家に帰れない時の対処法?
謎の女性にも逃げられて綴也はどうしたら良いか解からずにいた。
ガラーシアがあの服装をしているのはあの謎の女が彼女に一番似合うからだ
と無理矢理着せたという。
だからガラーシアはその服装を変えたい為に彼女を追っているという事だっ
た。
只何にせよ一度気分を変える為に何が良いかとその頭の中に弁当箱が浮かん
だ。
時間はどの位経っているかは解からないがそれでもそれでもお昼頃だろうと
綴也は思った。
丁度良い具合に空腹を感じている。
「あの…」
「さて…」
お昼ご飯を食べようと珍しく自分からの提案する事に緊張しながらも口にし
ようしたが思命に先を越されてしまった。
「お二人はこれからどうしますか?」
「これから…ですか?」
「ええ…もうこんな時間ですから」
と思命は上を指していた。
思命の指す方を向くとそこには満月が写っていた。
その周りに雲が月を運ぶように重なっているがどこか幻想的な風景に思え夜
空には星も見えている。
(わあぁ…)
以前に本で満月があると月明かりは星の明るさを消してしまって星が見えに
くくなってしまうというのを読んだ事があった。
しかしそれでも十分に思える星が夜空に散りばめられている様に見えた。
ゲームの舞台とはいえこの様な都市ともいえる場所でこんなにも星が見える
というのは凄いと綴也は少し感動した。
「星が綺麗ですね…ん?星?」
「ええ…」
「思命さん…もしかして…今…」
「ものの見事に夜ですね…」
思命の一言に綴也は現状を理解した。
空は青空ではなく黒い空で満月があり散りばめられた星が光っていた。
時間が夜だという事を意味している。
「よ、夜!?何で!?」
「あら?もうそんな時間ですか…」
「ええ…捜査の邪魔にならないか言うのを迷っていたのですが…」
「ど、どうしよう!!早く帰らないと…」
もうそんな時間になっているなど予想外以前だった。
自分達がそれほどに謎の女の捜索に時間を費やしていたとは思いもしなかっ
た。
お昼の弁当すら忘れるとはどれ程集中していたのか自分でも衝撃があった。
「そして非常に…言い難いのですが…」
「思命さん?」
「今駅の方でトラブルが発生して復旧までに翌朝までかかると…」
「え!?」
突然の思命の申し訳無さの篭った言葉が電車で帰るという選択肢を奪った。
それは思命の所為では無いのでそこまで申し訳無い顔をしなくても良いと綴
也は思ったが電車のお代以外持っていない綴也にとってそれは今日は此処か
ら帰れないという事を意味している。
最近こんな事があった気がしたが帰る事が出来ないというのは今までの比で
は無い危機であった。
「今日の所は宿を取って休んだ方が良いでしょう」
「宿…ですか?ってミフさん!?宿って…」
「ホテルですよ…ホテル貴方たち三人でホテルで一泊するんですよ」
「ええ!?」
「男女は別々ですけどね」
「当たり前です…」
「ほっ…っていや僕お金が…」
「いや…まさか時間を忘れて此処までイリュシオンに残ってくれるとは…こ
のイリュシオンの運営として嬉しい限りです」
「すみません。元はと言えば私がお二人を付き合わせたんですから私の今の
手持ちだと宿泊代だけでギリギリですけど…」
それなら綴也は断って自分が野宿をする事を考えた。
状況は困窮しているとはいえ宿代を出して貰うのはとても申し訳が無いと綴
也は思った。
何より何であれゲームなのだから安全な所を突如として現れたミフルに相談
するのは甘えている気がするが今回は頼るしかないと割り切って野宿をしよ
うと思った。
「「それはいけません!!」」
「え!?でも…」
「ほらほら…急がないと何処も満室になってしまいますよ」
ガラーシアと思命に迫力を持って駄目だしされて反論も出来ないまま二人に
手を捕まれてそのまま持ち上げられて綴也は連行されてしまった。
別に悪い事はしていないが周囲の目には正にこのイリュシオンで短期間で有
名になった姫神殺しが二人の美女に連行されている様に見えた。
その時の綴也は最近こんな事があったのを思い返していた。
「今近くで安くて開いているホテルは此処しかありませんでしたね…」
とガラーシアは呟いたがとてもそんな風には見えないホテルだった。
綴也もホテルという物を知らない程世間知らずでは無い。
しかしそれでもガラーシアがやって来た安いホテルは情報番組でやる特集で
出てくる高価なホテルの様外装と内装が施されておりホテルのスタッフもと
ても彼女が言う安いホテルのモノとは思えない。
「僕…やっぱり遠慮…」
「綴也さん…大人しく泊まるのとこの場で私のお胸を押し付けられて拘束さ
れるならどちらが良いですか?」
ガラーシアは宿泊代が限界と言っていた。
ならば自分が遠慮すればご飯代も出ると思い勇気を持って辞退しようとした
がミフルに笑顔で彼専用不可避の二者択一を迫られて綴也は断る事はほぼ不
可能になった。
胸を押し付けられればこのホテルの床を汚す事になりそれはそれでホテルの
スタッフさんに迷惑をかけると思ったからだ。
「何で…こうなってるんだろう…」
部屋に案内された綴也はそう呟くしかできなかった。
頭が混乱する間に此処まで来てしまった。
「まあ…男女別々にとってもらっただけ感謝するべきですね…」
身体は完全に女性の形だが実は男であるミフルの一言は正しい。
しかし何故ホテルに泊まらないといけなかったのか。
自身にとっては余りにも予想外どころかどうなったらこんな風に物事が展開
するのか心も身体もついていけていない。
「まさか…そんなに時間が過ぎてたなんて…」
「その上電車のトラブルですからね…」
「はあ…」
イリュシオンは未だに苦手と言えるがそんな事になるまでイリュシオンに熱
中してしまった自分を喜ぶべきなのか熱中しすぎて折角作った弁当を無駄に
してしまったと自分を叱るべきか迷ったが綴也はとにかくやるべき事として
部屋にある冷蔵庫に家からそして駅のロッカーから持って来た食べ損ねてし
まった弁当箱を一応冷蔵庫に入れ保管する事にした。
「神様ごめんなさい…」
翌日には廃棄してしまうので弁当箱の食べ物たちに手を合わせて弁当箱を閉
めた。
「お父様方には私から事情を説明していますから叱られる事はありません」
「すみません…ご迷惑をおかけしますけど無理矢理此処に連れて来たのはミ
フさんですよね!?」
「ああ…久しぶりに綴也さんのツッコミ!!この為に私は生きている!!」
「その為に!?」
「最近綴也さんのツッコミが不足しているので!!」
ミフルは断言した。
その断言に嘘がないとは言え彼との長い付き合いで綴也はミフルが自分をホ
テルに連れて来たのはそれだけでは無いだろうと。
「…って思ってませんか?」
「あ!やっぱりそうなの?」
「夜は狙撃と襲撃危険性があるんです」
「…?」
「夜は特に戦闘狂の幻想住人達がパーティ気分暴れるんですよ朝まで空腹で
戦う心算ですか?綴也さんは自分の立場を忘れてませんか?」
「……………あ!!」
そう言われると反論できなかった。
ミフルに指摘されるまで綴也は自分に狙撃や襲撃のリスクがある事をすっか
り忘却していた。
「はあ…お腹空いてるのに寝れるかな…」
「子守唄でも歌ってあげましょうか?」
「いりません…多分」
「寝れるまでおしゃべりしましょうか?」
「何でそんな事を?」
「綴也さん修学旅行行った事なかったですよね…その気分を…」
「もう寝ましょう…」
特にやる事も無いので綴也そのままベットに寝そべって眼を閉じた。
「……」
その直後に何かが聞こえた。
ミフルが何かを歌っていた。
歌の内容は解からないが先ほど言っていた子守唄の様だ。
(ふあぁ…眠…い…)
断った筈が耳に聞こえたミフルの子守唄らしき何かのお陰か不思議と空腹感を
気にする事も無く綴也は眠りについた。
「お腹すいた…」
子供が無邪気に言いそうな一言と共に目覚めた頃には朝の空があった。
しかし眠ったお陰か空腹以外は調子も良かった。
荷物を纏めて部屋を出て思命とガラーシアと合流しホテルを後にした綴也は新
天神駅に向かった。
「…ん?」
すると駅の大きな出入り口にある大きな巨大ディスプレイが情報番組をやっ
ているのが見えた。
それはその地域でしかやっていない所謂ローカル番組と言えるものだった。
その司会者が昨日の日付と共に挨拶をしていた。
「???、???」
綴也は首を傾げて何がどうなっているのか解からない。
「「ぷっ…」」
「ふふ…」
「??」
と後ろから笑い声が聞こえた。
綴也はそうしても自分がどういう状況かが理解出来ずにいた。
「ええ…っと…ミフさん?」
「ふふ…説明しますよ…ふふ」
笑いながらミフルは説明正しくはネタばらしを始めた。
「つまり…ドッキリ…だったと…」
「ええ…RPGにある宿屋に泊まると直ぐに次の朝になるっているゲームある
あるを擬似体験する遊びなんですよ…夜になった頃がお昼丁度でホテルに泊ま
って綴也さんが眠ったのは一時位でしたね」
それを聞くと嵌められたとはいえ綴也納得できたしまった。
綴也もゲームの経験はイリュシオンが初めてだが話を聞かない訳では無い。
「成程…RPGで宿屋に泊まるとあんな感じに…」
「まあ…幻想住人達が思いついて流行らせた遊びですけどね…イリュシオン
では体感時間を長く感じる様に出来る仕掛けがあるんですけど休日は特にサ
ービスしているので長く遊んでいる様に思えるんです」
「へぇ…え?」
ミフルが何気に言っている事は途轍もない技術がこのイリュシオンには使わ
れている事だけ綴也は理解できた。
しかし感じる時間を長く感じさせる等どんな事をしたらそんな事をする事が
出来るのかイリュシオンと言うゲームには綴也は驚かされてばかりだった。
「ちなみにお金の方は私が出してますので綴也さんは気にしなくても大丈夫
です」
「そうだったんですね…」
「私が発案してお二人に協力を仰いだんですからそれ位はしますよ…この遊び
はイリュシオンに来たばかりの人にやる歓迎目的のサプライズでよくやられるんですよ」
「ほっ…良かった…お弁当処分しなくて…」
そうしてようやく全てを飲み込めた綴也ホッと息を吐いた。
そしてテレビに写っている時間を見る。
今日の日付で後十分で二時。
お昼ご飯の時間としては少し遅れ気味だった。
「ミフさん…時間が…」
「まあ…タイミングは悪過ぎましたね…あはは…」
何にせよ綴也は冷蔵庫から取り出したばかりの弁当箱を開けて少し遅めのお
昼を取る事にした。
ちなみにガラーシア達はホテルで綴也のドッキリを実行中にホテルで食事を
済ませていた。
Mル…まあ…家に帰れない時は泊まる所を確保しておく事は意外
と大事ですよね。
T也…解かるけど思命さんに言われた時本当に帰れなくなったと
思ったよ。
Mル…まあ協力してもらった彼女には後で改めてお礼と謝罪はし
ますよ。
T也…でもRGPの宿に泊まるとゲームだと直ぐに朝になるけど
実際には一時間位経ってたんだね。
Mル…まあ実際はそんな物ですけど幻想住人達の簡単に出来るイ
リュシオン特有の遊びなんですよ。
しかし凄いスケジュールでしたね。
T也…スケジュール?
Mル…ええ…朝九時にスポーツセンターでサクラ嬢のアイディア
ル復帰の相談を受けてそこから十時半にはイリュシオンに
向かいそこから当然の走査線で連続惨殺現場に遭遇し擬似
的とはいえ夜のホテルに高校生の男女がお泊りとか後半は
ドッキリとはいえ高校生がやって良いかどうかですよね。
T也…そうなの?
まあ弁当は元々イリュシオンに行く心算だったから準備済
みだったけど後半はミフさんが仕掛けた事ですよね?
Mル…ホテルの部屋で私が全裸になって綴也さんをからかおうと
思っていたら直ぐに眠ってしまいましたし…よよよ。
T也…全裸になって何する気だったんですか?
本当に夜だと思ってたしご飯も無いし寝る以外に出来る事
は無いじゃないの?
結局ミフさんは何でこんなドッキリを仕掛けたの?
Mル…それは秘密です。
T也…秘密があるって言ってるような物だよねそれって…。
Mル…秘密があるという事くらいは告白しても良いんですよ。
目的は達成しましたし結果も良好ですし…。
T也…はあ…。
Mル…ウフフ(慈愛の微笑み)
???…簡単に言えば惨殺事件を二回も目撃してメンタルに傷を
追うかもしれないとメンタルチェックの為にあんな小芝
居を仕掛けたんですよ。




