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IFかもしれない世界で綴る物語(あるかもしれないみらいで生きるライフ・ストーリア)  作者: きちだ しんゆう
理想と幻想の間~ミックスド・リアリティ
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天照らす歌姫






チケットの関係で席は綴也とサクラが隣同士だった。

サクラの隣はシア、ルージュ、フラウス、シーニィ、緋途美の順だった。

そして彼女達も綴也同様今日は幻想住人としてではなくリアルの姿で此処に

来ていた。

しかし昨日の今日でお互いが同じ場所で会って席が隣同士というのは現実は

小説より奇なりと言う言葉はこういう時に思う言葉なんだなあと綴也は思っ

た。


「ところで…朝倉君…そちらの女性はどなたですか?」

「「「「「……」」」」」

「彼女は…」

「そちらのサクラさんとは面識はありますが皆様ははじめましてですね。私

はミフルと申します。昨日は兄がお世話になりました」

「…兄?」

「電子製命体ミトラの妹です。兄のミトラ同様綴也さんとは長い付き合いな

のです」

「ミトラさんの妹さんなんですね…妹さんがいらっしゃったなんて存じ上げま

せんでした」

「今日は綴也さんのアイディアル引退の気分転換にと思ってこのコンサート

に招待したんです」

「凄い偶然ですね。私達もサクラの気分転換にこの子が大好きなこの歌手の

コンサートに来たのにこの偶然なんて現実は小説よりも奇なりというやつで

すね」

「ええ…本当にですね…」

「え!?でもテツヤ君って昨日…」

「赤い髪のお嬢さん…私は綴也さんの恋人ではありませんよ。私は綴也さんを

からかうのが好きで友人をしているのです…姫神殺しになる前からね…」

「え!?友人!?姫神殺しの前!?」

「昨日のうっかりを反省する為にも少しは考える頭を持たれた方がよろしい

かと思いますが…今度はもっと取り返しがつかない事をする事になるかもし

れませんよ?」

「うッ!?」

「確かにその通りですね…貴方の所為で学園の部活動と委員会は向こう無期限

の予算カットという悲劇に見舞われたのですから…」

「「うんうん」」

「誰か私に味方してよ!!と言うかそんなとんでもない罰与えたのは副会長

じゃ…」

「何か言いましたか……ルージュ?」

「い、いえ…何でもありません」

「ルージュごめん。私にも責任の一端があるから今回はシアちゃんは止められ

なかったわ…」


生徒会メンバーがミフルの答を信じてくれているかは解らないが綴也にはミ

フルに関してやましい事は何も無い。

彼女が自分をからかう事を生き甲斐にしているから付き合いがあるという事

を覗けば数少ない友達の一人(?)だった。

しかし綴也には今向き合わねばいけない問題が目の前にある。

隣に座る不機嫌な顔の少女だった。

その原因である自分がまさか隣なので無理も無いので此処はミフルに席を交

換してもらおうと思う前に笑顔で…。


「ここは…ちゃんと向き合うところです。失恋の後何時もやってる所ではあ

りませんか?」


つまり自分で何とかしなさいという事だった。

間違ってもいないので綴也もそれを押し通して交換を要求する事は辞めた。

それにミフルの声色に何時ものからかいの色が無かった。

ミフルは何時もは綴也をからかうのは生き甲斐だと言っている。

アイディアルの練習中に舞台の環境を氷だらけにしたりマグマの海等滅茶苦

茶な設定にしていじり倒したりしてヒーヒー言っている自分を見て笑いこけ

ている彼女だがこういう時は大人として接してくるのだった。

覚悟を決めてサクラの方に視線を向ける。

どうやらサクラも席は交換してもらえなかったらしい。

但し向こうは生徒会メンバーの顔を見ると人の機微には疎いと思っている綴

也ですら気付くくらい明らかに面白がっている様な顔色だった。

それはあの生徒会室の秘密の会話を聞いている今とあってはそれはどうなの

かと綴也は思わなくはなかった。

或いはそうやって自分に真意を悟らせないようにしているのだろうかとも思

ったが何であれ綴也たちは同じ列の席で一列に座っている。

空気はサクラと綴也の所だけ距離は近いのに見えない壁に覆われているよう

だった。


「…会長」


本当は元々サクラは自分の事を嫌っていた。

自分の事を監視し何かあれば退学させる事を今も考えている。

そんな自分からの告白など気分はいいものでもなかったのだろう。

場所も選ぶべきなのは解っていたが綴也は一言先ず昨日はごめんなさいをい

う事にした。

許されるかどうかは考えないただ言葉にその気持ちだけ込め言葉を口に出そ

うとした。


「そうそう…朝倉君に聞きたい事があるんですけど?」

「ごめ…ん…って!?…え?副会長?な…何でしょう?」

「いえ…単刀直入にお聞きします…サクラに告白したんですか?」

「ちょっと!?こんな公衆の面前で…」


しかしその前にシアの問い掛けが掛けられサクラの顔は紅く染まり綴也も言

葉が出なくなった。

まさかこの場で問い掛けられるとは思いもしなかった。

自分がそんな友人がいるからもしかしてシアは本気でサクラをからかってい

ないだろうか疑いたくなった。

しかし綴也の答えは最初から決まっていた。


「はい…」

「なっ!?…ちょ!?貴方もこんな公衆の面前で!」

「「「ええ!?」」」

「……」


サクラの顔は更に紅くなり信号機トリオは驚き無表情の緋途美も無表情が崩

れていた。


「あら…」


シアだけが笑顔に手を当てて首をかしげていた。


「こんな場で不躾なのは承知していましたがこんなにあっさり認めるだなん

て思いもしなかったわ…てっきり驚いたり慌てたりするものだと思っていたん

ですけど?」

「大事な話の途中にいきなり告白してしまったので自分でも最悪だったと反

省はしています。でもサクラ先輩に好きだと告白した事は謝まれません。

その事は悪い事だとも思えません。誰かを好きになる事を間違いだとは絶対

に思えないから…」

「…あら?」

「なっ!?」

「「「ええっ!?」」」

「…」


生徒会メンバーが驚いたり息を呑んだのを見た。

今度のはシアも驚いていたが綴也は言葉を続ける。


「それに一度告白して駄目なら諦めると決めているんです」

「あら?どうしてです?」

「恋人と言うのは将来自分の奥さん…つまり家族になるかもしれない人だか

らです」

「な!?」

「家族…ですか?」

「はい。それを一度嫌がった異性に何度も付き合ってと言うのは僕は好きじ

ゃないんです」


好き嫌いの考え方は人間それぞれで自分の考え方が絶対ではないがそれが朝

倉綴也の恋愛というものに対する考え方だった。


「本当に意外でした。貴方からそんな言葉が来るなんて想像の埒外です」

「初恋の人が教えてくれたんです。「人を好きになるのは人を嫌いになるよ

りも難しいの。そしてその気持ちを届けても受け止めてもらえるとは限らな

いし受け止めもらえないのが当然と言って良いくらいなの…でも誰かを好きに

なる事は間違っていない」…って」

「あらあら…」

「ただ、結果はもう想像は付いていると思うのでこれ以上何も言う気はあり

ません。でも、会長、後でちゃんと謝らせて下さい…お願いします」

「……」

「そうですね…後は本人達の問題。私も公衆の面前でついつい悪ふざけが過

ぎてしまいました」


シアの言うとおりここはコンサートの会場なので何時まで話すわけにもいか

ないしこの場所で話していい話題ではないと綴也も思った。

綴也も話が終ったので席につこうと思ったら気付いてみれば周りからの視線

が集まっていて所々から拍手が上がっていた。

何故なのか綴也は解らなかったが取り合えず立ち上がり周りに一礼をしたそ

れから間も無く拍手も止んでいった。


「…うふふ」

「?ミフさん?」

「立派でしたよ…綴也さん」

「そうかな?」

「ええ、公衆の面前でその話をしなければ満点でしたよ」

「そうだよね…うん」


それからは思い思いにコンサートの開始を待つ事にした。


「始まりますね」


それから時間が経ち会場中に音楽が鳴り始めた。

ミフルの視線の方を向くと中央のステージに七つの光が灯りそこに虹色の球

体を造りだした。

この演出が複合現実(MR)によるものである事は此処に誰もが理解はしているが

それでも歓声が上がる。

そしてその球体が光の粒子になって散り散りになりの中から一人の女性が姿

を現した。

金の髪に蒼い眼、白と蒼を基調とした着物に似た衣装を身につけている。

ただその女性が出て来た瞬間観客が一斉に歓声を上げ始めた。

綴也はその様子に驚く…。


「きゃー!!つづりちゃーん!!」

「うわ!?会長!?」


驚く前に隣に座るサクラがまるで子供のようにはしゃぎ始めた事に驚いた。

先程まで不機嫌だったサクラが夢中になっている。

それを見て綴也は少し驚きながらも嬉しそうな彼女の様子に安堵した。


「あの子が今日の主役、朝灯那 綴理(あさひな つづり)天照の名を持つ

に今年始めにデビューした新人高校生歌手ですよ」

「へぇ…って高校生!?しかもプロなの!?」

「やっぱり知らなかったですね…」

「ごめん…音楽の事も知らなくって…」

「その辺も含めて今度二人きりの特別授業を行いましょう♪綴也さんに色々

教えてあげますから♪」

「お願いします。ミフさん…少し何だか危機感を覚えてきた」

「……真面目に返された」


ミフルが落ち込んでいたが放っておく事にした。

どいやらいつものからかいだったらしい。

何か突っ込みたくなったが今はコンサート中なので綴也も突っ込む事は控え

た。


(それに天照って…なんだろう?)


そして綴也は天照大神という神様の事を知らなかった。


「綴理ちゃーん!!綴理ちゃーん!!」


サクラの歓喜に満ち溢れる声援に響く中歌が聞こえる。

綴也は彼女の歌を聞いていた。

となりの少女は彼女の名前を呼びいや叫び続けている。

綴也は彼女が歌っている姿を観ていた。

だがその歌が良いのか?悪いのか?綴也自身これと言った基準を持ってはい

ない。

そもそも音楽機器を持ってはいないし歌もテレビかお店で流れているのを何

と無しに聞いているだけだった。

食べ終われば宿題か練習が殆どだった。

また綴也自身はこの様なイベントに来る事自体が初めてだった。

歌を聞いてはいたが少し居心地も悪くなっていった。

皆がこんなにも喜んでいるのに綴也自身は喜ぶ事が出来ない。

どうして此処にいるのか解らなくなっていた。

ミフルは自分がコンサートと言うものが初めてだという事を知らない。

内緒だと言われてついて来たらまさか今日はこの様なイベントを初体験する

とは思いもしなかった。

どうすれば良いのか?考えたが答は出る筈もなかった。

隣のサクラもコンサートに見入っていてとても邪魔は出来ない。

ただ見ているだけなのにアイディアルの練習よりも疲れを感じている気もした。

そもそも何故自分は此処に来ているのだろうと考えた時ミフルの言葉を思い

出した。


(そうだ…イリュシオンは戦闘ばかりじゃないんだって事を見せる為に此処

に連れて来てくれたんだった…)


だから綴也は今舞台に立っている彼女をただ見る事にした。

明るそうな雰囲気の曲を歌っている時も…。

悲しそうな雰囲気の曲を歌っている時も…。

ただ彼女を見ていた。

歓声も上げずにただ彼女を見ていた。

結局綴也には彼女の歌が良いのか?悪いのかの判断は出来なかった。

それでも綴也が感じ思った事は…。


―彼女は歌う事に全身全霊をかけている様に思えた事。


―歌う時に見せる表情や姿勢全てにまるでその時その時に全てを込めている

 様に見えた事。


―その歌声の言葉一つ一にこれでもかと言うくらいの思いが込められている様

 に感じた。

例えて言うのなら人間が太陽になろうとしている様だと思えた。

そうしてコンサートは終幕を迎え彼女は歓声と共に舞台から姿を消した。

コンサートが終わった後サイン会が行われる事になり綴也はミフルとシアの

三人でサイン会に参加していったサクラと三人娘を待っていた。


「どうでした?綴也さん?」

「?うん…何だかあの人…太陽になろうとして頑張っているように見えたよ

…」

「私が聞いているのは…イリュシオンというゲームは闘いだけではないんで

すよって事少しでも感じていただけたか?という事なんでけど…?」

「え!?」

「まあ今の一言で答は言っている様な物ですけどね…コンサートを堪能して

いただけて何よりです」

「…そうかな?」

「はい…でなければ綴也さんはこのライブで一人だけ無表情で過ごしていた

悪目立ちした観客でしたからね」

「え!?」

「あらら…気付いてなかったんですね朝倉君…この会場でただ一人盛り上が

る事無く無表情で歌姫を見つめていた不気味な男…って今ネットワークで拡

散されているんですよ…」

「な!?」

「というのは冗談です…でも明らかに悪目立ちしていましたよ。あの歌姫本人

ですら朝倉君を見ていたではありませんか?サクラはこっち見てるー!!っ

て舞い上がっていたのに…」

「え、ええ!?」

「言っておきますけどこれは冗談ではありません。…気付いてなかったんで

すか?」

「いや…全然です…」


そういえばよく自分達の客席を見ていた気がしていたがまさか自分がそんな

にも悪目立ちしていたとは思いもしなかった。

ましてや自分の隣の人がそんな状態になっていた事すらシアとミフルの二人

に言われるまで気付いていなかった。


「コンサートに行く事自体が生まれて初めてだったんで何をどうしらいいの

か解らなくってだからただ真面目に彼女を見ていただけだったんだけど…」

「あら…そうだったんですか?」

「はい…」

「それはまた貴方らしいですね…そうだ綴也さんも初めて音楽イベント行った

記念にサインを貰いに行ったらどうです?」

「いや。僕は…」


サクラに昨日の事を謝りに行かないといけないと言おうとした時。

会場に大きな音が響きその響きはその場にいた者達の耳を揺らした。


「なっ!?」

「これは…?」


それは先程までこの会場を満たしていた音楽や歌姫の声ではなく爆発と呼ば

れる音だった。

Mル…綴也さん。


T也…言わなくても分かっているよ。


Mル…あの場であんな会話はやっちゃ駄目ですよ…。

   大事な事でしょうから念押しの意味も込めてもう一回言っ

   ておきましょう。

   今の現代社会は一発で見世物扱いの危険性があります。


T也…はい…ごめんなさい。


Mル…でもきっと綴也さんはまたやると思う私なのです。


T也…それって…。


Mル…分かってもらえないなら分かってもらえるまで話す。

   この根気が必要なのです。

   時には…ね。


T也…からかってます?


Mル…そして久しぶりの綴也さんからの突っ込みに私は感動して

   喜びのダンスを踊っております!!


T也…何で片足でジャンプして右手を右足を横に振ってるんです

   か!?



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