アオバ・アオヤの…
そんな自分でも不思議なくらい沸きあがった言葉と共にアオヤは大剣を構え
騎士の剣舞に向かって走り蒼い大剣を振るう。
その剣の軌道に剣の色を残しながら騎士の剣舞を吹き飛ばし騎士に向かっていく。
「…クッ」
騎士はそれを避けるがその顔には余裕がなかった。
それは自分の慢心が招いた事だと結論した。
アオヤが大剣を立て続けに振るい騎士はそれを立て続けに避ける。
「グッ!」
しかし騎士の顔には余裕は感じられず避ければ避けるほどにその顔に焦燥が
はっきりと現れていた。
「この!!」
遂に騎士がアオヤの三度舞い続ける蒼い大剣に自分の白く輝く剣で受け止めた。
「ぐっ!?」
騎士はその整っている顔に明らかに苦渋に満ちていた。
大剣と剣の膠着はすぐさまアオヤが剣を弾く事で再び距離が開く。
剣ごと弾かれた騎士はすぐさまに低空を飛ぶ鳥の様に迫り大剣を振るったア
オヤの一瞬の隙間にその剣で刺し貫こうと突きを放つ。
だがアオヤは左手に持ったままの大剣の柄を右手に掴むと強引に右手だけで
逆さになった大剣を騎士に振るった。
「何!?」
驚く騎士の右肩に大剣の面が叩きつけられて騎士はそのまま叩き飛ばされた。
「ぐっ、肩が…」
「…グッ」
騎士は右肩を庇いながらもアオヤを睨みつけアオヤは顔色を青くしながらも
自分を睨む騎士を見つていた。
アオヤの大剣の剣の速さが騎士の予想を大きく超えている為余裕を失ってい
る騎士は綴也もまた余裕などなかった事に気付かなかった。
先の二回の攻撃を含めても初めて大剣で戦っている時より吐き気に堪える為
に追撃が出来なかった。
(何だか最初の頃よりも吐き気が来るのが早くなってる気がする…鬼ごっこの
時は隠れて休んで吐き気を凌げたけど…)
未だにイリュシオンに適応出来ていない為かここで戦えば自分自身の動きに
着いて行けず綴也は吐き気に襲われてしまう。
それでも吐き気に堪えながらもアオヤは大剣を構えながら右肩を庇う騎士を
見つめる。
騎士は右肩を庇いながらも立ち上がり明らかに痛むであろうその右手で剣を
構える。
「何故…攻撃しなかった?」
「…え?」
「僕が無防備だったのに何でお前は攻撃をしなかった!?」
「僕はイリュシオンに適応していないから吐き気に…」
「そんな嘘が信じられると思うか!?」
「いや、嘘じゃなくて…」
「いや、質問をしたのは僕だ、我ながら馬鹿げた問いをしてしまった。あの
姫神殺しがそんな弱い身体をしている訳は無いな…」
吐き気に堪えて大剣を構える自分の姿や顔にが何か問題でもあったのかとそ
の時の姿と表情をこんな状況ではあるが鏡で見たくなった。
だからあの時の少女も実はこんな風に自分の言葉を信じていないだろうなと
思った。
その結論に悲しいとは思わなかった。
見知らぬ人や親しい人達以外に信じてもらえない事が多く信じてもらえる事
が珍しいくらいだ。
寧ろ親しい人は自分のいう事を信じてくれるのでそれを感謝するべきなのか
もと綴也は思う。
でもそれを理由に挫けるのも拗ねるのも辞めるのも嫌だった。
あの歌姫の少女を守る戦いではなくなっているのかもしれない気がするが逃
げたくはなかった。
例えこの戦いもイリュシオンの遊戯の一部でしかなかったとしても辞めない。
騎士が痛むはずの右手で剣を構え再びアオヤに向かい翔ける。
アオヤもまた吐き気を堪え大剣を構え騎士を迎え撃つ。
ここからはどちらが先に根を上げるかだった。
アオヤが振るう大剣を剣で受ければ騎士は右肩の痛みに顔を歪ませながらも
剣を返しそこに逆襲するがアオヤはそれを大剣で受け止めるも吐き気に襲わ
れそうになり顔を歪める。
「はぁああああああああああ!!」
「でぇえええやぁああああああ!!」
それでも二人は引かなかった。
武器の有利不利は頭から消えていた。
お互いが顔を歪めながらもそれでも引きたくないという一心と引けないとい
う一心でお互いの苦しみと痛みを叫びで押さえ込みながら剣をお互いに通そ
うと剣を振るいお互いの剣が通らぬように受け止め合いぶつけ合い続ける様
だった。
それは二人がお互いに息を荒げて向かい合うまで続いた。
「はあ…はあ、騎士さん一つ良いですか?」
「はあ…はあ、何だ!?」
「その剣、何か炎が出たりとかしないんですか?」
「姫神殺しの不正武器と一緒にするな、この剣はただの剣だこの剣にそんな
力は無い」
「いや、だからこの武器は…」
「そして自分で鍛えたこの剣と自分で鍛えたの剣技でこの世界で戦う。だか
ら火が出る力や武器も僕は要らない!!」
息を整え再び剣を構える騎士。
アオヤも再び大剣を構える。
「貴様は何故最初に出した蒼い炎を使わない?使う必要が無いと侮っている
のか!?」
「いや、どうやって出ているかも解らなくて…それに今は剣と剣での勝負が
したいて思ったんだ…信じてもらえる…かな?」
「ふっ、姫神殺しの言葉を信じられるとでも?」
「…だよね」
騎士の言葉に綴也は苦笑する。
騎士の剣がアオヤに向かいアオヤの大剣が騎士に再び向かって行く。
お互いがお互いが限界を超えている事もこれが最後だという事もこれをぶつ
け合ったら恐らく相打ちになる事も感じていた。
不思議な共感と呼べるものに一人はこれがかつて一度も味わう事も無かった
競い合う事なのかもと苦笑し一人は敵に対し共感した事に苦笑した。
大剣と剣が近付く。
騎士は剣をアオヤに突き立てる為に向かって来る。
アオヤは見ていた。
騎士の剣が日の光とは違う輝きを纏っている事を。
アオヤはそれを驚きはしなかった。
何故ならそれを騎士との戦いから最初から見ていたのだから。
しかし騎士は自分の剣が輝きを纏っている事に気が付いていない。
騎士は何かを持っているのを気付いていないのだと理解した。
それをいう事は簡単だが信じてもらえないだろうなと思った。
それでもこの大剣をこの騎士にぶつける為に向かう。
この戦いは昨日の自分の大事な一戦と同じで逃げてはいけない気がしたから。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
蒼い大剣と光輝く剣が交差する寸前に声がした。
それは二人が護ろうとした少女のものだった。
その姿は二人の剣が交差する位置にあった。
「「なっ!?」」
突然の事に二人は剣を振るうのを制止させようとする。
彼女の後姿を見たアオヤは制止させたが彼女の正面を見た騎士の方は右手の
痛みで剣が制止が出来ずに剣が彼女に向かって飛んでいってしまった。
しかし幸いにも剣は彼女の顔を横切る形で通り過ぎた。
「天照!?何で戻ってきた!?」
「歌姫さん!?何で戻ってきたんですか!?」
「貴方達が私を護る為に戦うというのならその私が戦う事を望んでいないと
言うのなら戦うのを止めてくれますか!?」
「え!?」
「な!?」
「どうなんですか!?」
「う、うーん」
「そ、それは…その…」
「どうなんですか!?」
少女戻ってきた事に驚きながらも綴也は何が戻ってきた気がした。
自分はこの少女を護ろうとして戦ったのだと。
先ほどからそれを忘れていた気がしたがそれを思い出せた。
「い、いやそれは…」
「まあ…貴方がもう襲われないって言うなら確かに止めても良いかな…少し残
念な気がするけど…」
「貴様!?」
「では貴方はどうなんですか!?そんなに私の名前が欲しいのなら此処でこ
の私を殺せば良いではありませんか!」
「いや待ってくれいや下さい…天照の名前は僕は別に欲しくは…それにそんな
事をしたら今度は僕が殺されます!」
「だったら戦うのは辞めてもらえますよね!!」
「いや、それはその…」
歌姫の少女が騎士に詰め寄って騎士がたじろいでいた。
二人の会話を聞くとどうやら騎士は天照の名前は望んでいない事が解った。
ならば何故襲撃者のリーダーをやっていたのか彼らが望む天照という名前が
何なのか謎だがそれでも彼女が戻って来たらこれはどうなるのか解らない。
ふとアオヤが周りを見てみると大剣で吹き飛ばしたはずの襲撃者達いや挑戦
者達が周囲に様々な所で立っていた。
どうやらこの戦いを見ていたらしい。
しかし攻撃を仕掛けてくる様子は見られないのでこれはこの戦いはこのまま
終わるのならば決着がつかないのは少し残念な気がしたがこれで終わるのな
らばそれがいいのだろうと考えながら詰め寄る歌姫と詰め寄られ狼狽してい
る騎士の話し声を耳にしながら周りを見ていた。
良く見ると建物や街中の所々から観客らしき人々が自分達を見ていたり写真
を撮っている様に見えた。
今更ながらゲームの中とはいえ自分達は公衆のど真ん中で戦っていたのだと
アオヤは理解した。
(これがゲームでなかったら僕達は警察に連れて行かれていたかも…)
ゲームでなくても警察どころではないのであるがそうして何気に見回してい
たアオヤはとある建物の屋上から何かが光ったのを見えた。
その光を見たのは偶然だった。
しかし、光が目の前の少女に向けられている気がした。
アオヤ・アオバこと朝倉 綴也は周りに認めてもらえなくとも好きなスポー
ツに打ち込んでいただけの高校生で銃器の扱い等素人同然である。
だからこれは根拠など皆無の直感で先程同じ事があったからそう思い込んだ
だけだった。
しかしもしもまたこれが先程と同じものだったらと思いアオヤは走り少女の
背を押した。
背を押された少女がクッション代わりになった騎士共々倒れた直後少女が立
っていた位置にはアオバが立っていた。
倒れた少女と騎士が顔を上げ自分を押し倒した少年に何かを言おうとしたが
その前に二人は声が出せなかった。
何故ならその少年の胸には穴が開いていたからだ。
「ぐばっ!?」
アオバは吐いていた。
始めは遂にイリュシオンでの動きに限界が来たのかと思った。
しかしそうではなかった。
吐き出されたものは赤い液体で口にはその味があった。
それは鉄の味でその液体は血液と呼ばれるものだった。
何でそんな事になっているか等綴也は解らなかった。
少女を押し倒した後は大剣を前に出してその光を受け止めようとした。
その光は受け止めたはずだったのに自分の胸には穴が開いていた。
解ったのはそれだけだった。
しかし自分の行動が間違ってなかったと思った。
あのままだったら穴が開いていたのは彼女とあの騎士だった。
「貴様…何故…?」
騎士が本当に何で綴也が少女と自分を庇ったの様に見える事をしたのかが解
らないという顔をしているのに苦笑が零れそうになった。
「あ…ああ…」
しかし隣の少女は余程ショックだったのか表情が凍りつき感情すら追いつか
ないくらい混乱している様に見えた。
確かにこんな状況を見たらこんな事になるかもしれないしゲームで無かった
ら自分もこんな傷で立っている事もこんなに考える事は出来なかったと綴也
は再びこの状況に再び苦笑した。
「狙撃!?何処からだ!?」
再びビルから光が放たれる。
今度は複数だった。
狙いはそこでしゃがみ込んでいる少女だろう。
騎士は狙撃に憤っていた。
アオヤは大剣を地面に突き刺し玩具の光剣を取り出して光る剣を出し少女の
前に立ちその光を迎え撃とそうとする。
相手は遠くからの狙撃者で防いだ筈の弾が貫通して自分の胸に大きな穴を開
けた正体不明の弾丸。
そんな正体不明の弾を大剣が駄目ならばドラゴンとも戦えた武器で防げるか
は解らない。
しかし少年にはこの玩具と自分が盾になる以外に少女を護れる方法は持って
いなかったし無かった。
「それでも…守る!!」
アオヤの思いが神様に通じたのかそれとも武器に何かあったのかこれがやは
りゲームだからなのか玩具の光剣は迫った光を切り裂き先程のような穴が綴
也にも少女や彼女を護ろうとその身を盾にしようとする騎士にも開く事は無
かった。
他のビルからも似たような光が迫ってきたがこれも全て綴也は撃ち落した。
これはゲームでこれもイベントの一つでしかないのだろう。
こうやって少女を守ろうとする事も自分の口の中に広がる鉄の味もゲームの
中の事でしかなく意味があるかどうかも曖昧だ。
それでも嫌だと思った。
アイディアルでも狙撃を使う理想求者もいる。
戦い方としても正しいだろう。
でももしもこれがゲームでなかったら…。
そんな想像をした少年の感情は激情になり激情は声になり声は形となってこ
の世界に放たれた。
「嫌がる女の子に戦う事を望むなんてどんな理由があってもあって良い筈が
無いだろうが!!」
その言葉と共に振るわれた白金に輝く光の剣は更に強い光を放ち自分の胸を
貫いた光を放った者の元へと向っていった。
それが何をもたらしたのか綴也達を襲った光は嘘のように来なかった。
それがここに至るまでの二分にも満たない時間だった。
光が止んだ直後アオヤは倒れていた。
ゲームとはいえ胸に穴が開いたのに立っていたのが奇跡か異常と言うべきで
倒れるのが当たり前だったのだと綴也は今更ながらそんな事に思い至ってい
た。
(これで…ゲームオーバー…なんだね)
意識が薄れていくのが解る。
それは眠気に良く似ていて心は穏やかだった。
「ごめんなさい…ごめんなさい…わた…し…が…わたしの…せ…い…で…」
そんな中泣いている声と水が落ちる感触がした。
薄れる意識を声に向けるとそこには少年が守ろうとした少女が涙を綴也の顔
に落としていた。
「わた…し…の…せ…い…で」
「こういう…時は…ごめんなさいじゃなくて…ありがとう…でしょ」
泣きじゃくる少女に笑い掛けながら意識は沈んでいった。
(我ながら何だか似合わないけど、まあ…ゲームなんだしこれくらいカッコ
着けてもいっか…)
そんな事を思いながらアオバ・アオヤはこの世界で死を迎えた。
E香…それで今回は何か意味ありげな事並べたりなんぞさせんぞ
!!
Mル…しませんよそんな事は…悲しくなりましたし。
アレはきっと誰かの代弁なんですよ。
E香…なんだそれは?
Mル…まあその話は置いといて…。
この回でアオバ・アオヤ君の物語は終わりを迎えます。
E香…終わりとしては稚拙であっけなくて物語としては三流以下
じゃないのか…?
Mル…整然とそろえられた終わりと言うものは当たり前ではなく
あんな終わり方も可能性はゼロでは無いいう事です。
作者は作者なりに意図があってそんな展開にしたそうです
から今は読んでいただいた皆さんのお心次第です。
E香…何だか後付なきもするが作者の意図とは何だ?。
Mル…バラしたら意味ないでしょう。
E香…そうだろが貴様に正論を振り翳されると本当に腹が立つ
んだが!!




