姫神殺しへの歓迎
「ぎゃはははははははは…」
「あの…」
「ひぃ…ひぃ…ふっふっはははははははははは…」
ミフルが笑っていた。
誰がどう見ても大きな笑いがこの部屋に響いていた。
イリュシオンの舞台ともいえる新天神の街に出た瞬間綴也は意識が途切れ気
が付けば眼を塞がれた状態で目が覚めた。
初めは何かと不安になったが聞きなれた声が今は膝枕している事と何でこう
なったのか説明を始めた。
ミフルによると新天神の街に出た途端に狙撃されてゲームオーバーになって
しまったと言う。
しかし今回はデスペナルティは現在使用しているキャラが使用不能になるだ
けで綴也の様な最初から姿も名前も自分自身の物には関係が無いと説明して
いる最中にいきなり笑い出し念の為に右に十回ほど回転してから立ち上がる
とそこには大爆笑しているミフルの姿があった。
「あの…ミフさん」
「はぁ…はぁ…ああ…す、すみません…っぷっぷぷぷぷぷ…でも…」
「声がミトさんになったりミフさんになったりしてますけど大丈夫ですか!
?」
「はははははははははは…って!?え!?声!?…あ!?」
これだけ笑われると本来は怒っても良いかなとも綴也も思った。
しかし先程の狙撃は余程彼のツボに入ってしまったようで笑い声がミトラに
なったりミフルになったりと怒るよりも先に少し心配になってしまいそうに
なった。
綴也からの指摘で笑いで混乱しながらも我を取り戻したミフルは即座に何と
かミフルとして声を戻した。
「すみません…笑いすぎましたね」
「大丈夫ですか?」
「…すみません。専用のプロテクトを作るので少し時間を下さい…ぷぷっ」
「プロテクト!?本当に大丈夫!?」
「しばらく封印しないとあんな風になって仕事に支障が…」
「ええ!?」
「即席ですがプロテクトは出来たので一応は大丈夫でですけど…」
「そ、それは…一安心なのかな?」
彼は基本的には綴也といる時はこのミフルでいるのは本来の姿であるミトラ
でからかうと自身の世間体的に影響を考慮している為ではあるが最近その事
を当人が気にしないでいる傾向がありミトラから監視されているという当人
からすればそれは大丈夫なのか心配になるのだった。
それは監視する立場と監視対象という関係とてはとてもどうなのと思うのだ
が今更この関係が変わってしまうのも抵抗があった。
「って思ってました?」
「…僕って…口に出てる?」
「口ではなく表情ですね…久方ぶりに笑わせていただけたので良い気分転換
になったので笑いが足りないと思ったら先程のプロテクトを解除して私の人
生のお笑いツールとして利用させていただきましょう」
また何かミフルが怪しい事を言った気がした綴也だがこの人にも色々あるの
だろうと突っ込む事はしなかった。
今はイリュシオンの外に出る事は出来ないがそろそろそれまでに考えておき
たい事があるのでミフルとのおしゃべりは此処までにしたかった。
「っと…思ってますね?」
「…ごめんなさい」
「ウフフ…さて、綴也さんが駅の出口に出た瞬間狙撃されたと言う出墜ち事
件ですが…」
「何だか変な名前を付けられてる気がする…」
「似合っていると思いますよ綴也さん出墜ち事件…その事件はまあ考えるま
でも無く他の幻想住人がやったことですね…運営側の私は誰がやったかは解
っていても守秘義務もありますから言いませんし」
「いや、誰がやったか知りたい訳じゃないから…」
「理由も私が語るまでも無いですよね?」
「うん…だよね」
そうこの事件は姫神殺しである綴也を狙った狙撃でありやられる心当たりは
あるかと言われればあるとしか言えなかった。
綴也は先日このイリュシオンで行われた歌手朝灯那 綴里のライブイベント
で彼女自身が襲撃される事件という名のイベントに遭遇した。
その際に綴也は襲撃者達に自分が姫神殺しである事を堂々と言った。
すると襲撃者達は襲撃する筈だった歌姫を綴也から救おうと大多数で戦いを
挑んで来る二転三転ではすまない状況になった。
その際に綴也はキャラクターであるアオバ・アオヤを失いまた綴也は様々な
要因が重なり自分が姫神殺しというとあるスポーツの嫌われ者である事が多
くの幻想住人に知られる事になった。
それは自分自身にも原因がある事を理解はしている。
しかし何か襲撃されるとしてもまさか駅の出口に出て狙撃等予想外にも程が
あった。
「もしかしてこれからこの街を入る時は狙撃に気をつけないといけないのか
な…?」
「まあ…誰がやったかは私は言いませんし言えませんがまあ私でも言える事
はありますね」
「何です?」
「現在の綴也さんはまるでアクションゲームの最初のステージでいきなり敵
の弾に当たって死んじゃうプレイヤーみたいでしたよ」
「そ、それって…僕はゲームが下手くそって事?」
「下手も何も綴也さんはゲーム自体が初心者さんなんですから…自分の仇名
の事も気になるでしょうけど…このゲームを運営する我々は他のお客様が貴
方が此処にいる事を良しとせずとも貴方もまたお客様であると貴方が不正を
しない限り歓迎しますよ」
「な、何だかありがとう…でも良いのそんな事言って…?」
「あら…貴方が不正なんて事が出来ないと知っているから言えるんですよ」
「あ、ありがとう…ございます」
「フフ…今度は狙撃に気をつけて出てみることですね」
「そうするよ」
「まあ今は死亡した綴也さんは一時間の強制休憩が課せられますけどね…」
「え!?強制休憩?」
「貴方自身を受けてる綴也さんへの専用のペナルティです。ゲームではありますが直ぐに復活出来る様な仕様ではないのですよこのゲームは…そもそも死んだら復活な
んてないんですからこのゲームだから綴也さんは死んだら最低でも一時間は休憩し
てもらいますよ…」
とミフルに言われたので綴也はこの部屋で休憩がてら一時間待つ事にした。
そうして一時間経った頃に綴也達がいる部屋に由緒あるとうピンク色のドアが出現した。
何であれ狙撃に注意を誓って綴也はピンクのドアを抜け駅に向かった。
「さて…気を取り直して!!」
ドアを出た綴也は早速外に出る事にした。
しかし最初に使った出口は使うのをやめて別の出口を使う事にした。
出口に出た瞬間再び狙撃される事を考え最初から武器である大剣は抜きたかったが武器は駅内部では抜けない様になっているのをミフルに聞いた。
しかしそれは考えれば当然だった。
この駅内で武器や能力が使用できるのならば駅の中は戦いだらけになる可能性もあるので綴也は駅に出てから直ぐに大剣を抜くしかなかった。
「よし…って!?」
そうして出口に出た綴也は大剣を引き抜こうとしたが通行人が近くにいて抜
くとぶつかる危険があって抜けなかった。
その間に綴也の左側から衝撃を感じ意識は途絶えた。
周囲から見ればそれは綴也が左のこめかみを打ち抜かれた光景があった。
「約三分ぶりです…ぷっ」
目覚めるとそんな事を言うミフルの顔を見た。
それから再び一時間後綴也はミフルの部屋再び別の出口を使う事にした。
通行人もいない事を確かめて綴也は深呼吸をして外に出た。
大剣も背中から引き抜いた。
大剣で銃撃を防ごうとした。
そこまでは良かった筈だった。
しかし綴也は頭の右側に衝撃を感じ再び意識は断たれた。
周囲には綴也が大剣を引き抜き構えた瞬間右のこめかみを打ち抜かれた光景が見れた。
「二分…ぶり…です…ぷぷ」
「あの…プロテクトをしてたんですよね?」
「すみませんそれは嘘です…こんなのプロテクトするなんて…勿体…無い…
です…っぷぷぷ…っふふふ…」
そして四つめのの出口。
三度一時間後周囲も確認し通行人も建物も無い公園の様な場所につながる出口に出た。
警戒もして直ぐに大剣も引き抜いた。
しかし綴也は最初と同じく額を打ち抜かれていた。
かつてこの世界で偶然と勘で狙撃を防いだ事はあったが自身がはその標的に
されたら何処から撃たれているのか等綴也には解らなかった。
そして目覚めた頃には男と女の笑い声が交互こだました。
「うーん…」
「いやー見事に午前中は狙撃されてましたね」
「うーん…」
四回目の休憩中綴也は唸っていた。
そもそも狙撃されるターゲットが狙撃される時の対応などわかる訳が無い。
どうすれば狙撃を防げるか綴也は頭を悩ませる。
「何だか…何としてでも突破しないといけない気がする」
だがそれでもこの出口の狙撃の壁を何としても越えたかった。
綴也にはゲーム経験が無いとはいえこのゲームにその言葉が当て嵌まって良
いのか疑問は未だに残っている。
しかし現在の綴也の状況は正に最初のステージの最初の所で失敗しそれを克
服しようとする姿は初心者ゲームプレイヤーだった。
此処で諦めて帰るという選択肢は無かった。
しかしその為に何をすれば良いのか考えても答えは出なかった。
「まあもうお昼頃ですから一緒にお昼ご飯でもどうです?」
「それなら…ってお昼?って言うかミフさん!?何時の間に!?」
「先程から綴也さんの傍で相槌を打っていましたよ」
「ご、ごめん…」
「綴也さん…一度お昼ご飯を食べてはどうです?」
「お昼?ですか?」
「お昼を忘れてしまう事はいけない事ですそれはゲームをする者としてやっ
てはいけない事の一つです!!」
「う、うん…ごめんなさい」
「ゲームは自分を大事にして楽しみましょう…と言うわけで行きましょうか
?」
何事も熱中しすぎると良くないというミフルのアドバイスでお昼の時間を知
った綴也は新天神の駅の内部を歩く事にした。
PDでも時間を確認するとミフルの言った通りもうお昼を過ぎていた。
良い考えも浮かばない綴也は出口の狙撃を突破する方法を考える事を一度や
めて今日のお昼はどうするか考える事にした。
しかし今度は新天神のお店はサクラと初めて入ったお店以外にも初めて見る
お店がいっぱいあるのでどれにしようか別の意味で悩んでしまった。
「うーん…」
しかしその誘惑に負けたら只でさえ少ない財布の中が更に削られるので財布
に優しいそうなお店を前提に考える事で絞り込む事にした。
「どれにしようかな…ん?」
すると綴也達が進む方向に人だかりが出来ていた。
何事かと見てみると茶色がかった髪と青い目をした民族衣装を思わせる服装
に鳥の翼を思わせるようなマントを纏い何処かの民族の祭事に使うような剣
を腰に差す青年が多くの人に囲まれているを見た。
綴也はそれを見て最近見た夢の青年を思い出した。
それは綴也にとっては思い出深い本の主人公そのものだった。
綴也は幼い頃いじめが原因で正義の味方が悪を倒してハッピーエンドを迎え
る作品は受け付けなくなっていた。
そんな時に父が読ませてくれた作品があった。
その作品はそんな綴也でも読める作品だった。
その作品の主人公がそのまま此処に現れたと綴也は感じた。
「あなた!!」
「え!?ああ!!」
「ようやく見つけたわ探したわよ!!」
「ごめん…」
「もう…」
綴也が遠巻きに青年を見ていると青年に声をかける女性がいた。
長い黒髪に黒い眼に赤と黒を基調としたドレスを思わせる服装で蝙蝠を思わ
せる外套を纏い腰には当人とは正反対の雰囲気の白く輝く剣が差してある。
その人物も綴也が父に読ませてもらった作品のもう一人の主人公とも言える
女性だった。
そんな二人がイリュシオンというゲームの中とはいえ現実の中で診る事にな
るとはしなかった。
「あの人達は…?」
「あの人は…綴也さん…知らないんですか?」
「?どういう事?」
「…あの人は有名な同人小説作家とその奥さんさんですよ…」
「どうじん…作家?って何?」
「元々は同好の士がお金を持ち寄って作る本の事なんでけど今では今ある作
品の二次創作もそいう風に認識されるようになりました」
「じゃああの人もそういう作家さんって事?」
「いえ…それは…綴也さんが自分から知るべきですね」
「え!?」
「先ずは自分で調べる何でもかんでも教えてもらえるとは限りませんから…
ね?」
「そう…だね」
とミフルの突然の言葉に何か引っ掛かる物はあったが確かにその通りだと思
った綴也は少し名残惜しいが空腹と共に来るお店の悩みに向き合うべくそこ
を通り過ぎようとした。
「どうしました?」
「まあ…気のせいかな?」
心の何処かで気になる事があったがそれは気のせいだと納得した綴也は今度
こそこの場を離れようとしたがするとその二人が綴也の方へ歩いていく。
予想外の事に綴也はこのままこの二人が通り過ぎるのを見届ける事にした。
二人が綴也の横を通り過ぎようとしている。
本当にあの作品の二人の様に見える。
このイリュシオンでこんな光景を見れた事に綴也は感動すら沸き上がりそう
だった。
「ん!?え!?綴也?」
「え…?あの!?」
それは綴也と二人の男女が交差する寸前で起った事だった。
青年がは綴也を見た瞬間名前を呼んで驚愕し立ち止まった。
「え!?ええ!?な、何で!?」
「え!?」
女性の方も綴也を見た瞬間青年と同様に驚いていた。
コレはどういう事かと綴也は考えた。
二人共顔も声も知っている二人とは明らかに違う筈なのにしかし何でか何処
かで知っている気がしたしたのだ。
気のせいだと思っていたが目の前の二人が自分を見て驚いた事で自分の名前
を何で知っているのか何でかそして何でその姿と格好をしているのか綴也は
一瞬で答まで思考を導き出せた。
そしてその回答は出口の狙撃を防ぐ方法や今日のお昼はどうするかを考える
よりも簡単に導かれた結論だった。
「あの…当てずっぽうですみませんが…もしかして父さんと…母さんですか
?」
T也…………………。
Mル…どうしました綴也さん?
T也…本当にお昼ご飯をどうしようかと思って
Mル…どこか入りたいと思ったところに入ってみれば良いではな
いですかこういうのはもう入ってみなければ解りませんか
ら…。
T也…うん…その前に父さんと母さんを問い詰めないといけない
からお昼ご飯はそれからかな…
聞かないと安心してお昼も食えない事があるから…。
Mル…綴也さん…少し怒ってません?
T也…うん…少しね。
Mル…理由をお聞きしても良いですか?
T也…勘弁して下さい。(ふかぶか)
Mル…(綴也の表情と言葉である程度の理由を察した)成程。
何となく解りました。
ですが作者は次回その理由を書くかもしれませんよ。
T也…それもどうしましょう…僕個人がちょッと嫌なだけって理
由なので…。
Mル…その嫌な理由が重要でしょうね…貴方にとっては…。




