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悪役対談







綴也は新天神の街を歩いている。

しかし綴也にあれだけ向けられらた狙撃は無かった。

今日苦しめられていた狙撃手に勝って街を歩く事を出来た訳ではない。

今街は真ッ平らになったからだ。


(やっぱり…ゲームの中だなんて信じられない…)


初めて此処に来た時こんな光景を見た時は何も知らなくて本当に混乱しそう

だった。

建物の残骸、破片、理解したくは無かったが勉強したために理解した人の体

の破片。

此処がゲームだと教えてもらって初めての時の様に混乱はしていない。

今日は見ていないが人の体の破片だろうモノも見たらこのゲームの演出の一

部なのだと自分に言い聞かせて何とかする心算だった。

だがそれでも何度見てもこれがゲームの光景なのかと疑いたくなる。

綴也は先程まで自分に向けられた狙撃をいかにして突破しようと考えて根競

べしようと思い立っていた。

しかし再び狙撃に挑もうと彼の目に飛び込んだのは赤い髪と眼の少女と竜と

呼ばれる巨大な生き物が繰り広げた戦いだった。

両者の振るう剣が建物をまるで豆腐の様に切断し大地を切り刻んだ。

そして最後には此処は真ッ平らな大地になった。

残骸が無くは無いがこの光景を見渡す限り残骸と呼ばれる物は無いと言うに

等しかった。

かつて誰かが言っていた言葉が現実にあった。

その言葉の主は笑い話の様に面白そうに言っていた。

綴也もそれを受け容れようとしているが上手く受け入れられなかった。


(撃っては…来ないね…)


綴也は外を歩きながらもそんな事を警戒ある意味期待をしていた。

だがそんな気配は無かった。

そもそもそんな気配を読むなどそのような真似が綴也には出来ない。

この様な光景では狙撃手は狙撃は無理と判断して街から退避したのかあの二

人の戦いに巻き込まれてゲームオーバーになったのかどちらかは解らないが

今日はもう狙撃は無いのかもしれなかった。


「はあ…」


綴也から溜息が漏れた。

この光景を目にするまで狙撃手とどちらが参るか根競べをしている心算だっ

た。

相手がどんな人物か解らないしもしかしたら姫神殺しを嫌うような幻想住人

の可能性はあったが少なくとも綴也は謎の狙撃手に対して仕返しをするよう

な気持ちは無い。

姫神殺しの仇名の自覚を問われるかもしれないが自分と何であれ対決をして

くれてアイディアルを思い出せて少し嬉しいという気持ちの方が強かった。


「はあ…」


だがその気持ちも今目の前にある光景の様にまるで嘘だったかのように感じ

た。

先程まで感じていた気持ちが全てこの光景の様に跡形も無くなった様に思え

この世界に感じていた恐怖というものが再び綴也の心にのしかかりそうだっ

た。


「…ん?」


溜息混じりに歩く綴也の眼の前に大きな物があった。

それはあまりに大きいのでどうあっても眼にとまるものだった。

それはドラゴンと呼ばれる最近覚えた空想上の生き物。

しかしこの者も幻想住人にしてサクラと戦いを繰り広げてこの光景を作り出した者の一人だった。


「…」


それを目にした綴也は自然とその巨大な幻想住人の元へと歩いていた。

街が真ッ平らなのでその巨大な生物の傍まで歩くのに時間は掛からない。

綴也がその姿を見て五分もしない内に綴也はその巨大な生物の目の前いや正しくは目の下についていた。

巨大な幻想住人は目を閉じている。


「あの…」


綴也はそのドラゴンを見て声をかけた。

ドラゴンはその眼を開ける。

その眼は人間ならば見ているだけで圧倒されて動けなくなるだろう。

もしも現実にそんな生物がいたらそんな事をすればどうなるかは解らないが

声をかける等と言う選択肢が浮かぶ事は無いだろう。

しかし綴也はそうした。

この光景を作った元凶の筈なのに何故か気付いたら声をかけていた。

しかも思ったのは何で声を掛けたという事でその事に危険な事をした等の後

悔は一切無かった。


「ん?貴様は…」

「こ、こんにちは…」

「この光景を作った我が言うのも何だがこの光景の中こんな事を言えるの

は何と言うべきか…」

「あ、あの…」

「フッ、まあ良いだろう…久しいな少年…」

「はい」

「しかし住人になったというのに姿が変わっていないようだが変身をしてい

ないのか?」

「この間デスペナルティで姿も名前もこのままの姿でプレイする事になっち

ゃって…」

「メモリアル記念か!?それに当たったか!?」


ドラゴンと呼ばれる生き物が綴也の姿と理由で大笑いする。

しかし突如として悶絶しだした。

先程の戦いでそれだけの傷を負ったようだった。

二人はそれほど親しい間柄ではない。

綴也とこのドラゴンという住人は綴也が初めてこの街を訪れた時に街を破壊

するドラゴンに綴也が立ち向かいドラゴンの両手両足両翼を切断し顔を切り

刻みそれをドラゴンと仇敵とも言えるヴィヴィアンヌことサクラに止められ

た。

綴也に思い切り傷を負わされた事をドラゴンは怒っていたし綴也はそれはゲ

ームの事とはいえ謝罪した。

一応の決着はしているが二人はいわば敵として相対してもおかしくは無い筈

だった。

だがドラゴンは綴也を気に入ったと言いイリュシオンをしないかと誘って来

た。

その時の手を差し伸べるドラゴンの雰囲気は戦っていた時とは全く違う不思

議な温かみを感じた。

その時の事が綴也にドラゴンに声をかけるという選択をさせたのかも知れなっ

た。


「それで…私に何の用だ?」

「すみません。ドラゴンさんを見てそれでただ声を掛けようと思って…」

「お前は只でさえ満身創痍の我を腹を捩らせたいのか…」

「ご、ごめん」


ドラゴンが腹を抱えて明らかに笑うのを堪えていたが再び笑い出しそして再

び悶絶する。


「此処にいるのは前に言ったかも知れんがあの女と戦うか修行の一環でこの

街を破壊しに来るのだと…」

「言ってた気はするかな…」


そう、幾らゲームの中で運営もプレイヤーも各々の解釈で納得もしているか

もしれないとはいえ綴也もこんな破壊された街の光景を見るのは気分の良い

ものではない。

止めたいという気持ちはある。

しかしイリュシオンと言うゲームも何も知らなかったとしても実際止めよう

として相手に本当の殺意を抱いた事に目の前のドラゴンに申し訳ないという

気持ちとまたああなるかもしれないという恐怖があってどうしたら良いのか

複雑な気分になった。

これはゲームなのだから気にするのがおかしいのか悩んでしまう。

綴也は気付いてないがそんな表情をしていた彼を見てドラゴンがそれをどこ

か微笑んでいるようにも見える表情をしたいた。


「これが我のプレイスタイルであるとそれが人気になったのとそれを公認さ

れたからだな?」

「公認?」

「ああ、イリュシオンの運営が認めた悪役と言う奴だ」

「それって悪役生会って言うギルドみたいな」

「その名前を知っているのか…いや我は彼らの仲間ではない…このゲームの

プレイヤーでもあり運営が認めたボスキャラクター…それが我だ」

「それって…凄い事なんじゃあ…」

「まあ街を破壊しているので我は建造物製造に燃えている一部の住人からは

物理的評論家なる渾名を付けられているのだ我に破壊される程度ではまだま

だだとそんな奴らもいてな…」

「え?ドラゴンさんに破壊されない建物ってあるの?」

「あるぞシステムで破壊できない物としてではなくそんな建物と作った奴が

な」


それは凄い事だがそれで破壊が許されるのも良いのかなと思ってしまう綴也

このドラゴンが破壊できない建物と言うのはどれだけ凄い物か見てみたいと

思った。


「だから街を破壊していると…でも」

「納得も理解も無理にする必要は無いぞ…お前はそれは出来ない」

「え?」

「言い訳だが今回の破壊は我が始めた訳ではない」

「え?」

「始める前にあの女がいきなり「この間はよくもコマギレにしてくれたわね

黒蜥蜴」と言って喧嘩を売ってきたのだ…」

「それでも破壊する気満々だったんでは無いですか!?」


と突っ込みつつ綴也はその心当たりがあったので説明する事にした。


「ま、まさかあの時綴理ちゃんがいたとは…」

「本当危なかったと思います…会長達も本当にドラゴンさんの飛行に巻き込まれて…」

「あの女は良いそれよりも綴理ちゃんだ!!今度会ったらお詫びの品を持参

しなければ…」


事情を説明するとドラゴンが膝と手を地面に着けて落ち込んでいた。

綴也以外に人間がいたらあれは人間がやる落ち込んだ時の体勢だと皆がそう

言うくらい見事な落ち込んだときのポーズだった。

それでも被害者はサクラ達のはずだが彼女達への罪悪感は全く無い様だった。


「あいつらは我の敵だから良いのだ。しかし貴様には礼を言わねばならんな

…綴理ちゃんを守った事礼を言う」

「そんな…僕は僕がやりたいようにやっただけだし…」


そう本当に咄嗟にやった事だ。

ゲーム内だから出来た事で現実にそんな事があったら綴也は出来ないだろう

なと思っている。


「そんな人物に申し訳ないが聞きたい事がある」

「?何です?」


真面目な雰囲気になったドラゴンにつられて綴也も少し姿勢を正す。


「貴様が姫神殺しというのは本当か?」


ドラゴンは問うた。


「本当ですよ」


綴也は答えた。


「…ん?」

「え?」

「…本当に?」

「本当…ですけど…」

「…」

「…」


ドラゴンが首を傾け正しく困ったという顔になった。

綴也は何でドラゴンが困った事になっているのか解らず首を傾げて困った。

二人揃って困った顔で唸りあっている図になった。


「すまない。まさかこんなにも素直に認められるとは思わなかった…」

「ええっと…何が?」

「貴様が謝る必要は無い…貴様が自分は姫神殺しだ言っただと噂で聞いて確

かめいや問い詰めてやろうと思ったのだが…」

「な、何でしょう…」


ドラゴンは綴也が姫神殺し本人である事が半信半疑の様だった。

だが綴也も嘘は言っていない。

ただ自分が姫神殺しと言って相手が戸惑うというのは同級生達から警戒や嫌

悪されて来た彼からすればそんな顔をされるのは不思議な気分だった。

かといって綴也も相手から好んで警戒や嫌悪されたい訳では無い。

だからこんな風に戸惑われるのは警戒や嫌悪よりは良いと思った。


「本当に本人か?」

「本当に本人です」

「本当に?」

「本当です」

「そうか…」

「あの…」

「そう…か…そーうかー」


ようやくドラゴンは綴也の言葉を受け容れられたようだった。

しかしゲームの中とはいえドラゴンと言う生き物の表情が心から本当に意外

なもの見たという感想の表情だった。


「いや…貴様の正体を確かめてやろうと思ったのだが…こんなにあっさり認

められる事もそうだが姫神殺しのイメージと本人が我自身予想外すぎて困っ

てしまった。もっと…こう…漫画やアニメであるような戦闘も覚悟していた

のだが…」

「ええっと…ごめん漫画やアニメはあまり見てないから良く解らないんだけ

ど…」

「まあ要するにこういう展開は我自身が思いもしなかったのだ。故に今途方

も無く困っている…どうするか?」

「ええっと…どうしよう?」

「そもそも貴様我に簡単に話しかけ過ぎやしないか!?」

「ええ!?」

「こう…姫神殺しと呼ばれる男のイメージが…全然違いすぎる!!」

「ええ…っと…うーん」


そして再び二人は向かい合いながら困った顔と腕を組んで唸っていた。

ゲームの中とはいえ残骸も破片も殆ど存在しない世界が終わったような光景

の中人間と空想上の巨大な生き物が向かい合って腕組んで唸っている図は此

処に他の幻想住人達が見ていたらどんな風に思うだろうか。


「まあ…仕方が無い」

「?…」

「何でも良い…何か話せ」

「え!?な、何かって」

「何でも良い唸ってても何も解決せん…姫神殺しとやりあう心算だったが何

と言うか今そんな気分にはなれん…」

「うーん」


それから不思議と何気ない会話をした。


「初めにお前を見た時の格好は学校の制服か!?何処かのコスプレかと思っ

たぞ!!」

「そうかな?」

「東京の高校生は変わっている…」


本当に何気ない会話だ。


「友達の作り方?」

「はい…今僕は友達がいなくってどうしようかな…って」

「うーん、我も解らん!!そもそも敵ばかりで友達など居らん!!」

「うーん」


それは旧友三人が一緒いた時を思い出す程だった。


「それで今に至るという訳か」

「…うん」

「もう一度尋ねる。嘘は言ってはいないだろうが貴様…本当に姫神殺しか?」

「その確認何回目ですか?ん?鐘の音?」

「こんな時間か…」


会話夢中になった頃鐘の音がなった。


「あ…」


それは現実の時間が夕方の五時を指した証だった。

その瞬間綴也の体が光の粒に包まれていく。


「自動転送の設定か…」

「はい…」

「そうか…またな…」

「え?」

「此処に来るなら嫌でもまた会うだろうが我のプレイスタイルをまた止めた

いと思ったのなら遠慮は無用だから来い。先も言っただろう貴様は理解も納

得もしていないと…だから貴様はいずれ我を必ず止めに来る…但しその時は

手加減は無しで潰せるるならば即潰す」

「…はい。それじゃあ…」


突如として発生した切っ掛けも前置きも最後も不思議な会話は正しく不思議

な約束と共に終わった。

約束は二人はまるで昔からの友人であった様な気軽さだった。

それは決して友人同士がする様な約束ではないかもしれないものだ。

しかしそんなやり取りなのに不思議な事にそれが約束になった。

綴也はそんな不思議な約束がまるで子供が友達に今度一緒に遊ぼうと言われ

た様な気持ちになった。

そんな不思議な約束と共に綴也は光の粒子に包まれ今日は駅へと帰っていっ

た。


「…ん?」

「…ウフフ」


街を去った綴也の目に映ったのは微笑むミフルと午前中に何度も見た綴也自

身転送部屋と呼んでいる部屋だった。


「どうしたんです?ミフさん?」

「いいえ…アイディアル公認の悪役とイリュシオン公認の悪役が会話だなん

て…と思いましてね。貴方はアイディアル…あちらはこのイリュシオンが公

式認定した悪役なのですその二人が会話をするなんて」

「そういえばそんな事を言ってたな…ってドラゴンさん大丈夫かな…」

「ウフフ、心配は要りませんよ。あの子は貴方と違い人気の悪役ですからそ

れに二人の会話は誰もいない荒野で行われたような物ですから今までの様に

話題になる事は無いでしょう」

「そうなら良い…かな?」

「心配しすぎたり気にしすぎてると白髪になるか禿げますよ」

「あはは…気をつけるよ…」

「そうそう綴也さんに伝言が二つあります…」

「伝言?」

「一つはご両親です今日は遅くならない様に…との事です」

「うん…もう一つは?」

「もう一つは貴方の学校の会長さん達です。もし五時になって自動転送され

る様になったら先に帰って良いそうです」

「え?先にって…」

「まあ…折角のお休み且久しぶりのイリュシオンで彼女達ももしかしたら高

校生が此処にいられるギリギリまでやる心算かもしれませんね」


伝言を聞いた綴也はそのまま帰ることにした。


(父さん達はまあデートの日だからだけど会長達は何でだろう何故かどうな

のかな…って思うのはおかしいのかな…)


ふと綴也はそんな不思議な危機感のようなモノを感じながらそれは気のせい

だろうと男性専用車両つきの電車を探して乗車し家路に着くのだった。

ちなみに先程の綴也の不思議な危機感を文章にすると。

監視対象を先に帰らせて自分達はゲームに夢中は良いのだろうか?

である。

ただ付け加えるならば彼女達にはミトラという監視役がいるから安心して綴

也を先に帰らせることもゲームを楽しむ事もしている。

決して彼女達も何も考えなしで綴也を放置している訳ではない事を明記して

おこう。


Mル…アイディルとイリュシオンの公認の悪役の会談ですね。

   ですがその内容は悪役同士の会話ではありませんね。

   町内会のご挨拶ですね…。

   


黒竜…仕方があるまい。

   あまりにもイメージからかけ離れていたのだ。

   正直ショックだ。


Mル…もしかして悪い奴ならそれにかこつけて暴れようとしまし

   た?


黒竜…人聞きの悪い言い方をしないで貰おう電子製命体。

   我がこの世界でとことん二度と此処に来る気なくなるくら

   い恐怖を教えてやろうと思っただけだ。 


Mル…私の言葉よりも人聞きが悪くなっている気がしますよ。 


黒竜…私のイメージ通りだったらな。

   あんな男がどうして姫神殺しなどと呼ばれているのか全く

   理解できん。

   明らかに名前負けだ。


Mル…どうやら貴女の中の綴也さんがどういうイメージだったの

   か後で全て聞かせて貰う必要があるみたいですね。


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