ライブイベント IN イリュシオン
「うむ…ちゃんと私服で新天神に来ましたね…今日は休日なんですから学校
の制服で来るなんて事は許されません」
「あはは…学校に集合だったんでつい…」
「頬の方も腫れが引いて良かったですね…」
サクラとの決闘翌日の日曜日綴也は新天神に来ていた。
それは昨日あのスポーツセンターで…。
「そうそう綴也さん…明日イリュシオンに来られませんか?」
「イリュシオンに?」
「ええ…イリュシオンでちょっとしたイベントがあるのでそれにご招待をし
たくって…」
「イベント?…ですか?」
「ちゃんとしたイベントなのだろうな?それは…」
「そんな心配は要りません。私の勤め先が企画した真っ当なイベントなので
まあ気分転換にどうですか?という奴ですよそれに…」
「それに?」
「綴也さんが抱くイリュシオンに対する恐怖を少しは和らげるのにうってつ
けのイベントと思いまして…」
というミフルからのお誘いがあった。
何時もならば此処にきてアイディアルの練習をしていたのだが今日の勝負に
負けてアイディアルを辞める以上練習する必要もないしもしかしたらサクラ
から練習も禁じられるかもしれない。
それにそれ以前に断る理由が無かった。
休日は練習以外に使った事など殆ど無かったので何をしようか考えが思い浮
かばなかった。
「それじゃあ…お言葉に甘えて…」
だから綴也はミフルのお誘いを受けた。
「そういえば綴也さん今日はどうやって此処まで来たんですか?朝の電車は
乗れば基本男女ごった煮状態…そんな中電車に乗れば綴也さんの精神安全上
問題なのでは?」
「ああ、何か無いかなって思って調べていたら男性専用車両ってものがあっ
て…」
ミフルの言う通り朝が早かったので通勤客でごった返していた為に女性と乗
らなければならない可能性があった。
席に座れればそれが一番いい筈だがそんな事は朝はほぼ不可能だった。
だが綴也は何かいい方法はないかと調べていた際に男性専用車両の存在を知
りその車両がある列車になる事にした。
お陰で女性は一人もいなかったので吐く心配は一切無く此処まで来る事は出
来た。
ただ男性専用車両のある電車は一番速いのが朝7時頃だから待ち合わせ時間
の朝十時までどうしようか駅でずっと待ちぼうけだった。
「うう、一人で此処まで来れて、私…感動で涙が出てきました。あのアイデ
ィアルバカの綴也さんが一人で新天神に来るなんて…」
「あの…何でハンカチ片手に本気で泣いてるんですか!?」
「酷い!!私は確かに電子製命体ですけど感動したら涙くらい流します!な
のにその言い様だなんて…綴也さんの人でなし!!」
「泣きながらも…からかうんですね…ミフさん」
「生き甲斐ですから。でも感動くらいはしますよ。何せ、今の今まで此処に
来る事は愚か一人で電車にすら乗らなかった綴也さんが男性専用車両の事を
調べて一人で此処に来るまでになるだなんて…それだけでも成長しましたね
…綴也さん頭を撫でて差し上げましょう」
「…そんな大げさな…イギリスにいた頃には電車使った事くらいあります」
「片手で数えられる程で一人で乗れない貴方を私は電車乗車経験者とは認め
ません。まあ此処で感動し続けてたら折角のイベントを見逃がしてしまうの
で行きましょう」
「あの…それで今日は…何処に行くんですか?」
「街頭コンサートですよ」
「コンサート?」
その言葉を聞き綴也は怪訝になった。
コンサートは音楽イベントで街で行うものである。
此処は複合現実を利用した対戦アクションゲームの施設のはずなのになんで
いきなりそれとは縁遠いような言葉が出て来たのだと首を傾げる。
「やっぱりそんな顔になっちゃいますよね…ゲームで音楽イベントって…」
「どういう事なんですか?」
「これくらいはあって当たり前で常識だという事です」
「常識なの!?」
「そもそもこのイリュシオンが生まれて始めてプレイするゲーム。私でもこ
れはと思ってしまいますね…」
「あの…ミフさん?」
「綴也さん、今日私が貴方を此処に呼んだ理由はイリュシオンのこういう部
分を見せる為なんです」
「こういう部分?」
「初めてイリュシオンに登録した時貴方はイリュシオンを複合現実を利用し
た対戦アクションゲームだと答えましたね…」
「ええ、サクラ先輩にそう聞きましたけど…」
「実はは少し違うんですよ…」
「え?違う?」
「イリュシオンは本来は複合現実疑似体験型ゲームと呼ばれるものなんです」
「疑似体験型?…どういう事なんですか?」
「説明するよりもそれを感じてもらうために今日は呼んだのです。では行き
ましょう?」
「ええ…ちょ…ミフさん!?」
「その前に…綴也さんは今日はPDの設定はきちんとしていますか?してい
ないといつぞやの様に今日の気分転換の内容が突発性鬼ごっこに変更になる
可能性が有るのですが?」
と言われて綴也は即座にPDのメニューを呼び出し確認すると設定に問題が
無い事を確かめそのままミフルに手を取ら引っ張られながら綴也は駅の外に
出て行く。
「あの…これから何処に行くんですか?」
「今日のライブ会場ですよ」
「それと…ミフさんが言いたい事が良く解らないんだけど複合現実疑似体験
ゲームって?」
「綴也さん…もう一度周りを見てみてください…」
「周り?」
「はい…答は最初からここにあります」
そう言われ綴也は周りを見渡した。
周りはとがった耳を生やした女性やがソフトクリームを作っていたりドラゴ
ン(最近覚えたて)の外見をした男性が露店焼きそばを作っていたりまたこ
れ外見は人間ではないのは解るが何なのか理解出来ない生物が警察官として
交通整理をしていたり等やはり現実にはいない格好や外見の人達がそれぞれ
に忙しそうに大変そうにそれでも活き活きと仕事をしているようだった。
「ん?…あれ?」
そこで綴也は今活き活きと仕事をしていると思った。
そう彼らを見てそう思ったのだ。
では何故自分は彼らを見てそう思ったのかと。
ゲーム経験が無い綴也でもノン・プレイヤー・キャラクターの存在くらいは
知っている。
ゲームの世界に存在するキャラクター与えられた役割をプレイヤー以上に全
うする存在。
しかし周りを見ていると彼らにそんな与えられた役割を全うしているような
風には見えなかった。
自分の意思でやっているとしか見えなかった。
そうして綴也はミフルの言葉の真意が見えた気がした。
「…どうしました?綴也さん?」
「ミフさん…もしかしてこの人達って…いやこの人達も幻想住人…なの?」
「ふふ…そうですよ。付け加えますとこの中には私のような電子製命体やA
I、運営のスタッフも活動はしていますけどね」
「それじゃあつまり…疑似体験って…」
「うふふ…正解です、このイリュシオンでは幻想住人は理想の自分や人間以
外の種族になって自分がやってみたかった事を疑似的体験する事が出来る。
それが本来のこのゲームのコンセプトなんです」
「自分のやりたかった事?」
「例にすると美男子や美女になって売れっ子俳優や歌手またはスポーツ選手
になりたいとか子供頃の夢をまたは貴方も知っているあの黒いドラゴンの様
に怪獣になって空を飛んだり等の疑似体験をさせてくれる幻想の楽園…それが
このゲームなんです」
それは凄いと綴也は思った。
ミフルの説明通りならば此処は子供の頃の夢をかなえられる空間のようなも
のだ。
それは誰もが体験したくなるのではないだろうかと思う。
このゲームで出来なかった夢を疑似体験できるのであればそれは楽しい物か
もしれない綴也は初めてこのゲームに感動した。
「あれ?でも本来はってどういう事?サクラ会長達は…」
「ああ…あの子達ですか…あれは恐らく誤解しているタイプですね」
「誤解?」
「簡単に言うとこのゲームには遊び要素として現実では実現されない異種族
へのキャクターメイクの他に魔法や超能力と言った戦闘系非現実的要素と呼
べるものも最初から実装していたのです」
「…元々は戦う事はこのゲームのメインではなかったって事?」
「ええ、でもこちらの要素が人気が出ていや出すぎてしまい今ではこのゲー
ムは超能力者や魔法使いになって戦える複合現実型対戦アクションゲームと
誤解する人も増えてました」
「ええ!?」
「極め付けにメディアですらも誤報したので誤解が未だに解けないですよね。つまり貴方の先輩も誤解している人間なのではと言う訳です。さらにこのゲ
ームを理解している人口よりも誤解している人口の方が多いというのが現状
なのです」
「…それってミフさんの様なゲームを運営する側として大丈夫なんですか?」
「今の所は…ですが…」
「ですが?」
「バトルゲームだと思い込んでいる連中と疑似体験する事に重きを置いてい
る人達は互いに関係は良くなくてお互いに争っていますねゲームの中とは言
えそれこそ拳で…」
「何だかそれって悪循環で誤解が解けなくなるんじゃ…」
「それでもこのゲームは大人気ゲームなので仕方が無いのです。そもそもこ
んな元は世界からすれば小さな島国の町一つとは言え広大な土地を13箇所も
ゲームの為に利用しているのですから人気が出なかったら人類史上最大のク
ソゲーとして歴史に名が残ってしまいます」
「あはは…」
街を13個も利用して自分達が望む事を擬似体験できるゲームを作ったのだ
から人気が出なければ作った人の頑張り全てが無駄になってしまうのは悲し
いと綴也はミフルの言葉をそう解釈した。
「どうやら話しているうちに今日の会場まで来てしまいましたね…」
綴也が周囲を見るとそこは街の外に設置された所謂野外会場と呼ばれるもの
である。
そこには立ち見席と施設に設置してあるスタンド席と呼ばれる席と分かれて
いた。
「そういえばライブってチケット買ってないとと見れないんじゃ?僕チケッ
ト持ってませんよ」
「今日は大丈夫です私と綴也さんで二人分購入してますから」
「え!?…すみません」
「いいえ…今回は私が綴也さんをお誘いしただけですから…ですがもしも女
の子をデートに誘う時は自分で準備をしませんと駄目ですからね…」
「は、はい…って彼女は出来てないんですけど…」
「フフ、いつかは役に立つかもしれませんから覚えておいてくださいね…」
「…はい」
ミフルからのアドバイスを肝に銘じたいがその前に自分には誘いたい相手が
がいないので先ずはそれが解決されない限りはこのアドバイスは活かす事が
出来ないなあと思いつつチケットに書かれている席に座った。
あらためて周りを確認してみると立って回りはすでに何万人と言って良いお
客でいっぱいになっていた。
「あの…ミフさん?」
「なんですか?」
「これからここで歌う人って…どんな人なんですか?」
「ああ…それは…」
「すみません…お隣…良いですか?」
ミフルに今日歌う人はどんな人なのか聞こうとしたら後ろから声がした。
「あ!…どうぞ…って先輩!?」
「すみません…って!?」
振り向いて見たらそこにいたのは昨日綴也がアイディアルで戦った相手で告
白して失敗した相手でもある生徒会長サクラ・レノンフォードが此処が吃驚
した表情で立っているのだった。
「あら?…朝倉君…奇遇ですね…」
更にその後ろには副会長シアと他の生徒会のメンバーがにそこにいた。
Mル…奇遇って言うかこれは私でも内心引きましたよ…。
どう考えても誰かがそう手引きしたと勘繰ったほうが正し
いと思われるくらいです。
T也…現実は小説より奇也ってこういう時に使うんですね…。
Mル…まあどうなるかはこの後を読んでいただければOKですの
で此処はイリュシオンの事を少し語りましょう。
T也…イリュシオンの事?
Mル…本編でも語りましたがイリュシオンは元々は擬似体験ゲー
ムなのです。
それで戦闘要素だけが人気が極端になり今の対戦ゲームと
誤解される流れになってしまいました。
その為このゲームではそれ特有の戦いがあるのです。
T也…特有の戦い?
Mル…戦闘好きの幻想住人が建物を壊すと建物を作るのが大好き
な住人が速く且より強固に建物を作り直すのです。
すると不思議な事にこれが瞬く間に繰り返し繰り返し…。
T也…壊しては作りまた壊して作るんですか!?
Mル…これが正に創造と破壊です。
何かを創る前には壊す必要があるという事を示しているの
かも…。
T也…その繰り返しは特有だとそれは創造と破壊ではないと思う
けど…。




