後輩(師匠)VS先輩(弟子)
※この話は前回の話を別の視点で書いたものです。
サクラの視点で書いていたら何だかこっちの視点も書きたくなっ
たので実験的な意味もあります。
これから必要になったらこんな風に書くかも知れません。
「せ、先輩?」
綴也は驚いた。
それはいきなり試合をしないかと言われたからではない。
綴也と恵理香は現在とても友人に近い間柄である。
しかし彼女はアイディアルの世界において理想の円卓と呼ばれる世界トップ
クラスに位置する理想求者である。
そんな彼女が何でアイディアルの世界に置いて一番嫌われているであろう姫
神殺しである自分にに何故に試合を申し込むのか旧知の仲である綴也でも始
めに「何で?」と言う言葉が頭に浮かんだ。
「試合…って…綴也君…とですか?」
「いや…試合を見ていたら久しぶりに彼と仕合ってみたくなってね…これで
綴也君がアイディアルを辞める約束を守らなければならないのらこの機会に
最後に試合をさせてもらえないかと思ってね…」
「ちょっと待ってください!!…綴也君と先輩は…」
さかさずサクラが止めに入る。
「なに…弟子が師匠と試合をしたいといっているのだけなのだから少しくら
いは許してもらえないだろうか」
「でも…ん!?し、師匠と弟…子?」
「ああ、綴也君は私のアイディアルの師匠に当たるんだ…」
「え…?」
此処にいる人間の視線が自分に集まるのを綴也は感じる。
「ちょ、ちょっとテツヤ君!!コレどういう事!?」
「え!?師匠って言うほど何か教えた訳じゃなくて只先輩がアイディアルを
始めた頃にアイディアルを教えて欲しいと言われただけで…」
「それを一般的に弟子入りというのでは…」
綴也の言葉に嘘は無い。
彼女に弟子入りをされたがその期間はそれほど長いわけでもなく綴也も彼女
の師匠と呼べる程何かを教えられた訳ではないと思っている。
だからそう呼ばれるような事はしていないと綴也は思っている。
しかし彼女は何故かアイディアルに関しては自分の事を師匠として扱ってく
る事があった。
何でと本人に尋ねる事があるが当人は「君がどう思おうが君は私の師匠さ」
と笑って答えるだけだった。
「何か教えた訳じゃなくて一緒に練習していたというのが正しいかも…その
時にはミトさんとミフさんがいたし…」
「少なくとも基本的な事は君に教わったよ…本人も言っているが基本的な事
以外は彼も知らなかったみたいだしね…いや或いは私よりアイディアルを知
らなかったかも知れないな…対戦ルール以外は私より知らなかったようだし
…」
「う…ごめんなさい」
「う、うそ…本当に…テツヤ君が…先輩の…」
恵理香のちょっとした暴露に顔が赤面し自然と横に逸れていく時固まってい
るサクラの顔が見えた。
日頃から他人の事に関しては鈍いなと思っている綴也でも明らかに動揺して
いるなと言うのが解る顔だった。
もしかしたら先程の弁明も聞いていたか怪しかった。
彼女は自分が恵理香に復讐するのが目的でこの学校にきているかもしれない
と疑っている。
しかし恵理香はそんな自分を師匠だと言ってしまったので少なからず混乱し
ているのかも知れない。
そう思うと自分が想い人の息子だという件も含めて悪い事はしていないはず
だけど何だか申し訳ない気がした。
「頼む、綴也君がアイディアルを辞める以上これが私が綴也君と試合が出来
る最後の機会だ」
恵理香がサクラに頭を下げている。
サクラも何とか答えようとするが混乱は収まっていない様な雰囲気だった。
「やれやれ…仕方ありませんね」
「み、ミトラさん!?……解りました。ではお願いします」
「試合はOKだそうですよ」
ミトラがサクラに何か囁いた。
それでサクラが安堵したのが解った。
恐らく自分が監視をするから大丈夫だと言う事を言ったのだろう。
「そうか…それと試合は綴也君が体術の使用制限を解除してから始めたいだ
けど…良いかな?」
「それでも貴女の勝ちは変わらないでしょうに…」
「体術が使えない綴也君に勝つ事は簡単だ出来る限り対等の勝負にしたいん
だ…相手は師匠だからね…」
こうして急遽始まったアイディアル部部員との練習試合は更に元部員の世界
ランクの理想求者の試合の急な申し込みと言う予想外の事態を迎える事とな
った。
綴也は恵理香を待っていた。
恵理香を待つ中で綴也は少し考えていた。
そもそも綴也は恵理香の提案を断る事も出来た筈だった。
自分には恵理香と試合をする理由は無い。
自分は姫神殺しと言うアイディアルの嫌われ者でましてや昨日サクラとの試
合で負けたのでもうアイディアルを辞める約束もしている。
約束は守らなければいけないとそれを理由に断る事も出来た筈だった。
しかし綴也は恵理香の申し出を断る事を考えもしなかった。
何でそんな事を言い出したのかと思ったにも関わらずそれを断るという考え
が思い浮かばなかった。
(やっぱりアイディアル…辞めたくないな…)
約束した筈なのにそんな気持ちが綴也の中で湧き上がるのが自覚できた。
先程の一試合づつの時間は短かったがそれでも試合をすればする程綴也は約
束は解っているつもりでもそれでもアイディアルをもっとやっていたいなと
思えてしまう。
辞める約束をしておきながら一週間も経たない内に未練が沸きあがる自分が
自分なりにアイディアルが好きなんだなと自覚しあの時白い姫神に勝ってい
なければこうならなかったのかなと思った。
(でも…違うかな…)
しかしそれも違うと思った。
あの時の結果に不満があるとすれば姫神殺しという仇名を付けられて嫌われ
者なったくらいで自分の周囲に何かドラマで見られる様な事は起ってはいな
い。
その事を思えばそれくらいで住んでいる自分は少し幸せ者なのかと思えてく
る。
ならば自分が嫌われ者になっている位は自分で何とか頑張ってみるべきなの
かもしれない。
そうやって自分と向き合っていると周囲が騒がしくなった。
「待たせてしまったかな?…師匠」
準備を終えた恵理香が出てきたのだ。
もしかしたら恵理香はそんな自分に気を遣って本当に最後に自分と試合をし
ようと気を遣ってくれたのかもしれない。
「それでは時間も無いので無駄話をする前に始めますよ…では…始め!!」
(ええ!?いきなり!?)
ルールの説明も無しにミトラがいきなりの試合開始を告げた。
時間が無いのは解らなくはないがそんなと言いたかったがミトラを見てミト
ラの背後にいる彼に似ている女性の幻影が何か不機嫌にいるのが解ったので
言うのをやめて視線をすぐに恵理香に向ける。
恵理香は何も刀を手にそこに立つが仕掛けてくる気配は何も無かった。
彼女の眼が「拘束を解いてきなさい。それでも自分が今は強いよ」告げてい
るの様だった。
恵理香は自分の事を師匠だといったがコレじゃあ恵理香の方が師匠っぽい気
がするとツッ込んでも彼女はきっと笑って同意するのが見えそれが可笑しく
なって綴也は恵理香の言葉に従い言葉を唱える。
「我が右手は理想に災禍をもたらし、我が左手は理想を悲嘆に落とす。
我が右足は理想に憎悪を撒き散らし、我が左足は理想を絶望に誘う。
我が両手は罪人の手…我が両足は咎人の足。
我が両手は何物も掴む資格は無く、我が両足が何処に立つ許しも無し
それでも我が欲の為に…我はこの咎人の手足を振るう」
長い長い言葉を唱えて鎖の外れる様な音がした。
綴也の体術の拘束が解けた証だった。
そもそも真剣な試合で綴也がこの拘束を外す事が出来たのはこれで三回目く
らいだった。
「行きます!!」
拘束が外れた綴也はその瞬間恵理香に向かって銃を連射する。
そのスピードに観客から驚きの声が上がった。
しかし恵理香は観客達が驚くスピードの光弾を刀で弾き接近してくる。
綴也は銃の発砲スピードを上げるもそれでも恵理香は刀で弾いて接近してく
る。
剣を持つ綴也と刀を持つ恵理香の刃が交差しお互いの刃が響く。
「射撃のスピードが以前よりも段違いじゃないか!!一瞬折角披露しようと
思った技を出し損ねたよ」
「うっ…それでも平気で弾いてきたじゃないですか!!」
「それでも君は銃の腕を磨いてきたのだろ一瞬驚いたよ」
「驚いた顔をしてないでしょう!!顔全然変わってないし」
二人は互いの刃を振るい合い刃が響き合う中綴也の顔が苦しそうになる。
彼は女性との接近戦では体質の為に胸部を見てしまうと吐き気を催すという
視覚情報ダメージを受けてしまう。
本来はそれは避けたいものであるが相手はそんな手段が通じる相手ではない
事は綴也自身が良く知っている。
先程のアイディアル部の面々との勝負もそのリスクがあったから全速力で銃
を撃ったがその結果自身でも予想外に勝ったがそんな事が起った事が驚いた
くらい遠距離で有利を取った事が無かった。
しかしこの相手は明らかに銃で狙い撃ちはおろか牽制も通じない相手。
ならば綴也は視覚情報ダメージを覚悟の上で相手に接近して戦いを挑むしか
選択肢は無かった。
「一瞬だと言ったろう!!私の顔を見て簡単に解るほど甘くは無いよ!!」
「くっ…しまっ!?」
剣と刀がぶつかり合う中突如綴也は自分が中に浮かぶのを感じた。
それが何なのか理解している綴也は即座に恵理香に銃を向け連射する。
綴也の反応が想像以上に速かったのか恵理香が追撃ではなく回避を取ってい
た。
そこから剣を地面に剣をさして叩きつけられるのを回避し体制を整え直す。
「はぁ…はぁ…全く刀振るってるのに投げてくるって…相変わらず何て戦い
にくい…」
「うふふ…君に弟子入りした結果というやつさ…このスタイルは私にとても
合うよ」
綴也の方が明らかに息が上がっていた。
それは女性の胸が見えたという視覚情報ダメージだけでは無かった。
神条恵理香は刀を振るう戦闘スタイルだが彼女は刀を手にした状態で相手を
投げる技を持つ。
投げ技とは通常相手の服などをその手で掴みそこから投げるのが一般的であ
り武器を利用する等可能であれば武器を相手に突き刺しで投げるくらいと思
われる。
しかし彼女は刀を持っている状態で相手の服を掴む事も相手を刺す事も無く
投げてくる。
このスタイルに多くの理想求者が翻弄され彼女はプロデビューして短い期間
で世界レベルの理想求者に駆け上がっていた。
だから彼女との接近戦は投げられない様に剣の振るいに注意しなければなら
ない。
綴也も彼女の技の完成に関わっているので理解はしているが視覚情報ダメー
ジが蓄積すると注意にも限界が訪れあのように一瞬の隙で投げられたのだ。
綴也が銃撃で彼女の追撃を防げたのは正しく彼女の技を一番理解している故
の事だった。
「だが以前より投げにくくなっているな…弟子のはずの私よりも師匠の成長
の方を見せられている気がするな…」
「はぁはぁ…僕は師匠をやってた気はしないのですが…」
「私にとっては君は立派な私の師匠だよ…君との出会いは最初は最悪だがそ
れでも今の私があるのは君のお陰だからね…」
「ありがとうございます」
「だから今度こそ私の成長を見てもらうよ!!」
恵理香が綴也に向かって翔ける。
恵理香は綴也とは友人というには微妙な仲だがに体質は良く知っている。
だが綴也に対し遠慮をする気は一切ない。
それは綴也自身も望んでいないと言う事を知っているからだ。
だから綴也も自分の体質が凄く厄介だと思うけれどそれをアイディアルでの
ハンデになるとは思わない。
吐きそうになる気持ちに激を入れるかのように銃を構え恵理香に連射する。
「さっきより速い!?」
「恵理香先輩!?」
そんな声が再び上がったがそれでも綴也はもっと速くと連射する。
この速度ではきっと弾かれる。
弾かれない為にも彼女の速さよりも速くと綴也はより連射のスピードを上げ
る気持ちで引き金を引き続ける。
「なっ!?」
そんな短い一瞬の綴也の思考を一発の光弾が彼の頬を掠めて止めた。
(何…が!?)
その思考が止まった時何発もの光弾が綴也を掠めて行きその直後恵理香は綴
也の近くに接近していた。
綴也も何とか迫る恵理香の刀を驚愕で停止した思考を再起動し剣で受け止め
た。
「まさか銃弾を刀で受け止めて返すって…」
そう先程綴也の頬や身体を掠めたのは自分が撃った光弾だった。
恵理香は綴也が銃で撃った光弾を刀で受け止めて投げ返したのだ。
「それくらいは成長してるさ。師匠を驚かせるのは弟子の権利だからね…本当は額を狙ったが外してしまった…私もま
だまだだな…」
刀を持ったまま人間を投げるのも凄いことだがまさか銃弾を受け止め投げ返
す等綴也も此処にいた観客も驚くしか選択肢は無かった。
「でも言ったろう…私も成長してるという事さ!!」
「くっ!!」
再び綴也は恵理香に投げられる。
空中に放り出された綴也は恵理香の追撃を塞ぐ為にすぐさま恵理香に向けて
銃を連射する。
「ふッ!」
しかし今度は恵理香は綴也が撃った弾を刀で受け流し投げ返してそのまま後
続綴也の光弾に当てて撃ち落していた。
「な!?」
「さっきは外したが今度は外さないよ!!」
綴也は空中の間銃を連射し恵理香は光弾を投げ返し撃ち落す。
綴也は彼女の打ち返す光弾に打ち返されまいと落下中も銃を撃ち続ける。
しかしそれに集中しすぎて着地準備が間に合わず強引に剣を突き刺し強引に
着地し体勢を崩してしまった。
その瞬間にお互いの銃弾は逸れて綴也には恵理香に投げ返された光弾が殺到
する。
「クッ!!」
数多の弾が綴也を打ち抜くがそれでも綴也は恵理香を迎え撃とうと剣を振る
おうとする。
しかしそれでも構えるのは一瞬遅かった。
「頑張ったね…師匠」
どちらかと言えば貴女の方が師匠に風に見える顔をした恵理香の刀が綴也の
胸を一閃し…。
「勝者 神条 恵理香!!」
ミトラが勝者の名前を告げるも綴也はそれを聞く前に意識を失っていた。
「十分持ちませんでしたね…それに体術の制限も解除しておいてそれも使え
ずに負けるとは…当然と言えば当然ですか…」
意識を取り戻すも綴也はミトラから厳粛且正当な評価を受けている。
しかし…。
(あの糞女相手に良く適応力無しの綴也さんが頑張りましたね…ですが此処
はミトラとして正当に評価しますよ)
とミトラの背後に見える気がする女性の幻影が微笑んでいる気がしたので何
だか悔しいと言うよりも綴也苦笑になっていた。
「元々私は綴也君に体術は使わせないで勝つ心算だったんだしかし三分で勝
つと言っておきながら六分を超えてしまった…私もまだまだだな…」
「気は済みましたか…?」
が恵理香に問うミトラの背後に再び女性の幻影が今度は今すぐにでも殺そう
としそうな表情で問うているのが見えてこの場で二人誰よりも知るを綴也は
二人がこの場で喧嘩を始めないか心配になった。
が恵理香はそんなミトラの背後から発せられる殺気に気付きながらそんな気
は無いと表情を少しだけ綴也に向けてそれに気付いたミトラの背後にいる女
性の幻影も綴也に笑顔を向けて消えたのが見えた気がした。
どうやら此処で喧嘩をする気は無い様で綴也は安堵した。
「本来はアステリーヴァを使う綴也君と戦ってみたかったよ…でもその機会
もきっとなくなるのだろうな…」
「神条先輩?」
恵理香の言葉に何か寂しさのようなものがある気がした。
或いは自分がアイディアルを引退する事を惜しんでくれているのかもしれな
い。
それは綴也が勝手に思っていることで本当の事は本人にしか解らない。
でも綴也はアイディアルを辞めるというサクラとの約束は守らなければいけ
ない。
それなのにこんなに沢山試合をさせてもらえたので内容はともかく試合をさ
せてくれた恵理香に感謝しなければバチが当たると綴也は思った。
「会長も綴也君も今日は私の我儘に付き合わせてしまってすまなかった。今
回の事は彼女達にも良い経験になるよ」
「え!?…い、いいえ…」
「ううん…ありがとう」
「ん?…なんで君が礼をいうんだ?」
「ええっと…何となくアイディアル辞める約束をしてるけど負けたけどそれ
でも試合が出来て何だか嬉しくって…」
「…そうか」
こうして突然の練習試合は幕を閉じてこの場はこのまま解散となった。
「当事者からすればコレは只のどっかの糞女が約束を反故にしかねない案件
を持ち込んだだけだけというのに…他の誰かからすればコレはどんな風に写
っているのやら…」
解散して体育館から生徒が帰る中そんな事を呟く女の声がした。
Mル…あの裏では綴也さんにサクラさんは余計な疑惑を持ってし
まいました。
全くあの馬鹿の所為で余計に綴也さんが余計に疑われたで
はないですかあの糞女が…。
Mラ…信用というのは得るのは難しい。例え誰かの為に戦う人が
いても信じられなければそれは恐怖の対称にしかならない
でしょ…ウブッ!?
Mル…尤もらしい事言ってこの場を誤魔化そうとすんじゃねえよ
この優等生良い子気取りの屑野朗が!!
Mラ…い、いや…我々は…そもそも…と言うか何でそんなに怒っ
て…
Mル…テテツヤサンガコナイテツヤサンガコナイツヤサンガコナ
イテツヤサンガコナイテツヤサンガコナイテツヤサンガコ
ナイテツヤサンガコナイテツヤサンガコナイテツヤサンガ
コナイ…。
Mラ…綴也さんがスポーツセンターかイリュシオン来ないからと
…って昨日は来てたでしょう!?
Mル…カラカエテイナイカラカエテイナイカラカエテイナイカラ
カエテイナイカラカエテイナイカラカエテイナイカラカエ
テイナイカラカエテイナイカラカエテイナイカラカエテイ
ナイ…
Mラ…はあ…我ながら何でこんな風になったんでしょうね…本当
に(苦笑)
※コレはある人物の心象を言葉にしたものです。
決して一人漫才ではありません BY 作者
Mル…この注意書きは要らないでしょう!!
もっとこの作品に関する事をあとがきで書きなさい!!




