平和?の為に?
「シアちゃん…綴也君は?」
「火傷も無いそうなのでそのまま帰られましたよ…」
「そう…それにしてもPDであんなに無茶するなんて…」
「ビックリだよね…」
綴也が学校を出てシアは生徒会室に戻っていた。
話題は先程の焼却炉での綴也の事だった。
先程の綴也の事は直ぐに広がった。
それは焼却炉に手を突っ込んだ生徒がいたからというよりも綴也が何でそん
な行為をしたのか故に話が広がるのも速かった。
「前に聞いたけど初恋の人から買ってもらった玩具を改造したそうよ」
(それだけ慌てたという事はそれだけ重要な物なのかしら…)
「初恋!?本当に!?」
(何か隠されてるかも知れないと?)
「当人が普通に答えてビックリしたわよ…」
(その可能性はあるかも知れないわね…)
「それも凄いわね…」
(火傷するかもしれないのに手を突っ込んだという事は…PDが壊されたら
都合が悪いって事?)
「凄いですね…」
(それ以外考えられないよね?…そんな初恋の人の宝物をPDにするとか信
じられないし…多分嘘なんじゃ…)
会話をしているようだが紙を見せているのが本当の会話内容だった。
彼女達は綴也の話をする時は何気ない会話をカモフラージュして筆談で綴也
に対する話をする事にしている。
綴也に盗聴されていないか警戒の為である。
何より綴也の言動には信じる証拠も無かった。
今回は綴也の学園からの追放による学園の平和維持という目的を持つ生徒会
ににとって今回の綴也の日曜日の事件と今回の行動は明らかに見逃す事は出
来ないものだった。
「だからって自分で焼却炉に手を突っ込むなんて…無茶するね…」
(それにあの男は今日はあの天宮撫子に何かしようとしたって目撃情報も来
てるし…)
「そうね…全く」
(そう…)
「その上ナンパされてる女の子を助けようとして間違えられて倒されて…」
(会長?どうしたのですか?)
「本当よね…」
(大丈夫…なんでもない。あの男が何かする前に何とかしないといけないわ
ね…)
本来ならば綴也をこのタイミングでも退学にする事も可能では無いかとサク
ラは思った。
何せ綴也も女子に言い寄った集団は姫神殺しの仲間だという証言もあった。
これ以上に彼の行動で犠牲者が出る前に手を打ちたかった。
しかし今回は証拠も無いしそれは誤解であると電子製命体ミトラからも情報
が齎されていた。
だが学園の上層部もサクラ達生徒会もそれを鵜呑みにする事は無かった。
ミトラが裏をかかれたとも思えないが何があったのかは気になる所だった。
今回の綴也の停学は彼の行動を制限しミトラに監視してもらう為にも学校の
上層部にサクラ達が直訴したのも含まれた。
一応綴也はこの学校の生徒会に属しているがそれは彼を監視するのが目的で
あり監視装置もあるので生徒会で監視する事にしたのだ。
「まあ…停学になったとはいえ生徒会のメンバーですから見守りましょう」
(このままでは埒も明きませんね…実は四日後彼と会う約束をしたのでその
時に話をしてみようかと思いまして)
(シアちゃん!?)
(副会長!?)
シアの一言いや一文で会話が途切れた。
その手段は彼との接触の機会が増加してしまいリスクが大きいので本当に必
要な時までそれは慎重にするべきだと彼女達も考えていた。
しかし今ある情報では綴也の悪行を証明し退学させて学校の生徒達を守るの
事は不可能だった。
「まあ…三日間男手がいませんが皆さん頑張りましょう」
(今がその時だと思いますよ…)
「そうね…」
(お願い…でも…無理はしないでね…)
「では…さっさと仕事を終わらせてイリュシオンに向かいましょうか?」
(大丈夫です。ミトラさんの妹さんにも立会いの下ですから…それに助っ人
も頼もうと思いますので…その後は彼をイリュシオンに連れて来ますのでそ
ちらの方もよろしくお願いしますね)
「そうよ…ゴールデンウィークにたっぷりいれるけど仕事も無いのにイリュ
シオン行けないなんて嫌よ」
(分かったわ…イリュシオンの方にも他の住人達に注意を呼びかけておくわ
…)
「そうですね。ところで…サクラ」
「?何?」
「そのゴールデンウィーク如何するおつもりなのです?」
「な、何よ?いきなり…」
「これを機に朝倉君のお父様への告白というのも考えてはいかがでしょうか
?…と思うのですが」
「な、ななななななななな!?何でそうなるのよ!?」
「いいえ…貴女の恋の決着は早いほうが良いと思いましてね」
「「「「うんうん…」」」」
「な、何で皆して同意するのよおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そうして話はサクラの恋の話になっていく。
先程まで切迫していた話をしていたとは思えないほどに多少問題がある恋の
話が盛り上がりながらも仕事をしていくのだった。
彼女達は高校生で学校の平和の重大な問題を抱えていてもそんな話に花が咲
いてもおかしくは無い。
その恋に多少…問題があったとしても恋の話もそこそこに仕事に戻るのだっ
た。
「男手って…とても貴重だったわね…」
「ええ…」
「そうね…」
「そうですね…」
「うん…」
とその後直ぐにサクラが呟いた瞬間彼女達は同時に肯いた。
彼女達にとって監視対象であるが共学になってからの生徒会の仕事の忙しさ
を考慮すると猫の手も借りたいくらいの猫の手くらいの価値はあったようだ
った。
(うーん)
綴也は背後に視線を感じた。
振り向こうとも思ったが辞めた。
何度か振り向いた時に茶色のポニーテールが見えていた。
誰がいるのかも確信がある。
(やっぱり…そうなんだよね…はあ…)
一ヶ月も経たずに停学処分になり家族に関する問題が増えるかも知れないと
どうするか溜息が出そうになる。
かといって背後にいる彼女の行為も決して間違ってはいないだろう。
彼女達の想い人が結婚しているという問題は今の都市日本の制度と母達の話
し合い第である。
しかし綴也は自分と歳が変わらない母親が出来るのには抵抗があった。
サクラには振られたからと言うのもあるかも知れないが彼女のどちらかが父
と結婚し弟か妹が出来るかもしれないというのは想像すると喜ばしい事半分
良いのかな?という気持ち半分だった。
自身の知り合いには年の差と関係性を越えて結婚した人がいるがそれでも考
えてしまう事は辞められなかった。
(まあ…何にせよ邪魔だけはしない様にしよう…)
まだそうなると決まった訳ではないし彼女達も父に思いを伝えた訳でもない
ので考るのをここまでにした。
これから停学になってしまった事を両親に報告しなければいけないので少し
ちょっとだけ気まずそうに綴也は家に入って行くのだった。
「はああああああああああ…」
綴也が家に入るのを見て少女は息を大きく吐き出した。
「何も…言えなかった…」
そう少女は綴也に用事があった。
少女は綴也に謝罪しなければいけないと思うことがあった。
だから綴也に声を掛けた。
がどうしても声に出来ずに逃げてしまった。
彼女には謝罪の気持ち以外にも抱いている思いがあってその思いが混雑して
彼から二回も逃げた。
彼女は知らぬことであるがそれが綴也の停学が決定した決定打となった。
そうして彼から逃げる様に去った彼女はもう一度彼に声を掛けようとの後を
追う様な形になり彼の家らしき建物まで声を掛けられずに着いて来てしまっ
た。
そしてその家は彼女にとってとても重要な建物だった。
「やっぱり…そうなんですね…はあ…どうしましょう」
少女…天宮撫子は再び溜息を吐いた。
E香…まさか盗聴まで疑われている程信用が無いとは…。
Mル…まあこれが綴也さん以外の人間ならば効果はあったかもし
れませんね。
E香…どういう意味だ?
貴様ならばそんな事関係無しに盗み聞き出来るから関係な
いと?
Mル…それもそうですが綴也さんに盗聴という手段を考える頭が
あるとお思いですか?
E香…無いな(即答)
Mル…生徒会の面々は正義感と善意で動いている筈なのに…
E香…生徒会の子達は学校の生徒を守ろうとしている下手な教師
よりも立派な生徒会の筈なのに…。
両者言葉が見つからずそのまま沈黙…。




