知らない事は…
「何を考えてんだろね…あの男は?」
「うん…今日も全然普通だったよね…?入学から今まで…」
「自分の事なのにアイディアルを辞める筈なのに…平然とし過ぎて…」
「或いは…最初から辞める気だったと見るべきかもしれない…未練以前にそ
うする心算だったと…」
「そうだよね…普通ならもっと何か諦めないで何か見せる気がするし逆に潔
過ぎるよねアイツ…副会長?」
「その可能性は否定できませんが…サクラはどう思います?」
「…そうね…そう考えた方が正しい気がするわ…アイツは多分何か隠してる
そうでなければあんな事を自分から提案するなんて信じられないわ…」
生徒会緊急会議の夜聖アウローラ学園生徒会のメンバーはPDの通信機能を
使って家にいながらある議題で緊急の会議を行っていた。
それはお昼に時間を掛けていた生徒会長の恋の相手の事ではない。
それは生徒会が現在最重要監視対象としている少年の事である。
彼がこの学校の生徒になって1ヶ月が経とうとしている。
しかし学園側もイレギュラーな事態とはいえ世間からは姫神殺しというとあ
るスポーツ界における半ば犯罪者の様な扱いを受けかつ現在に至るまで数々
の悪い噂の絶えなかった問題児をどうぞどうぞと受け容れられるほど暢気で
はなかった。
故に彼には常に警戒するように彼にだけは秘密裏に注意する様に呼びかけて
おり生徒会もこの様な対策会議と銘打ったPDによるリアルタイム通信での
会議を行っていた。
「でも…全然解らないのよね…」
「そうですね…」
「だよね…」
「うん…」
「そうだね…」
「確かに…」
しかし彼の目的が見えないのだ。
彼が入学してからその行動は可能な範囲で監視してきた。
自分達で不可能な範囲は彼の担任や授業を担当する教師達に逐一彼の様子を
報告するように学校の上層部からもお達しがあるし彼女達生徒会も可能な限
り報告している。
注意する様に秘密裏に注意を喚起している。
それは彼が始めてイリュシオンをプレイし始めた時の黒い竜との遭遇の時の
行動や大立ち回りに三日前のアイディアルでのサクラ自身との試合の内容と
その後のサクラへの告白。
また一昨日のイリュシオンの歌姫天照の襲撃イベントでの行動とサクラへの
告白への謝罪そして昨日のサクラの想い人がいる時の言動など全てが報告さ
れている。
もちろん彼女の想い人がその監視対象の父親である事も報告している。
その時のサクラ嬢は腸の切れそうな思いだったという。
噂通りの人物ならばそれだけの事をしておかないといけない要注意人物の筈
だった。
「もしかして…私達が疑ってるって事がバレちゃってるのかな…?」
「そうだとしたら彼がここで何食わぬ顔をで学校に居る理由が無いからその
可能性は無いに等しい位ではないか?」
「そ、そうだね…その事しゃべったの生徒会室で一回だけだったもんね」
しかしその監視が始まって一ヶ月も経ってはいないとはいえ全く何も無いの
だった。
それが彼女達や教師達聖アウローラ学園の上層部を余計に悩ませていた。
彼が噂通りの人間ならば一ヶ月も経たない内に必ず解りやすい何かが出ると
皆が思っていた。
しかし何も出てこない。
不自然なほどに何も出てこない。
教師達の報告によると授業態度は真面目で噂通り何かをやっているそぶりも
ないまた噂の所為もあるが周りからは疑惑の目向けられて孤立してしまって
何だか苛められているようにも見えるとの報告もあった。
生徒会のメンバーも見ている限りでは半ば無理矢理引き込んだ様でもあるが
彼は真面目に生徒会の仕事に取り組んでいるし何かを企んでいる印象も感じ
られなかった。
見えている限りでは朝倉 綴也とという少年は決して噂に語られているよう
な行動は何一つとっていないので監視をしている側としてはどうして良いの
か解らないと困惑するだけだった。
「あるいは…それがアイツの狙いなのかも…」
「っと言うと…」
「アイツが私に好きだなんていう理由なんて何処にも無いんだもの…それは
奇怪な行動で私達を混乱させようとしているのかも知れないわ…」
「憶測の域ではあるがそっちの方がしっくり来る気がするな…」
自分でそう語るサクラにはそれ以外に少年の行動に説明がつかなかった。
あの少年が突如として自分に愛を告白するなどそれこそどんな風になったら
そんな事が出来るのかやりたいと思わないが頭の中をのぞかないと解らなか
った。
「どうします?会長?」
「まだ一ヶ月も経ってないんだからそう簡単にあの男も何かする訳無いわよ
ね…私達も少し早とちり過ぎたのかも…」
「だな…現に奴は恵理香にも表面上は普通に接しているみたいだからな…」
「でも…いつまでそうしているかも解らないよね…」
「引き続き風紀委員会と先生と協力して朝倉綴也への監視は続行するわ。但
し怪しいぞぶりを見つけたら先生に連絡を入れる事…良いわね?」
サクラの一言に参加者達は首肯してこれからの決意を新たにしている。
そう…まだ一ヶ月も経っていない。
彼の父が自分の想い人であった事は予想外でショックはあるがそれでも彼女
は学校とそこにいる生徒達の為にも綴也を監視する事に決意を新たにするの
だった。
「じゃあこの話は一旦終わりって事で此処からは会長の恋のお話をしましょ
うか?」
「ちょ、ちょっと!?」
余談であるが彼女達がこの様に通信機能を使って少年を議題にした会議を行
っているのは学校で彼の真意に関する事を学校内で話すのは万が一彼に聞か
れて何らかの行動に出られたら危険だと考えその可能性を少しでも減らす為
にごくごく考えたら当たり前の事に気が付いたためである。
「よし!!書けた!!」
と彼女達聖アウローラ学園生徒会の最重要監視対象である少年は自分の部屋
でそう言って伸びをしていた。
彼の机には文が書かれた手紙と封筒が置いてあった。
綴也は文通相手への手紙を書いていた。
相手は彼が子供の頃からお世話になった初恋の女性である。
日本に引っ越してきても綴也はその女性と文通をしていた。
内容は日常の事や起きた事をお互いに書いていた。
今回の綴也の手紙の内容は入学から今までの半月くらいの出来事を書いてお
り自分がサクラとの勝負の約束でアイディアルを辞める事も書いてある。
彼女には姫神殺し事件の事も手紙で明かしたがそれでも彼女は綴也に手紙を
送ってくれている。
綴也にとっては本当に感謝の念で一杯になる人だった。
そんな相手への手紙を書いて伸びをしていた時に綴也の眼に机に置いてあっ
たその人がくれた玩具の光剣を改造したパーソナル・デバイスが止まった。
そこからアイディアルのメニューを操作して自分が使っていた武器である剣
と銃ががそこに表示される。
「ふぁぁぁぁ」
翌日火曜日の朝。
綴也自身自分から出ているにも関わらず内心驚いてしまう位の大きな欠伸が
出ていた。
「寝不足になっちゃった…」
それは昨夜文通相手への手紙を書いた後彼女がくれた宝物が眼に留まりそこ
から今まで使っていたアイディアルの武器を今までありがとうの気持ちを込
めて手入れをしていた結果だった。
「うう…僕だけやっぱり浮いてる気がするな…」
自分の学生服が他の学生と明らかに違うがそれも新しい制服が来るまでの辛
抱だと綴也は突き刺さる視線の中を歩き続けた。
「だーれだ?」
「え!?な!?」
「そのまま動かない方が良いぞ君の後ろは触れればどうなるか君ならば解る
物があるからな…」
「え!?ちょ!?」
と突如として眼を塞がれた。
その上奇妙な警告がついてきた。
しかし自分の体質を知っていてそんな事をする人間の女性がいるとしたら綴
也は一人しか思い至らなかった。
「フフ…冗談だ流石に意地悪だったかな…」
「って恵理香先輩!?」
「やあ…おはようって…何だか眠たそうな顔をしているね」
「文通の手紙を書いた後にアイディアルの武器の手入れに集中しすぎて徹夜
しちゃいまして…」
「夜更かしも程々にな…しかし何故そんなに手入れを…?」
「はい…今日ミフさんに渡して僕の替わりにあの武器を使ってくれる人を探
して貰おうと相談しようと思ってだからつい…ふあぁぁぁぁぁ」
「そうか…」
「徹夜しちゃって…ん?」
ふと綴也の眼にひとつのグループが写った。
それはサクラ達学校の生徒会のメンバー達だった。
そこには風紀委員の緋途美も加わっていた。
しかしシア以外は皆どこか眠たそうな顔をしていた。
ただ知っている顔を見たので声をかけてみる事にした。
通学中にクラスメイトに声をかけて逃げられたが流石に彼女達に声をかけて
おかしな事にはならないだろうと綴也は声をかけた。
「先輩」
「ふぁあ…ん?綴也く…ん?…ってえ!?神条先輩!?」
「ええ!?」
「…」
「あら…」
サクラに声をかけた瞬間かえって来たのは驚きだった。
それはサクラだけでなく生徒会メンバー全員がそれぞれそのような表情だっ
た。
そうして自分が恵理香に復讐するのが目的で此処に来ているのではという疑
いもかけられているのだという事を思い出した。
しかしそれでも綴也自身にやましい事は恵理香に告白した時の事位で復讐す
る等全く無い。
なので少し戸惑ったが綴也は驚く彼女達に再び声を掛ける。
「え、えぇと…ど、どうしたんですか!?」
「ど、どうしたって…何で二人が一緒に登校してるのよ!?」
「前に知り合いだって言いましたよね?」
「それは聞いたけど…」
「会長それは私が彼を見かけて声を掛けたんだ別におかしな事は無いぞ…」
「目隠しされましたけどね」
「ええ!?」
「サクラ落ち着いてください寝不足の所為で頭が簡単に混乱してますね…」
「え!?寝不足?」
「ええ、昨日女子だけの夜を徹したお話をしていたので皆さん寝不足なんで
すよ」
シアの一言を聞いて綴也は彼女達の眠そうな顔と驚きの理由に納得した。
生徒会の皆もそんな風に徹夜で寝不足になる事もあるんだなと綴也は以外だ
なと思った。
また誰よりもそのような事をするように見えない風紀委員の委員長である緋
途美ですら綴也が見ても解るくらいに眠そうだと解るくらいなので余程話が
盛り上がったのだと想像した。
「あれ?でもシア先輩は…眠たそうに見えません」
「この副会長はね…話の途中で自分だけこっそり先に落ちて寝ていたのよ…
全くずるいと思わない」
「私は落ちる前に一言声はかけましたよ…夜更かしはほどほどにと…」
「聞いてないわよ…皆に質問攻めだったんだから…」
サクラが質問攻めだった事が聞こえた瞬間彼女達はサクラの想い人の事で徹
夜したのか思ったがそれを問うのはやめておいた。
サクラの想い人が自分の父故に聞きたい気持ちはある。
しかしそれを理由に秘密の話を聞くのはどうかとも思ったのでその気持ちを
押さえた。
そうしながら生徒会メンバーは昨日の夜の会話の話しで盛り上がりその話は
恵理香が「このままだと遅刻するぞ」と突っ込むまで続いた。
しかし自分も生徒会も同時に夜更かしで寝不足などなど何だか物語の日常の
一コマみたいだと綴也は思った。
Mル …有名な勘違いコントの芸人さんを思いながら作者はこの話を考えたそ
うです。
E香 …これはコントのレベルか?
Mル …だから今回は綴也さんではなく貴女を呼んだんですよこのファザコン
ん女。貴女にも責任の一端はあるのですから…
E香 …その事に関しては否定はしないが貴様のようなポンコツ野朗に言われ
ると腹が立って仕方が無い。
Mル …がここはあとがきなので喧嘩しても意味は無いのであとがきらしい事
を一つ…この話を考えるのに作者は二週間もかけてしまいました。
E香 …小説を書く事の難しさを日常で味わったという訳か…
Mル …どのタイミングでこのファザコン女を絡ませるかどうか迷ってこうな
ったとか…綴也さんだけでなく作者にすら迷惑をかけるとはさすが疫
病神女。
E香 …表に出ろポンコツ野朗…女の姿形で喋り出なければ悪口もいえない猫
かぶり野朗の分際で嘘ニュースを流すな。
この後二人は仲良く喧嘩しました。




