日曜日明けて…。
「成程…それでイリュシオンに来れなかったのね…」
「はい…」
綴也は日曜日の出来事を全て可能な限り簡潔にかつ正確に説明した。
時間は十分も経っていない。
しかし自分で説明していて日曜日に何でこんなにトラブルが重なったのか不
思議でたまらなかった。
「綴也君…とっても解かりやすい説明だっったわ…」
「ええ、ほぼ百点満点と言っても良いですね」
「あ、ありがとうございます」
「でも一つだけ…良いかしら…?」
「会長…?」
「何で夢で私が化け物じみた姿になって出てくるのよ!!」
「す、すみません!!」
「更に綴也君に斬られてるし…」
「すみません…あの夢の中だけど必死だったんで…」
「PDが壊されそうになったからって躊躇いも無く斬ってるし…」
「それは本当にすみません…」
「フフフ…」
「何笑ってるのよ…シアちゃん?」
「いいえ…そんな事を言ったら朝倉君の夢の中のサクラは相当凶暴だったじ
ゃないかしら…朝倉君最悪殺されてましたよ」
「そ、それは夢の話!!現実の私はそんな事やらないわよ!!」
「朝倉君も大変でしたね…夢の中とはいえサクラに殺されかけるなんて…」
「そんな…僕だって会長には殺されそうな動機に心当たりが有り過ぎて…夢
の中だけど何とかしないとって思って…」
「だからそんな事しないわよー!!」
夢でとはいえサクラを斬ってしまったので気分を害してしまったのならば綴
也は謝罪するしかない。
しかし夢と言うものは自分で望んだ夢は見れないものなので如何する事も出
来ない物だった。
しかし四月も終わりなのに咲いている桜の木を見に公園に寄り道をしてゆっ
くりしすぎたと綴也は反省した。
うっかりうたた寝してしまい怖い夢をみて目を覚ませば自分を探しに来た電
子製命体膝枕の上で夜の九時近くになっていた。
昨日は色々あったので疲れていたから今も咲いている桜の花を見て心を洗お
うとしたが寄り道せずに帰れば良かったかもしれないと少し後悔している。
そのお陰で今日もお家の手伝いを相談しなければいけない。
家の手伝いをする事は悪い事ではないとは思うが何かの罰でやらされるのは
良い気分ではない。
「まあ…半日大変だったみたいね…」
「はい…って信じてもらえます?」
「私そんなに信じてもらえないかしら?シアちゃん?」
「そうですね…付き合いが一ヶ月過ぎてないとはいえ信じてもらえないのは
悲しいですね」
「す、すみません」
生徒会室の秘密の会話を聞いているからとは言えそんな事を言うのは流石に
サクラも気分が悪いのだろうと綴也は頭を下げる。
彼女達も悪意で自分を疑っている訳ではない。
悪人みたいに言うのは違うと思い綴也も素直に謝罪する。
「昨日の一件もとい三件でミトラさんから連絡を受けていましたので…」
「まあ…念のために当人にも話を聞いてみようって事で呼んだのよ…」
「そうだったんですか…って夜の事もですか?」
「綴也君を呼んだのはこの件を聞くのともう一つ理由があるの…言っておき
たい事があってね…」
「言っておきたい事?」
「綴也君…貴方の停学が検討されてるわ」
「え!?ええ!?何で!?」
停学とは校則や社会の倫理に反した生徒を罰するシステムの一つである。
しかし何故自分が停学を検討されているのか解からない綴也は思わず立ち上
がり叫んでいた。
「お昼の事件の時にうちの生徒で目撃者がいるの…その生徒曰く君も女性を
ナンパしようと奴らの一味なんじゃないかって…」
「そんな!?」
「君が通りすがりの美少年に悪そうな男達と一緒にぶっ飛ばされたのも見て
たって…」
「いや…確かに仲間と勘違いされて気絶させられましたけど…あの後その人
には誤解だと解かって貰ってごめんなさいを言ってもらったし…」
「一緒にぶっ飛ばされたからナンパ集団の一員に見なされたのでは…彼等は
朝倉君の仇名を利用して同様の犯罪を繰り返していたそうですから…」
「…」
まさかあの場を学校の生徒が見ていてあの男達と仲間と思われていたなんて
思いもしなかった。
そして昨日逮捕された男達はミトラの言う通り綴也の仇名を悪用していた。
逮捕されたのは本当に良かった事なのだろうと綴也は実感した。
「納得は出来ないだろうけど覚悟はした方が良いかも…」
「そう…ですか…」
「あと…停学は自宅停学で停学の中はPDも没収されるかも…」
「ええ!?PDを没収されるのは絶対に嫌です!!お姉ちゃんが買ってくれ
た宝物なのに!!」
「お姉ちゃんって…初恋の?」
「まあ…それはそれは明日から一週間くらいでしょう…ゴールデンウィーク
挟むから実質三日間位になるかも知れませんね…」
更に予想外の事態を告げられたが綴也は一先ず昼食も生徒会室の用事も終わ
り教室に戻る為に生徒会室を出た。
「それじゃあ…失礼しします」
「うん…お昼に呼び出してごめんね…」
足取りは何時ものイメージ自縄自縛歩きも含めて更に重く感じる。
重い足取りで綴也は教室に向かっていった。
「それにしても…ゴールデンウィークかぁ…」
「休みの間の平日も全部休みにしてくれたら良いのに…」
「気持ちは分かりますが休みは適度に取るべき物ですよ突如長い休みを取ら
されても逆に疲れが溜まるだけです」
「そうですね…私はお休みは多すぎても良くないと思います」
「そうね…逆にルージュみたいな娘は休みが長すぎるとダラケそうだし」
「そんな事は無いわよ!!そんな事は!!」
綴也が去った生徒会ではこれからの休日の会話が始まった。
「まあ…休みでもそういう自己管理は大事って事ね…」
(皆、あの男の様子如何思う?)
「そうですね…休日中は自己管理が疎かになりやすいといいますし…」
(全く怪しい所はありませんでしたね。尤も私達は刑事さんでも心理学者で
もありませんから分かりませんけど…特に何かを隠している様な様子は無い
ように見えますけど…)
「だからルージュは気をつけるように!!」
(そうね…でも…)
「だから!!何であたしばっかりなのよ!?」
(全然怪しくないから逆に怪しかったわね…)
その会話は少し変わっていた。
それはメンバーが会話をしながら文字を書き書いた紙を他のメンバーに見せ
てそれを見たメンバーはそれに対する答を書いて見せる。
「私達よりフラウスやシーニィの方が解かっているのでは?」
(ですが彼の話の内容とミトラさんの話の内容に矛盾は無い様に見えますけ
ど…)
「それは…」
(…)
「そうね…」
(…)
「二人供!?私達友達でしょう!?」
(何で紙の方まで…なの!?)
「「友達だから言ってるの!!」」
((友達だから言ってるの!!))
「…すみません」
(もしかして…あのイケメンさんを騙す手段を持ってるとか!?)
この会話はカモフラージュで実際は筆談の方が本命だった。
学校で綴也が自分達の会話を盗み聞きしない様に何気ない話に重要な話を紛
れ込ませて少しでも盗み聞きのリスクを軽減しようと言うサクラのアイディ
アだった。
「まあ、ルージュをいじっているサクラも私も休日になるとどうしてもイリ
ュシオン優先にしてしまうので自己管理が疎かになりやすいんですよね…」
(それは無いでしょうあの電子製命体のセキュリティを破ったらそれは姫神
殺し以上の事件です…世界中が大騒ぎになりますよ)
「そうね…つい休憩せずにイリュシオンに鐘が鳴るまで居続けてたって事も
あって自動転送を付けたわ…」
(電子製命体のセキュリティを人間が破る…やりそうで怖いわあの男…)
「サクラの場合は付けられたのでは…?」
(監視を始めて一ヶ月も経っていないとはいえ彼は未だに尻尾を見せていま
せんよね)
「そ、そんな事は無いわよ自分で自主的に気付いて…」
「「「「「…」」」」」
「…何よ…その疑いの目は…」
(そうなのよね…今は監視を怠らないようにする事が最善なのよね…)
「嘘つきは何とやらの始まりで…今は姫神殺しの始まりだって言う人も…」
(あの男の本音を力尽くでも聞けたら良いのに…)
「いないわよ!!そんな人!!」
(暴力は駄目よ…それこそそれを隙に何を仕掛けられるか分からないわ)
「冗談です」
(ミトラさんが目を光らせている内はまだ安全と言った所ですか…)
筆談での秘密会議は現代にしては少し古めかしい方法とは思ったがこれが朝
倉綴也に対する対策を練るのに尤も適切だとサクラは判断した。
紙は後で幾らでも処分が可能であの男もこんな方法で自分の対策を話してい
る等思いもしないだろうと。
「所でゴールデンウィークにサクラに一つ聞きたい事があります」
(所でゴールデンウィークにサクラに一つ聞きたい事があります)
「な、何よ?」
(何よ?)
「朝倉君のお父様に告白なさるのですか?」
(朝倉君のお父様に告白なさるのですか?)
「「「「じぃー…」」」」
((((じぃー…))))
「しないわよ!!」
(筆談の意味がなくなってるわよ!!今はそれ所じゃないでしょう!!)
こうしてサクラ達は楽しい会話を交えて朝倉綴也対策の秘密の筆談会議を続
けた。
「はあ…やっぱり日頃の行いが悪いのかな…僕?」
まさか停学になるかもとは思いもしなかった。
自分が停学覚悟であの男達を実際に殴っていたらそうなっていたかもしれな
い。
ミトラに言わせれば最悪殺人未遂だったと言う。
だがあの綺麗な少年に止められてそうならずに済んだ。
あの少年には感謝するしかなかった。
しかし世界はそれで終わってくれる様に優しくは無かった。
自分もあの少年に誤解されたからとはいえ殴られたので悪者扱いされている
とは思いもしなかった。
ただその少年お陰であの男達も捕まったのでそれは良かった事なのは解かっ
ているが何だか自分の処分が検討されていると聞いていると折角の気分も半
分寂しかった。
「はあ…ん?」
自然と出る溜息を吐きながら歩く綴也の目の前にサクラの生き写しと言って
もおかしくない茶色の髪と眼をした少女が歩いていた。
「天宮さん?」
「ひゃ、ひゃい!?」
「え?天…」
「ひ、ひつれいしましたぁぁぁぁぁぁ!!」
彼女天宮 撫子は綴也を見るなり去っていったいや逃げ出した。
「何で…?」
走っていく彼女を見ていろんな意味でそうとしか綴也は言えなかった。
そんな綴也に周囲からの視線が集中していた。
(僕…何もしてないんだけど…)
視線が突き刺さる中綴也は教室に戻った。
教室に戻るとクラスメイト達が綴也を見るなり視線が合わない様に話をして
いるが綴也の停学が検討されている事と先程の天宮撫子の事がちょくちょく
聞こえてきた。
綴也は気まずい空気の中ただ停学にならないようにと切に祈るしか出来なか
った。
「あ!!門限破りの罰の事相談するのを忘れた!!」
五分前の予鈴と共に大事な事を思い出し口に出した。
がそれは放課後にするしかないと綴也は午後の授業の準備を始めた。
T也…僕、日頃の行いが良くないのかな…?
Mル…私の所に来るのを怠るからそうなるのですよ。
T也…そういわれるとそんな気がしてくるから少し怖いよ…。
Mル…まあまだ停学になった訳ではないのですから此処は学校か
らの判断を待つことです。
それまでは何時も以上に良い子にしていることです。
T也…良い子って…具体的に何をしたら…
Mル…お家のお仕事を手伝うとか?
T也…それは今日からやるだろうけど学校じゃ出来ないんじゃ…
Mル…揉め事を起こさない様に注意するとか…
T也…自分から起こしてる心算は無いけど…気をつけます。
Mル…誰かに悲鳴を上げられて逃げられたらアウトと思い覚悟を
決める事です。
T也…ん?
ちょっと待って…。




