
「?このエリア?」
「知りませんか?このイリュシオンにはこの新天神含めて十三のエリアがあ
るんです」
「ああ!ミフさんから聞きました…驚きました」
「そうですか…聞いたら驚くと思ったんですけど…何だか残念です」
「驚いた時ミフさんはとっても嬉しそうでしたけどね…」
「その時の顔…見てみたかったですね…」
ミフルが聞いていたら録画しているので見たいと言ったら満面の笑顔で見せ
てその時のアレが良かった等の解説を始める気がした。
「つまりこのエリア以外に逃げてる可能性もあるんですよ…全くあのドラゴ
ンといいイリュシオンはどうしてこう…」
「あはは…」
先程のあの惨殺現場を見ていると違いが解からなくなりつつある綴也はどう
答えて良いか分からず笑うしか出来なかった。
「人の事は言えないかも知れない自覚はありますよ…一応」
笑う事でしか返せなかった綴也の心の内はガラーシアにはお見通しだった。
「すみません…」
「朝倉君は意外と素直なんですね…失礼であるのでしょうけど驚きました」
「素直ですみません」
「綴也君…それは責めてる訳ではありませんよ…さて…あの女はどうしたも
のか…」
「手掛かりは…無いんですよね?」
「あの女…実は何処のエリアから来ているのか解からなくて…所詮私は学生
に過ぎませんし調べても私目当てのガセネタばかりで…本当に男性が嫌にな
りました…リアルでもこの鎌で斬り刻みたくなる位には…」
「すみません…」
「それで彼女は此処では男性住人を見るとあの様な惨殺現場を作っているん
ですよ…全く…」
「自覚はありますけどこんな姿でしか寄って来ない男性には男性として問題
があると思うのですが…」
手掛かりは全く無い。
先ずは手がかりを掴む事だった。
彼女の見つけるために必要な手がかりを探すしか無いと三人供考えられる答
えは無かった。
一先ず綴也の荷物が入っているリュックをロッカーに預ける為に駅に向かう
事になった。
「ん?…これは…?」
「声?」
駅に向かいながらも何処から手がかりを見つけようと三人が話し合っている
と何か音が近付いて来たのが見えた。
「え!?」
「あれは!?」
それは人の集団だった。
男女混合の集団だった。
それが真っ直ぐに綴也達に向かっているのが見えた。
綴也はその時にイリュシオンの歌姫への挑戦者達を思い出した。
もしかして彼らが再び自分を断罪しに来たのかと思った。
しかしそれは間違いだった。
「見つけたわよ!!姫神殺し!!これ以上私のモデルに好き勝手させないわ
!!」
「「「ええ!?」」」
綴也に向けられる声を聞きその声の方を向いた瞬間綴也、思命、そしてガラ
ーシアの三人は一斉に驚き声を上げた。
何故なら迫り来る集団の先頭に立っていたのは今まで三人がどう探そうか考
えていた女だったからだ。
「皆!!行くわよ!!」
「「「「「おお!!」」」」」
女の掛け声と共に男女混合の集団が綴也達に各々武器を持って突撃してきた
のだ。
「何で此処にあの人が!?」
「解かりませんがこちらに向かっているのは確かですね…」
「うふふ…うふふ…」
「ガラーシア…さん?」
「まさか…貴女から来てくれるとは嬉しいですねえ!!」
先程逃がした事が悔しかったのか喜色満面の笑みになったガラーシアは鎌を
手に突っ込んでいく。
それから間も無く多くの首や手や足や血が飛んでいるのが遠巻きに見えた。
「ガラーシアさん!!」
「綴也君私達も…って綴也君?」
ゲームとはいえ人間の手や足や首がまるで打ち上げ花火の様に次々と飛んで
いる光景の為に綴也はガラーシアを協力を申し出たにも関わらず動く事が出
来なかった。
以前もっと恐ろしい光景は見てきた筈なのに。
先程も見てきた筈なのにそれでも綴也は目の前のゲームの中のとはいえ繰り
広げられる惨殺の光景に動く事に躊躇いが生まれていた。
或いは本当は最初からそうしたかったが今まで出来なくて今になって我慢の
限界が来て動けなくなったかも知れなかった。
「今の内に姫神殺しはそこで押さえ込んで…彼女を助けるまで!!」
「「「おお!!」」」
サチコの指示で支持者の集団が動けないでいる綴也達に向かって来た。
「姫神殺し!!」
「ッ!?」
「我らの希望をお前の好きにはさせない!!」
行動出来ずにいた綴也に突撃してきたサチコの支持者達の一人の剣が綴也の
片目を切り裂いた。
「ガッ!?」
「外した!?ならばもう一回!!」
襲撃者の剣が綴也に迫る。
綴也も大剣を抜いて受け止めようとするが明らかに間に合わない状況だった
。
「!?」
「し、思命…さん?」
剣が綴也に迫る前に思命が素手で襲撃者の剣を受け止めていた。
「今日から私がこの姫神殺しの監視を請け負っているんですよ…だからと護
っている訳では無いんですが…」
「貴方は…まさか!?どうして!?」
「何でよりにもよって貴方が!?運営は何を考えているんですか!?そいつ
は…」
「私を知っている住人ですか…自分で言うのも何ですが私の正体って知られ
てるのも考えものですね…」
支持者と思命が戦闘を始めた。
思命は襲撃者達を一人で相手にし始めた。
その姿に衝撃を受けたが今はガラーシアを見なければと惨い光景を見る覚悟
を決めて片目が潰された状態で綴也は残った右目でガラーシアを追う。
「はああああああああああ!!」
ガラーシアの近くまで来た時には彼女周囲は悉く斬り刻まれた人型の部品と
様々な色の液体と呼べる物で散乱していた。
湧き上がる恐怖や何時もとは違う競り上がりそうになるモノを押さえ込む。
「…よし!!」
頬を叩いて綴也は大剣を抜きガラーシアの援護を決意し走る。
「姫神殺しを押さえ込んで!!」
サチコの号令に生き残っていた支持者達が綴也に向かって来た。
「我らの希望を護れ!!」
「これ以上彼女をお前の為に苦しめさせるか!!」
「グッ!!」
まるで悪者から大事なものを護ろうとする戦士の様に綴也に沢山の支持者が
向かって来た。
「一体何が目的なんです?」
最早ガラーシアの周りには人型の部品が七色の液体に濡れて散乱していると
言うのが正確な表現といえる状況だった。
サチコには最早自身を護ってくれる支持者はいない状況だった。
「そうね…貴女を助ける事よ!!」
「この服装をどうにかしたら五体をしばらくバラバラにしたまま生かしてお
く程度で許してあげますけど…」
「それって私時間経過で死んでこれまでの私の苦労が水の泡になるから出来
ないわ…」
「そうですか…では…」
サチコはガラーシアに向かって走る。
ガラーシアはサチコに向かい翔けて鎌を振るう。
明らかに武器も何も持たないサチコが斬られる結末の筈だった。
しかしそれを突如人型の残骸から出現したサチコ支持者の一人が鎌をその身
で受け止めたまま鎌を封じた。
「な!?」
「サチコ様!!」
「今よ!!」
サチコの号令にガラーシアにファンタジーに出てくる様な円と三角が組み合
わせられた文様が出現した瞬間ガラーシアはまるで重さに縛られる様に動け
なった。
「コレは!?」
「流石に貴女でもこれくらいは直ぐには解けないでしょう!!」
「おのれ!!」
「さあ…貴女に掛けた私の魔法を解いてあげる!!」
「何!?」
サチコがその場に縛り付けられたガラーシアに向かい走る。
そしてその手でガラーシアに触れて何かを唱えたその瞬間ガラーシアが光に
包まれた。
「ガラーシアさん!?」
ガラーシアの居る方向に見えた光に綴也は思わず叫んで彼女の名を呼んだ。
光が止んだその先には鎌を持ったガラーシアの後姿があった。
「大丈夫です…ですが…」
綴也の呼びかけに答えたガラーシアの声が無事である事を示した。
しかしその様子は何かに戸惑っている様でもあった。
そしてガラーシアもサチコも対峙したまま動く事は無かった。
「…ガラーシアさん?」
「どういう心算ですか?貴女は?」
「…何が?」
「何故私の服装を解いたのですか?」
「え?」
ガラーシアの言葉の意味を最初綴也は解からなかった。
しかしガラーシアの言葉を聞いた瞬間に綴也達を襲撃し足止めしてきた集団
が一斉に男は目を閉じ手を合わせたり手を目に当てて大いに泣き出したり彼
女の服装が解けたの耳にして置いてまるで死んでいった誰かを悼む様な事を
やり始めて綴也は再び何がどうなっているのか分からなくなった。
「え?何!?何が…?」
「綴也君…確かバックに服が入ってましたよね?」
「思命さん!?服?それって…アイディアルウェアの事ですか?」
「それをガラーシアに貸してもらって良いですか?」
「良いですけど…僕のサイズだから…」
「この状況ではサイズよりも何か着させる事を優先です…服が解けたと言っ
たという事は彼女は恐らく…」
「あ!?もしかして!?」
思命の言葉で瞬間事情を察した綴也は思命に背中に背負ったリュックからア
イディアルウェアを取り出し思命に渡した。
そのまま綴也もその場の雰囲気から残っている左目を閉じてガラーシアがい
る方の反対を向いた。
泣き崩れ続けているサチコの支持者達は服を持って行く思命を妨害する事も
無くそのままに思命はガラーシアに向かい綴也のアイディアルウェアを渡し
た。
「改めて聞きましょう…何故私の服を解除しに来たんですか?…方針転換に
しても不気味すぎでしょう?」
綴也の服を着たガラーシアは問いと鎌をサチコに向けた。
着替えが終わった様なので綴也もガラーシアの声のする方へ見える目を向け
た。
綴也もガラーシアの近くに行こうとしたが周囲のサチコの支持者達が涙を流
しながら睨んでいたのでその場に留まる事にした。
ガラーシアは綴也でも解かる位に警戒していた。
彼女の懸案事項をその元凶とも言える人物が突然表れて自分が掛けた呪いの
様なもの解くからだ。
「決まってるじゃない…貴女をそこの男から護る為よ!!」
「………は?」
「…僕?」
サチコは綴也に視線を向けてその理由を堂々と言った。
サチコに大声で自分が原因と言われ手も綴也は何が何だか解からない。
「自分でコイツが姫神殺しと言っていたのに…失念していたわ姫神殺しと言
えば女性を手篭めにしようした話に枚挙が無い屑!!あなたのその美しい姿
にその男は引き寄せられたのよ!!そんな大事な事を忘れていたのよ私の馬
鹿は!!」
「……」
「そんな男に貴女を穢されるくらいなら貴女を護る為にその美しい姿を終わ
らせるわ!!そして姫神殺しを完膚なきまでに叩き潰して二度と貴女の前に
表れない様にみんなの前で誓わせる!!その為に来たのよ!!」
と初めてあった時の様に堂々とサチコは叫んだ。
「サチコ様!!」
「我らが女神は我々の心の中に!!」
「我らが希望を護る為に我らはこの痛みに耐えなければいけないのだ!!」
支持者達が同意の声を上げていた。
そして支持者達がまるで誰かの死を悼む様に泣いていた。
「……ええっと…」
自分が原因でガラーシアに好きでもない格好させていた女性がその格好を解
除してくれた。
自分の悪名が予想外にもガラーシアの懸案事項解決に役立ったのかもしれな
いと思うと複雑な気分になる。
(良かった…のかな?)
解決したのに何かが違う様なという考えに駆られていた綴也は頭の方で何か
が貫いた感覚がした。
「…え?」
それは見えなくなった右目の方からの衝撃だった。
自分が何かに打ち抜かれたと解かった時には綴也の意識は途切れた。
「う…ん…」
気が付いた時綴也は白い天井が写っていた。
それはイリュシオンで死ぬと何時も来る部屋の天井だった。
「あははははは!!」
ミフルの馬鹿笑いが目覚めと共に聞こえてきた。
「忘れた事は忘れた頃にやってくると言うヤツですね…あははははは!!」
「忘れてた?…何を?」
「いやあそれだけあのお嬢さんの困り事を解決しようとしていたと言う表れ
です…まあゲームの出来事でもあるし自分の問題を忘れて他人の困り事を解
決しようとするのは一種の現実逃避になりかねませんのでこのタイミングで
の狙撃はまあ戒めの一発として受けておきなさい」
「狙撃…は!!…うう…忘れてた…」
ミフルに言われて綴也はようやく自分を狙う狙撃手がいる事を忘れていた事
を思い出した。
ゲームでの事とはいえ自分が狙撃される可能性を標的自ら忘れるなどあるの
だろうかと思いたくなる。
「ああ…お目覚めですか?綴也君」
「思命さん?どうして此処に?」
「私は綴也君の監視ですから監視対象が此処に来れば私も此処に来るんです
よ…綴也君の監視は私のお仕事ですから気にしないで結構ですよ」
「す…へ!?」
「やっぱり今謝ろうとしましたね」
「うう…は!?」
思命に指摘されて自分はそんなに謝っているだろうかと思ったが綴也は自分
がどうして此処に来たのか思い出した。
「それで!?あの後ガラーシアさんは!?」
「ああ…無事なんですけど…一緒に駅のテレビを見ます?」
「え?」
「あの後の事が今駅の巨大モニターに放映されてますから」
何だか言いにくそうな表情の思命に綴也は新天神駅の巨大モニターのある広
場にに案内された。
そこには多くの人達がいた。
「うわぁ…すげぇ…」
「良いな…あの姿…」
「美しい…」
周囲の人達が称賛の声を上げているモニターを見るとそこには綴也のアイデ
ィアルウェアを着たガラーシアがあのサチコの支持者達をその鎌で切り刻ん
でいる姿が映っていた。
「「……」」
綴也は言葉が出なかった。
何がどうしてどうなってこうなったのか理由を聞くのはこういう時の大事な
使命のようなものの筈なのに今はその一言を出すのに惨殺現場の様子を見て
十分位かかった。
「あの…あの後…何が?」
「ガラーシアが着た綴也君のアイディアルウェア姿を見ていたサチコ・ブレ
イカートが……」
「?…思命さん?」
思命は言うのを少し躊躇ったが少し間を置いて続きを口にした。
「その姿を…美しいと…言いまして」
「……え?」
「その姿を貴女の姿にしましょうとまた再び服装を固定しようとして」
「ええ!?」
「でもそれは綴也君の服で現実から持ってきた服ですから服装固定されたら
ガラーシアは……」
「ああ…だから…あの様な…」
「まあ…サチコ・ブレイカートには逃げられましたけどね…」
綴也は躊躇いがちに話す思命の言葉とその意味を考えその答を見事導き出し
た。
「あの格好…スゲェな…」
「だよな…あの身体であの格好はある意味前の格好よりもすげぇな…」
周囲の主に男性達から称賛の声が上がっていたのが綴也の耳に入っていた。
「何か…悪い事しちゃったな…」
「どうしたんですか?」
「その…ガラーシアさんはそういう風に見られるのは嫌だと思うんです」
「ええ、世の男性達はそこを良く理解するべきですね…」
「僕の所為で余計にそんな風に見られちゃった気がして…」
「まあ…あの時は着替えがありませんでしたから…」
自分の悪名の所為でこんな事になったと思えて仕方が無かった。
それは総じて自分の所為でこういう事になっていると思った。
「ですが…今回は貴方がそんな顔をする事ではありませんよ」
「え!?ガラーシアさん!?」
声の方を向くとそこには映像に写っている当人がいた。
「ガラーシアさん…その格好…」
「ええ…これが私の本来の格好なんです…どうですか?」
「え?」
「似合ってませんか?この格好?」
今の彼女の格好は着物を思わせる格好だった。
本来の着物よりも部分部分は短いが短すぎない様にも見えない格好だった。
ガラーシアが姿を見せた瞬間所々で何か騒いでいる様に聞こえた。
感想を求められて綴也はそのまま感想を口にした。
「何だか…良かったなって…」
「?…良かった?」
「はい、その服装のガラーシアさん楽しそうだなって思って…」
「……」
綴也でも解かる位に今のガラーシアの顔からは楽しんでいると言うのが解か
る表情だった。
先程までとは明らかに違うといえる位だった。
「うふふ…貴方が切っ掛けとはいえそのお陰でこうしてあの服を解除できた
ので私としては積年の問題が片付いて晴れやかなのです。貴方はそんな気分
にはなれないのでしょうけどそれでも私は貴方にお礼を言いたいの…ありが
とうございます」
「い、いえ…」
「今日の一連の一件は私達の問題ですから貴方は気にする必要ありません」
「そうですよ綴也君…貴方が気にすることではありません。しかし私もよう
やく目の毒の様な格好じゃ無くなってホッとしましたよ」
「ですね…全く…」
思命の苦笑にガラーシアも苦笑と共に返す。
「朝倉君」
「あ!!」
ガラーシアの手には綴也が貸したアイディアルウェアがあった。
彼女が綴也の元を訪れたのはこれを返す為だったのを綴也は理解した。
「着心地は中々良かったんですけど私が着たら私を絞め殺すと言われました
からお返しします」
「ええ!?」
何やらとても物騒且つ不思議な事を言われながら綴也のアイディアルウェア
が返されてこうして突発的な捜査は突発的に終焉を迎えたのだった。
Mル…今回の一件で綴也さんの姫神殺しの悪名がどんな風に影響
するかと言う話です。
E香…本来ならば艱難辛苦を乗り越えて解決と言うのが王道だが
綴也君はその王道すら悪名の為にそれが通常よりも難しい
…と。
Mル…仮に解決しても悪名補正で悪い噂が広まったりどっかの糞
女が結婚する為の戦いの時も綴也さんが時代劇の悪代官の
様にこの糞女に手を出そうとしたと噂が流れましたからね
…全く。
E香…そこは完全に私が悪いのは認めるがポンコツ野朗にだけは
批判も批難もされたくは無いのだが…。
Mル…しかし今は差し迫った問題がもう一つあるのです。
E香…何だ?
Mル…作者の一話一話の製作速度が一話につき約十日掛かってい
るのです。
E香…どっちも重大な問題だな…。
Mル…遺憾ですが貴女に同感です…。
???…イロイロすみません。
Mル…少し説明しますが今回の綴也さんは実は少し珍妙な格好な
のです。
E香…私服でイリュシオンだからな…。
Mル…その上背中にリュックなので大剣はいわば出来のいいCG
見たいな物ですので大剣を背中に背負っている時は…。
E香…大剣が背中のリュックを貫通しているように見えるのか…
Mル…いや…可笑しくて可笑しくて…ウフフ。
E香…フフ。
T也…僕が言うのもなんだけどおかしな格好なのかな?
???…シュールな光景であるのは確実ですね。
T也…誰ですか!?




