消えないものと消えたくないもの
最初に自分がどうなったのかは理解できなかった。
それは自分の目の前にいた黒い者に自分の全てを懸けた一撃を叩き込む事に
残った気持ちも全て注いだからだ。
その結果自分がどうなるかは考えていなかった。
もしかしたら大怪我をしていたかもしれない。
或いは自分にこの戦いを仕掛けた人が何とかしてくれると言う都合の良い事
を思っているからそんな事が出来るのかもしれない。
しかし彼はそんな自分が思っていた結果にはならなかった。
そう彼は白い立体映像に抱きとめられて自分の顔をその胸に抱き寄せられて
いた。
自分が何で今こうなったのか理解できたのはは自分の中で湧き上がる感覚で
ようやく理解した。
それは自分が幾重も感じた何かが競り上がって来るものだった。
「おうげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…」
綴也はその場で湧き上がる吐き気に我慢できずにそのまま吐き出した。
それは立体映像とはいえ女性の胸に触れてしまったからである。
アイディアルでの勝負で女性相手にこの少年はもしも胸に接触してしまえば
こうなってしまう。
だから彼はそうならない様に警戒はしているつもりだった。
しかし立体映像達は綴也をいとも簡単にボールの様に彼を吹き飛ばし続けい
とも簡単に抱きとめてしまう。
二人にやられたとはいえそれが朝倉 綴也という少年と彼が練習相手になっ
てもらっていた立体映像との実力差だった。
「ゲホゲホ…うおうっげぇぇぇぇぇぇぇぇ」
吐き気が収まらず綴也は吐き続ける。
何でこんな事になっているのか疑問を考える余裕など無い。
「全く三十分程度で戦闘不能など…情けない」
とあの一連の戦闘の一部始終を厳しい評価を下す声と共に一人の青年が姿を
現す。
山吹色の眼と髪を持つ整った外見を持つ持つ電子製命体のミトラである。
「み、ミトさん…」
「何でこんな事をしているなんて無駄な事は聞くものではありませんよ。
貴方がこんな所に複数の女連れで現れるのですから女性達の安全確保の為に
貴方を無力化するのは貴方を監視し此処を預かっている身として当然の処置
です」
「……」
ととても厳しい評価に加えて傍目からしたらやりすぎと言われそうな措置を
当たり前と言って来た。
(違うんです!!本当はそうじゃないんです!!)
綴也は彼の言葉に反論も抗論もしていない。
傍から見ればそれはミトラの言葉にショックを受けて打ちのめされている様
に見える。
しかし沈黙している理由はミトラの評価にショックを受けているからでは無
い。
(三十分も耐えたので少しは褒めたいと思ったんですけど他のお客様がいる
前で私になるわけにはいかないんです!!それに私が綴也さんをからかえる
のは基本二人だけだというのにそれなのに女子を大量に連れて来やがってせ
ッかくの私の楽しみを奪った裁きです!!)
(…って言う心の声が聞こえている気がするんだけど…と言うかそんな事気
にしてたかな…)
(あの糞女みたいなトラブルを持ち込まれるのは可能な限り避けたいのです
!!これ以上何処かの馬の骨に私の唯一の心のオアシスを穢されてたまるも
のですか!!)
それはこの電子製命体は実はこの少年の事をからかうのが生き甲斐を見出し
ていた。
しかし彼自身はそれをするのは色々と問題があるのでその為に自分の妹と称
するミフルという姿になって日夜綴也をからかっていた。
しかしそれは基本的に綴也と二人きりの時のみにしている。
それ以外は出来る限り本来の姿である青年の姿で綴也に接している。
そして青年の時は綴也に対しては世間の評価を基準にした接し方をしている
がその背後に彼に良く似た女性の幻影が見えて彼の言葉とは別の言葉を発し
ている幻聴が聞こえた。
それは綴也自身も幻視であり幻聴であると思うがそれでもそれが見えて聞こ
えると確信に近い何かがあった。
「あの…無力化…ですか?」
「ええ、コレは幸い立体映像だろうと女性の胸を触らせればああやって行動
不能になりますから…まあ一応は覚えていただけるとコレとのトラブルに役
に立つかもしれません女性には不愉快な話でしょうが…」
「い、いえそんなこちらこそ気を使っていただいてありがとうございます」
「現在私がいますからお客様の安全はこちらが確保いたしますどうかご安心
を…」
「あ、ありがとうございます」
(残念ですがこうでも言わないときっと彼女達は納得はしてもらえないと思
うんです!!だから耐えて下さいね!!)
とにこやかに生徒会のメンバーと会話をしているミトラ。
そこには綴也が聞こえていると思っている心の声があるなどは微塵もない。
目の前にミトラとという男性こそがこの電子製命体の本来の姿でありミフル
という女性は彼が作り上げた女装である。
しかし綴也にはその今もミトラの背に彼と似た女性の幻影が綴也に対して泣
いたり怒ったりしそしてニヤニヤしているのが見えた。
この電子製命体の趣味は数名には露見しているがそれを周りに言うのも彼に
悪いと思うので綴也は基本ミフルの事は彼の妹としている。
もちろんこの秘密をおいそれと喋る気も無い。
「さて彼も無力化して安全は確保されましたのでお話が出来ますね…今日は
どういったご用件でしょうか?」
予想外の出来事が起ったがそれでもここに来たのはアイディアルを辞める際
に綴也の使っていた武器を誰かに使ってもらえないかというのを相談する為
だった。
「お断りします」
「え!?」
しかし拒否が事情を説明した瞬間に返ってきた。
しかしそれは速すぎずそれでいて遅すぎないと思えるくらいの間があったと
思うくらいのタイミングで返ってきた返事だった気がした。
それは電子製命体と呼ばれる者の成せる技かと思うものだった。
「な、何で!?」
「根本的な理由として姫神殺しの使っていた武器を使いませんか?なんて言
われて誰が喜んで使うというのですか?仮に誰かが使ったとしてもその人が
いらぬ誹謗中傷を受ける事になってしまいます」
「…あ」
「全く…それ以前に貴方の武器は基本譲渡も消去も出来ないようにされてい
ます…その武器は貴方が死ぬまでそのPDに在り続けますしPDを買い替え
てもそのPDに自動転送される様になっています」
「そうなの!?綴也君?」
「ご、ごめんなさい…それは初めて知りました」
「ええ!?」
「私も妹も教えていませんでしたし…ですが私が綴也さんの頼み事を断るの
はそんな理由ではありません」
「え?」
「その子達が貴方と離れたくはないと言っているからですよ…」
「??」
断られるのは自分の考えが足りなかったで納得は出来る。
しかしその理由として挙げられたのは予想外の理由だった。
その理由を聞いて湧き上がったのは疑問符だった。
どういう事なのか?と言う疑問だった。
「あの…み…ミトさん…その子達というのは…もしかして…」
「貴方が今手放そうとしたその子達の事以外何処に貴方と離れたくないと思
う武器があるというのですか」
「ええ…っと」
「私の言う事が信じられないと」
「…ごめん」
この場で綴也が謝る事がミトラの言葉に対する回答と言えた。
「この件に関しては君がどんな批評を受けている人間であったとしてもこの
子達の事言わないでいるのは私の様な存在を否定するようなものですから悪
ふざけで言いませんよそれは私の命も懸けています」
「ミトさん…でも僕は…」
「仮にこの子達を手放して次の使い手が大成功したとしても貴方のやって来
た事が消える訳ではないのです。それはきっと意味がない事です」
「ミトさん」
そう言われて綴也はこの話をしている間にミトラから発生するミフルの幻影
と幻聴が聞こえない事に気付いた。
(あれ?ミフさんの幻影も幻聴も聞こえない気がする…)
コレはつまり自分の武器の事に関してはミフルいやミトラは全く嘘を言って
いないという事なのかもしれないと思った。
綴也はミトラの言葉を完全に信じる事は出来なかったがそれでもこの人がこ
う言うという事は何かがあるのだという信頼があった。
「ちょっと待って!」
「どうしました?サクラさん」
「綴也君は今日はその為に来たのよ!消去されなければ私達としても約束を
守っているとは信じる事はどうしても出来ないわ!!」
「…それは彼が姫神殺しだからですか?」
「この子がどんな子であれ約束はきちんと守られている証が欲しいの!!学
校の全生徒がこの約束を知っているの!守られなければ綴也君は全生徒の信
用を失うわ!!」
「信用ですか…それは綴也さんの信用であって貴女方の信用には何も影響は
ないのではないですか?」
「え!?」
綴也は少し忘れがちだが彼女達生徒会は善意から彼を学校から追放したいと
考えている。
ここで少なくとも目の前の少年からアイディアルを出来なくする事は彼女達
にとって大事な事項だった。
しかしサクラもミトラが綴也の頼みを断った理由にとうとう口を挟まずには
いられなくなった。
サクラは綴也を疑っている。
この少年はかつてクラスメイトに追求された神条 恵理香に復讐する為にこ
の学校に来たのではないかと信じている。
昨日の事は彼からの恋の応援を信じた事も自分の気の迷いの所為だったと恥
じている。
だから目の前にいるこの電子製命体も彼の妹もこの少年に騙されているのだ
と思っている。
だからこそ彼女は此処で口を挟む事を我慢できなかった。
この少年の被害者を何としても助けたいと思って行動しているのだった。
「困りましたね…先程も言いましたが彼の武器は消去は出来ません」
「本当に…出来ないの?」
「不可能ですね。仮に綴也さんのPDを此処で物理的に破壊してもそのデー
タは消去されずに次のPDに移りますよ…それ以前に綴也さんが初恋の人が
くれた宝物を手放すなんて考えられません」
「武器データの自動転送なんてまるでそんなの呪いみたいじゃない!!何で
…そんな!!」
「それはですね…」
「話し合いの所少し待ってもらえないか…」
ミトラとサクラに問答をしている間に声がした。
声のするほうには一人の女性が立っていた。
高い身長に長い黒髪女性の全てを兼ね備えた体付きでありながら刃を思わせ
る雰囲気の女性がそこにいた。
「し、神条先輩」
「恵理香先輩?どうして?」
「おや、恵理香さんではないですか…どうして此処に?」
「今日の朝綴也君が貴方の所に武器とIDを消去すると聞いてね。急だが綴
也君にアイディアル部に関して相談があって貴方の所に用事がある事を朝言
っていた事を思い出してね…この話は生徒会にも許可を貰いたい話なので生
徒会も一緒にいると聞いて都合が良いと思い此処に来た訳だ」
「相談?ですか?」
「ねえ綴也君…神条先輩とミトラさんって知り合いなの?」
「はい…」
恵理香とミトラの会話。
お互いが整った顔と外見を持つ二人の会話はとても絵になるものだった。
(何で此処に来ているんですか?この糞女)
(綴也君に相談があるといっただろう。生徒会にも話を通したいので貴様の
所に来たのだこのポンコツ野朗!!)
(また綴也さんを貴様の都合に巻き込む気ですか!!)
(否定はしないが貴様の様な変態趣味のポンコツ野朗に言われたくはない!
!)
(何でだろう…普通の会話なのに心の中でそんな事を言っている気がする)
しかし綴也は二人が心の中でお互いに言い合っている気がした。
何故なら恵理香は綴也同様ミトラの趣味を知っている。
そして恵理香はミフルことミトラとはお互いが気に入らない。
今普通の会話をしているのはは生徒会のメンバーもいるので巻き込まない為
にお互いに抑えていた。
「ねえ、シーちゃん、フーちゃん…あの二人美形カップルに見えるわよね」
「そこの紅い髪のルージュさん私達は恋人ではありませんよ」
「ああ、美形というやつだろうが彼は私の好みとは異なるのでな…」
「ひいぃ!?な、何か二人供怒ってません!?」
「「そんな事はありませんよ」」
「ね、ねえ、テツヤ君…私何か悪い事言った!?」
「あはは…二人は異性の好みが違うので…」
先程のルージュの言葉は悪気も悪意も無かった。
しかしお互いに気に入らない者同士で恋人に見られるのは流石にカチンと来
たらしい。
((一度叩きのめすぞこの赤い髪は…))
二人の言葉が異口同音した瞬間にそんな心の声が聞こえた気がした。
「…消去も譲渡も不可能なのだろう。今いう事では無いのは理解しているが
私から綴也君に頼みがある」
「頼み…ですか?」
「私の後輩達…アイディアル部の部員達と試合をさせて欲しい」
T也…久しぶりに此処に帰ってきました。
って気がするのは何でだろう。
Mル…作者が第一章のあとがきを書かないまま第第二章を勧める
のは気持ちが悪くて全部埋める事を優先したそうですよ。
T也…それでも少し遅くなってた気が…。
Mル…作者はあーだこうだ考えていて遅くなったそうです。
あとがきで…。
T也…これからは小説と一緒にあとがきも忘れずにですね…。
Mル…あと去年はじめたFGOが楽しくて時間を割いてしまった
そうです。
T也…ゲームよりも小説の方に時間を割く事を意識しましょう。
???…気をつけます。




